<3rd April Tue>
今週は仕事も忙しいのに3日連続でオペラハウスという羽目になってしまい、いつもにも増して余裕のない生活を送っています。そんなときは週末に準備した記事をアップして誤魔化そうっと
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3月29日、一年以上も前に切符を買って楽しみにしてたノルウェー人ピアニストのアンスネスのリサイタルがサウスバンクのQueen Elizabeth Hallでありました。
3月は、私が大好きなピアニストの双璧であるキーシンとアンスネスのリサイタルがあったわけですが、今回の対決に関する限り、アンスネスの勝ち キーシンは々不調だったですしね。でも、例えキーシンが絶好調であっても、この日のアンスネスも決して劣ることはなかっただろうと思えるくらい、それはもう素晴らしかったです
Joseph Haydn: Piano Sonata in C minor, Hob.XVI/20
Béla Bartók: Suite for piano, Op.14
Claude Debussy: Images, Set 1
Interval
Fryderyk Chopin: Waltz in F minor, Op.70 No.2
Fryderyk Chopin: Waltz in G flat, Op.70 No.1
Fryderyk Chopin: Waltz in D flat, Op.70 No.3
Fryderyk Chopin: Waltz in A flat, Op.42
Fryderyk Chopin: Ballade No.3 in A flat, Op.47
Fryderyk Chopin: Nocturne in B, Op.62 No.1
Fryderyk Chopin: Ballade No.1 in G minor, Op.23
アンコールは3曲で、ショパンのワルツ(おそらく)、ラフマニノフのエチュード・タブロー、グラスノスのspanish dance。
私がわかる範囲ではミスタッチはなかった超安定力のアンスネス、この日は端正なハイドンでスタートし、次は打って変わってモダンなバルトークでは若い男性らしい力強さでガンガンと凄い迫力
そのすぐ後のドビュッシーは、聴く側の耳にバルトークがまだ残ってていきなり対極の叙情性についていけなかったばかりではなく、弾く彼もあまりの変化についていけなかったようで、これは選曲ミスではなかったかと
彼のドビュッシーは3年前のリサイタル(→こちら )でたくさん聴いたのですが、だら~んとしたドビュッシーが苦手な私にアンスネスのしゃきっとして爽やかなドビュッシーは目からウロコの新鮮さだったので、今日の演奏はちょっと残念。全く違う3人の作曲家を続けて一気に弾いてみせて「僕はなんでもできるでしょ?」ということを示したかったのかもしれなくて、たしかに「へへーっ、恐れ入りやした、貴方は凄いです」と誰しもが思ったに違いないのですが、コンサートには一定のムードというのも大切な要素なのだとわかりました。
幸いなことに、休憩を経た後半は全てショパンのプログラムで、これは見事に統一が取れて感動が途切れず流れるようなショパン三昧。
ショパン演奏によくあるねっとりした甘さはなく、アンスネスの持ち味を生かした清らかで爽やかなショパンは2年前のウィグモア・ホールの全ショパン・リサイタル(→こちら
)で経験済みですが、今回はそれに優しさと凛々しさも加わって、これはもう極めつけの名人芸
こんな凄いピアニストを、サウスバンクでは一番大きいロイヤル・フェスティバル・ホールではなく、格下のクイーン・エリザベス・ホールで弾かせるなんて
3年前のフェスティバル・ホールのリサイタル(すっごく良かったんですが)で空席が目立ったのでこんな羽目になったに違いないのですが、なんて勿体ない。
でも実力に比べて人気がないのは、彼の謙虚さも災いしてるのではないかしら。これみよがしな演奏やオーバーアクションは全くなく淡々と正確に弾くだけでなく、カーテンコールもあっさりし過ぎ。ペコりと頭を一度下げたらすぐ舞台裏に引っ込んでしまうので写真撮るのすら難しいです。キーシンみたいに長く客席を睥睨して喝采を促すような態度を取れとは言わないけど、素晴らしい演奏を聴いた感動と御礼を伝えたいですから、せめてもうちょっと長く舞台で愛想ふりまいて頂けないでしょうか?
まさに弾き始めようとしてるように見える写真ですが、弾いてるところを撮ろうとしたわけではなく、お辞儀から頭を上げる瞬間を狙ってシャッター押したんだけど、アンコールを弾くために彼があまりに素早く椅子に座ったために、こういうタイミングになったのです。
というわけで、今や世界一のピアニストと私が信じる北欧好青年の素晴らしいリサイタルに大満足