<6th April Good Friday>
イースターホリディのスタートは、この祝日の由縁であるキリスト教がテーマのコンサートに行ってみましょう。
クリスマスとイースターにはヘンデルのメサイヤやバッハの受難曲やオラトリオがあちこちで演奏されるものの、宗教的なことが苦手なので、「復活祭にはこれを聴かなきゃ」とは全く思わないのですが、尊敬するバッハ先生の名曲は一度聴きたいので、聴くのであれば一流歌手が揃うときにと狙っていたところ、今回はご贔屓テノールのイアン・ボストリッジとカウンターテナーのイエスティン・デイヴィースが共演するということで、高い切符を奮発して、一人で行ってきました。44ポンドもするので、2枚買っても人様は誘いにくいし、宗教嫌いのトーチャンは誘っても来ないでしょうから。
寒いけど良いお天気なので、2時半にコンサートが始まる前に近くを散歩してみましょう。
でも、うわっ、凄い人出
って、嫌な顔しちゃいけないでしょうから、観光客の皆様、ロンドンにいらして下さって、ありがとうございます。そうです、この辺りは威風堂々的ロンドンを味わうには最適ですから、皆様ロンドンにお越しの際は、マダム・タッソーなんかには行かなくてもいいですから、ウエストミンスター・ブリッジには絶対行って下さいね。
世界で一番美しい建物だと思う壮麗な国会議事堂はいつ見ても美しいので、観光客に混じっていつも写真を撮ってしまう私ですが、今日は銅像に注目。クリックで拡大してご覧下さい。
12世紀に十字軍で活躍した勇敢なリチャード獅子心王 Richard the Lion Heart
悪役オリヴァー・クロムウェルがなぜか特等席 ロダンのカレーの市民もあるでよ~
ロンドン・アイと旧市庁舎、ウエストミンスター寺院も、お天気良いと立派に見えること
国会議員のロンドン滞在に違いない渋い高級感のあるフラットのある通りの突き当たりがコンサートがSt. John Smith Squireで、教会を改造した中堅コンサート・ホールです。
内部は繊細なギリシャ柱とかあって、教会というよりは貴族のお屋敷風ですが、今日の演目にはぴったりの雰囲気でしょ。
前置きが長くなりましたが、コンサートはどうだったかというと・・・
J.S. Bach St John Passion
Orchestra of the Age of Enlightenment
Stephen Layton conductor
Ian Bostridge Evangelist
Neal Davies Christus
Katherine Watson soprano
Iestyn Davies countertenor
Nicholas Mulroy tenor
Roderick Williams bass
私の席は前から2列目のほぼ真ん中で、44ポンドもしたので、ぼーっとしてないでしっかり楽しまなくちゃと思い、プログラムも買ってドイツ語と英語訳を見比べながら聴きました。但し、大好きなイエスティン・デイヴィース君が歌ってる時だけは歌詞なんかどうでもよくなって、すぐ目の前の彼をずっと凝視
イエスティン君、テクニックはますます上達してるけど、ちょっと声に潤いが欠けてたような。彼の場合、2メートル以下の距離からのあまりにもストレートな声よりも、エコーが掛かってるほうがもしかしたら良いかしらん? と言いながら、今月もう一回と来月にかぶりつきの席が買ってある・・・
しかし、あまりにも出番が少な過ぎ そうと知ってたら来なかったのに。
でも、その分イアン・ボストリッジがたくさん歌ってくれたから、いいことにしましょう。今日の主役のイアン博士、自分が歌う時は音譜はほとんど見なかったけど、他の人が歌ってる時は椅子に座って音譜を目で熱心に追ってました。私からは6、7メートルほどの距離だったので、近過ぎずにじっくり観察したところ、いつもは眉間にシワ寄せて客を睨みつけるような怖い顔して出番待ちしてるのに、今日はなんだか優しい表情。そして、キリストの受難が進むにつれ思い入れが募るような表情になり・・・、(これだけでも、彼の意外な面を見たような気がしたんですが)
そして、見てしまったんです
最後近くでソプラノが「キリストは死んだ」と歌ったアリアの時にイアン博士の顔がピンク色に染まったかと思うと、目に光るものが
歌っている時も真心こめて感情たっぷりでしたが、きっとこの曲には特別な思い入れがあるんでしょう。そして、目頭と鼻を拭うイアン博士に私もぐっと来ちゃいました キリストの生涯は、宗教云々は別にしてもそりゃドラマチックなわけだし、それをバッハの崇高な音楽が伴うんですもの、キリスト教に興味のない私の心も揺さぶられます。
イエスティン君が出番じゃない時に座ってるのは見えなかったのは残念でしたが、休憩なしの2時間ぶっ続けでオケもコーラスも素晴らしくて、でもやっぱりイアン博士の熱演と思い入れのおかげで、とても感動的なコンサートになりました。
全員イギリス人だった他のソロ歌手はどうだったかと言うと、
お馴染みのバスのロデリック・ウィリアムスは強烈な個性はないものの安定して頼りになる存在で、今日も邪魔にならない素直さで好感が持てました。ソプラノのキャサリン・ワトソンは初めて聞く名前ですが、ピュアで素直な声と可憐な容姿でマリア様のようでした。
一人足を引っ張ったのがテノールのニコラス・マルロイで、声量の乏しさだけでも将来は真っ暗。目の前にいた私ですらそう思ったのだから、後ろの席だったら聞こえなかったかも。とくに美声でもなくルックスも貧しくて、なぜこの人がここに? 同じちょい役でもカウンターテナーには英国ナンバーワンのイエスティン君を引っ張ってきてコンサートの格を上げたのに、バランス取れてませんよ。
尚、今日は写真は撮りませんでした。逆光でろくなのが撮れないし、ぎっしり座ってる真ん中ではやりにくいということもありましたが、そればかりではなく、今日はカーテンコールでの嬉しそうな歌手たちを生でしっかり見届けて拍手もし、感動を共有したかったんです。(ブログ用写真を撮るためにレンズを通してしか見ないというのはいつも淋しいなあと実は思ってて)
でも何もないのもナンですから、ほんの短い動画だけ撮りました(上の写真は動画の一部)。