<30th Sept Sun>
昨日のピッカピカの土曜日とは打って変わってグレーで暗い日曜日。明日からは又仕事もアフターファイブも忙しい週がはじまるので、頑張りましょう。
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9月25日、サウスバンクのクィーン・エリザベス・ホール。コンサート形式でフレデリック・ディーリアスのオペラ村のロミオとジュリエットA Village Romeo and Julietを聴きました。
仕事が忙しくて前からコミットできない時期なので切符を買ったのはなんとか都合がつくと判断した当日でしたが、案の定、まだ切符はかなり残ってて、かなり隅っこですが最前列が買えました(20ポンド)。
composer Frederick Delius (1862-1934)
Vreli(ジュリエット) Anna Devin
Manz(親父その1) ChristopherMaltman
Marti(親父その2) Andrew Shore
謎のヴァイオリン弾き David Wilson-Johnson
New London Orchestra
The London Chorus
conductor Ronald Corp
まず、
この舞台がオケやコーラスまで乗せられる程大きいとは知りませんでした。いつもは衝立で仕切られてたので。ここで上演されるのは小規模コンサートがほとんどだけど、ロンドンのクラシック音楽の中心と言えるサウスバンクだし、もっと有効活用すれば色々できそうな空間じゃないですか。
ロミオとジュリエットと言っても、シェークスピアのと同じなのは、主人公カップルの親同士が(この場合は農夫なので土地争いの)敵同士であることだけで、シェークスピアのカップルが反対を押し切って結婚し、逆境でもなんとか一緒に生きようとけなげなのに対し、こちらのスケールの小さいヴィレッジ・カップルは、救いの手を差し伸べてくれる人たちもいるのに、あっさり川でボートの底の栓を抜いて入水自殺。
心中ものなのにストーリー自体にドラマ性はない上に英語で歌われても字幕がないと何を言ってるのか聴き取れなくて感情移入もできず。
でも、この作品は(だいぶ前に映画版をテレビで観たことがあるのですが)、人間ドラマではなく情景描写のオペラなので、美しい田園の中ではかなく生きるバタフライなんぞを想像するのがぴったりではないかと思います。
有名な間奏曲「楽園への道」があるのは救いですが、叙情的な音楽でかなりダラ~っとしてて、歌無しで「田舎の風景を愛でましょう」という部分が多いのですが、目の前でライトに照らされた歌手たちが突っ立ってるのを見ながら、カントリーサイドの温かい陽光を感じろと言われても難しいし、私は仕事が忙しくて疲れてたので、目を閉じると当然こっくりこっくり・・
尚、ゴッドルリー・ケラー原作の物語の舞台はスイスの村なんですが、私にとってはこの音楽はグレー掛かった曇った日のイギリスのカントリーサイドのイメージなので(ディーリアスはドイツ系だけどイギリス生まれだし)、余計眠気を誘うわけです。
という、映像の助けがあるとベストなオペラなので(だから映画になってるのは正しい)、コンサート形式でというのはかなり苦しいスタイルですが、安普請のセットがあるよりは想像力に頼るほうが良いと思うので、これはこれで良かったかもしれないし、お膝元イギリスですらディーリアスの生誕150年ということでもないと上演してもらえないかもしれない作品ですから、逃さずに聴けてよかったです。
パフォーマンス
まず、大失望だったのは主役二人が私が座ってるのとは逆の隅っこの舞台でずっと歌ったことで、それを知ってたら、あっち側の席を買ったのに、真横から聴く羽目になってしまいました。なので演技もよく見えないし声もあらぬ方向に飛び散って、正当な評価ができる立場ではないのですが、と前置きして、
私のお目当ては、ROHの若手アーチストとしての修行期間2年を終了したばかりのコロラチューラ・ソプラノのアナ・デヴィン。私好みの声だし、ROHの脇役でも光ってた彼女をいつか主役で聴きたいものだと思ったいたところ、その望みが意外に早く叶えられたのが嬉しいです
相変わらずキュートだし、歌も好調で十分期待に応えてくれましたが、このオペラには彼女の細いキラキラ声よりも、もうちょっと優しい声の方が合いそう。
テノールのジョュア・エリコットは英国人なのにはじめて聞く名前。ちゃんと声は出てるし、くしゃくしゃブロンドのルックスも全然悪くないけど、声自体の美しさが感じられないのであまり高い評価は与えられませんが、固い声に合った他の役を選べばそこそこやっていけるかも。
尚、エリコットは実は代役で、本来はAndrew Staplesだったんです。ステイプルズは、6年前のサドラーズのコジ・ファン・トゥッテで見掛けは白豚だけど素直な声は気に入ったテノールで(→こちら )、彼の方が上手に決まってるので、あれからどれだけ上達したか聴けなくて残念。
目の前で歌ってくれたからというだけでなく、やっぱり誰よりも上手だったのはクリストファー・マルトマンで、声もよく通るし、トーチャンも彼の発音が一番クリアでわかりやすいと褒めてました。(彼の出番は前半だけで、カーテンコールを待たずに帰ってしまったので写真がありません)。
今日の指揮者によって1988年設立されたニュー・ロンドン・オーケストラというのは聞いたことのない名前ですが、フルタイムのオーケストラではなさそうで、QEHに出るにはレベル以下などとは申しませんが、なんかイマイチぴしっとしてなかったし、特に金管楽器がとんでもない音を何度か出したりして・・・。
というわけで、感動的な超一流のパフォーマンスだったとは言えませんが、イギリス生まれのディーリアスでありながら接する機会の少ないオペラということで、会場はある種の興奮と満足感が漂った夜でした
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