<13th Oct Sat>
一昨日の夜、友人の息子さんが通うロンドンの某超有名私立校を訪問。ハリポタさながらの伝統だらけの威厳ある古い建物も想像通りで感激でしたが、生徒によるクルト・ワイル作曲の「三文オペラ」上演(英語翻訳)はセットも凝ってる特大スケールの学芸会。16、7歳の少年少女が挑戦するには難儀な大作ですが、さすが超一流の彼ら、勉強の傍らでも高水準の歌と芝居で大いに感心。
今日は久し振りに土曜日に仕事がオフになったムスメが遊びに来てくれてランチもディナーも一緒に。午後はBrent Cross Shopping Centreへ。ムスメが子供の頃からよく行った老舗ショッピングセンターですが、懐かしい玩具売り場はそのまま残ってて、親子3人で昔に戻ったようで胸が熱くなりました。
ちょっと時間が経ってしまいましたが、先月観たENOのオペラについて書いておきます。折角ストールの良い席で観たんですもの(ROHじゃあ絶対無理)。
------------------------------------------
9月27日、English National Operaに行きました。コロシアムに行く時は、当日にレスター・スクエアにあるtksという半額切符売り場の掘っ立て小屋でゲットすることにしています。売れ残り切符が大幅ダンピングされるからですが、この日もランチタイムに地下鉄でひとっ走りして、真ん中ではないけれど前から5列目の額面95ポンドの切符が25ポンドで買えました。このギリギリ購入法は人気のあるオペラにはリスクですが(ENOではほとんど起こりませんが)、こんな得体の知れないオペラなら楽勝
得体が知れないとは言っても、実はこのオペラは今シーズンのENOの演目の中で一番楽しみにしていた作品なんです。
2009年3月にバービカンのコンサートで聴いてとても感動して(こちら )、いつかフルオペラで観てみたいと思ってましたから。英語というのがもちろん嫌ですが(本来はチェコ語かフランス語)、歌より全体の音楽と囲気を重視することにしましょう。
オペラの内容については、その時の記事をコピペしますが、夢をテーマにした幻想的でシュールな話で、「はあ~~~っ、なんですかあ、それ??」というストーリーです。
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
書籍行商人のミシェルは、3年前にある港町で聴いた若い女の歌が忘れられずに戻ってきたのだけれど、ここは極端な記憶喪失者で溢れている不思議な街
でも、彼らはそれを補うため他人の思い出話を聞くことには異常に熱心で、ミシェルもナイフで脅されてまで子供時代の思い出を語り、感激した人々が彼を町長に推挙までする始末。こんな気味悪い街には痛くない彼は断って汽車で去ろうとすると、街には汽車なぞ走ってないと・・・。さっきミシェルが駅に降り立った筈なのに・・
女の歌がまた聞こえ、彼女ジュリエッタは逢瀬にも応じてくれ、森の岐路で逢い愛を語らう二人。やがてそこにいる記憶売り業者から買ったミシェルと過ごした偽の思い出を楽しく語る彼女とそれを拒絶するミシェル。言い争いになり、ミシェルはジュリエッタを射殺。ミシェルは死刑を宣告されるが、話を反らせるうちに死刑宣告も皆の記憶から消え、ジュリエッタの姿も消えた・・
夜になるとミシェルは夢役場The Central Office of Dreamsにいて、係員に「いま夢から醒めてここを去らないと、二度とここから出られなくなるぞ」、と言われ、そこには夢を斡旋された人々が次々を現われ、夢でジュリエッタに逢ったと語る。
ドアの向こうからジュリエッタの歌が聞こえる! ずっと夢から醒めたくないミシェル。だけどドアを開けてもジュリエッタはいない。係員が去るとまたジュリエッタの声が聞こえ、恍惚状態のミシェルはいつの間にか最初の港町に自分を見出す・・・
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
ね、さっぱりわかんないでしょ?
なので、今回は、はなから理解しようなんて思わずに、ちょっと前衛的な流れるように美しい音楽を楽しんで、夢か現か幻か、という不思議な世界を体感できればいいなと思って、肩の力を抜いて臨みました。
by Bohuslav Martinu
Director Richard Jones
Design Anthony Mcdonald
Lighting Matthew Richardson
Movement Phippe Giraudeau
Conductor Edward Gardner
Michel Lepic: Peter Hoare
Julietta: Julia Sporsén
Commissar / Postman / Clerk in the Bureau of Dreams: Jeffrey Lloyd-Roberts
Man in a Helmet / Seller of Memories / Convict: Andrew Shore
Man a Window / Waiter / Beggar: Henry Waddington
Little Arab / First Gentleman / Bell boy: Emilie Renard
Old Arab / Grandfather / Old Sailor: Gwynne Howell
Birdseller / Fortune teller / Old Woman: Susan Bickley
Fishmonger / Grandmother: Valerie Reid
Second Gentleman: Clare Presland
Third Gentleman: Samantha Price
Night Watchman: Steven Beard
Young Sailor: Anthony Gregory
パフォーマンス
バービカンのジュリエッタ(フランス語上演)が素晴らしかったのは、マッダレーナ・コジェナとウィリアム・バーデンがビジュアル的に理想的だったからで、コジェナは夢(或いは妄想)に現れる儚い美女役にはうってつけの細いからだと憂いに満ちた美貌と暗い声質の持ち主だし、長身でハンサムなウィリアム・バーデンとは絵になるカップルでした。しかも二人とも歌も文句なく上手でうっとりしました
で、対する今回のENOはというと、
ジュリエッタのJulia Sporsénはベット・ミドラーのようなおきゃんで明るい雰囲気で、しかも立派な声量で元気一杯。ベッド柄のコミカルなワンピ姿だし・・・
ただ一人正気のミシェル役のピーター・ホアは小柄でパジャマ姿。張りのある美声と細やかな演技でとても上手だったけど、ロマンチックヒーローは無理。
要するに、二人とも、とても上手で文句はつけられないけど、私のイメージから程遠い喜劇キャラ。
そして、なによりも、英語にしてしまうと夢か現か幻かというファンタジーな雰囲気が出なくて、なんだか現実的というか、台詞もあるので、これではまるでミュージカルで、私が大切に抱いていた作品をぶち壊された気分。
フランス語も良かったけど、いつかチェコ語で聴いてみたいものです。絶対に音楽にマッチする筈だから。
舞台セット
巨大なアコーディオンを色んな角度から見せる舞台セットは、コンセプトはわからないけどよく出来てるし、断然面白いので、ビジュアル的にはとても楽しめました。まともに妄想や狂気の世界をおどろおどろしく表現したらつまらないので、こういうわけわからないお話にはこういう度肝を抜くセットが、見る側の想像力をもっと混乱させてくれて楽しいです
この値段でこの席に座れて、素晴らしいセットもまじかに見られたし、オペラのイメージは崩れたけど、皆さん歌も芝居も上手で、行った価値はあったかな。バービカンのコンサートは聴いてないので思い入れがなかった分、トーチャンはきっと私より楽しめた筈。
オペラやコンサートの直後に美しい夜景を見るのは格別ですが、ENOの劇場であるコロシアムは立地条件が良くて、すぐ近くがトラファルガー広場。
噴水と照明に浮かぶナショナルギャラリーが、「音楽や絵画を安く楽しめるロンドンっていいな」、といういう
幸せな気分にさせてくれます