<21st Jan Mon>
昨日は半日雪が降り続き、都心はすぐ解けるけど、我が家の周辺はしばらくは銀世界で、道はミゾレやツルツル状態。すごく寒いし、今週は夜は出掛けないで残業続きになりそうなので、ちょうどいいかな。
今更ですみませんが、年末年始に観たラ・ボエームについてです。
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この1年でROHでは嫌と言うほどラ・ボエームをやり(一昨年のトラヴィアータみたいに、経費削減のあおりを食ってキャンセルになった新作オペラとかの穴埋めかな?)、聞き飽きたこのオペラが特に観たいわけではないのですが、安い切符が買えたし、やっぱりそれぞれの歌手が気になったので、結局10回行くことになりそうです。
去年5月のジョセフ・カレヤを3回、6月のアラーニャとゲオルギューの出会い20周年記念を2回、すでに観てますが、今回の年末年始の巻についてメモしておきましょう。
Director | John Copley |
Composer | Giacomo Puccini |
Designs | Julia Trevelyan Oman |
Lighting design | John Charlton |
Conductor | Mark Elder |
Rodolfo | Roland Villason/Dmytro Popov |
Mimì | Maija Kovalevska |
Musetta | Stefania Dovhan |
Marcello | Audun Iversen |
Schaunard | David Bizic |
Colline | Nahuel di Pierro |
Benoît | Jeremy White |
Alcindoro | Donald Maxwell |
まず、対照的だった二人のロドルフォから。
あくまでロランド・ヴィラソンが目玉であり、彼が都合のつかない2回だけは仕方ないからポポフでという予定だったのでしょうが、結局、ヴィラソンは気管支炎という言い訳で途中で降板してしまったので、ポポフ君にリリーフ役以上のチャンスが巡ってきて、二人のテノールの勝負は最初からわかっていたものの、予想より大差がつきました。
元々ヴィラソンの暗い声とゲジゲジ眉毛の顔は好みではないし、彼の生ロドルフォはすでに聴いたことあるんです。まだ売り出し中に代役でゲオルギューと共演したんですが、その時より今の方が良い訳がないし、このラ・ボエーム長期戦の中で彼だけパスしようかとも思ったのですが、まあ一応行ってみましょうかね、他で良い歌手を発見できるかもしれないから。
という思惑は、まさに現実のものとなり、長期絶不調中のヴィラソンの不出来は目も当てられないくらいですが、素晴らしい歌手もいたので、やっぱり行って良かったと思ったことでした。
ヴィラソンは全く声が出ず、舞台横の近い席に私ですら、オーケストラに簡単にかき消されて聴こえないことも何度がありました。テレビ番組で彼のことを知った普段はオペラに縁のない人たちも来てたに違いないですが、「なーんだ、彼が一番、並外れて下手じゃん」、と誰しもが思ったことでしょう。
私は、好みではないと言いながらも、ホフマン物語やドン・カルロで最盛期の素晴らしい彼を聴いているわけですから、この凋落振りは気の毒で、歌の不出来をカバーしようとしてか、いつもより更にはしゃぎまくるヴィラソンを見ていると、歌えなくなったオペラ歌手の悲しい運命に思いを馳せざるを得ません このままではヴィラソンはもう大劇場には出演できなくて、引退するしかないですね。
対するウクライナ人のディミトロ・ポポフ、皇帝の花嫁(→こちら
)でとても良かったので期待は高かったですが、一回り成長したようで、声量は立派だし、ヴィラソンとは対照的な控えめで真摯な詩人ロドルフォを演じて高感度よし。最後に「ミミ~っ」、と叫ぶ場面で久し振りに泣けました。一回しか聴けなかったのが残念。
他の人たちの中で今回のめっけものは、ラブリーな二人の女性たち。
ミミ役はラトヴィア人のMaija Kovalevskaマイヤ・コヴァレフスカ。品のある美しい容姿と素晴らしい声量の落ち着いた歌唱で、とても気に入りました。この美人は以前見たある筈、と思ったら、2006年のROHのカルメンの素敵なミカエラでした(→こちら )。
でも、歌も容貌も、ミカエラやミミなんていう労働者階級の若いネーチャンより貴婦人の方が向いてるのに、と思ったら、すでにウィーンとメトでフィガロの結婚の伯爵夫人をやってるし、来月はウィーンでドミンゴ先生とシモン・ボッカネグラをやるのだそうです。ドン・ジョヴァンニのドンナ・エルヴィラもレパートリーのようで、どれかいつかロンドンでも彼女に歌ってものです。
ムゼッタ役、ウクライナ人のStefania Dovhanステファニア・ドヴハンは、歌唱力ではミミのマイヤに全く及ばないけど、キュートな容姿がチャーミングで、誰からも視線を浴びる華やかなムゼッタそのもの。レパートリーの椿姫、魔笛、リゴレット、トゥーランドットなど王道のソプラノ役ではどれも舞台映えするでしょう。もちろんルックスだけでは良いオペラ歌手にはなれませんが、歌唱力も充分。
ロドルフォの友人マルチェロは35歳のノルウェー人バリトンAudun Iversenオウダン・アイヴァーセンですが、去年ENOのオネーギンでなかなかのニヒルぶりを見せて結構好きでした。容貌も声もトーマス・ハンプソンを若くして薄めたような雰囲気ですが、実際の年齢より落ち着いてみえるのもバリトンには得点で、幅広く悪役なんかもできそうな有望株。
他の男性二人は可もなく不可もなくですが、マーク・エル指揮のもと、これまでのボエームがカレヤが独り舞台、台詞を覚えてないらしくてハラハラしたアラーニャだったのに比べると、みっちりリハーサルしたに違いないチームワークで決して悪くない水準でした。
古くても素晴らしい人気プロダクションで、肺病で死んでしまう悲しいお話だけど、クリスマスイヴにパリのレストランで食事という設定が賑やかで幸せな気分にしてくれるので、クリスマス時期によくやるのも納得。
これで、ラ・ボエーム耐久戦も残すところ3回。
ロドルフォ役でいうと、2月中旬のテオドル・イリンカイと、最後を飾る真打は3月のヴィットリオ・グリゴーロで、グリゴーロとの共演でフリットリが降板したのは痛いですが、なんだかんだ言ってもとてもよく出来たオペラですから、観客の新規開拓をしたいROHにとっては貴重な作品でしょう。
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