<2nd July Tue>
やっぱり夏はすぐに去ってしまったけど、パートタイム勤務にしてもらってはじめてのめでたい平日オフ 折角だから家に閉じこもってないで、久し振りにプールにでも行こうかと思ったけど(6月はジムを1ケ月停止してたの)、やることがたくさんあって無理。今週末に迫ったイベントのためにお琴の練習もしなくちゃならないし、ブログも、旅行だけじゃなくて、オペラ記事も溜まってる。一つ片付けましょう。
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ベンジャミン・ブリテンのグロリアーナGlorianaを、6月20日の初日と24日の2回観ました。
現女王陛下の戴冠祝いにブリテンが60年前に作曲したオペラですが、初演の評判が悪かったせいか上演機会は少なくて、言いだしっぺのROHですら、今回の初日が通算僅か14回。
グロリアーナとはエリザベス1世のことですが、彼女が若い男に入れあげたり、他の女性が自分より派手なドレスを着てるのが気に入らずに盗んだり、王室を称えるべきイベントなのに、歴史的にも重要な偉大な女王の欠点を強調しすぎたのが理由でしょうか。醜い素顔までさらけ出すし。
だって、音楽は悪くないですよ。私はラジオ生放送も聴いたので、3回聴いたことになりますが、最初は全く馴染みがなかったので退屈でしたが、聴くたびに良さがわかって(こういうことは私の場合よくあります)、最初の展開が遅いのと長過ぎるのがナンですが、ブリテンにしてはわかりやすくて美しいメロディもあり。色んな種類の音楽が混じってるのも好きです。
ストーリーは、エリザベス1世に寵愛を受けたエセックス伯爵が最後は反逆罪で処刑されるという史実に基づいていて、伯爵の名前であるRobert Devereuxというタイトルのドニゼッティのオペラもあります。
プロダクション (写真はクリックで拡大)
新プロダクションですが、写真でご覧の通り、カラフルで素晴らしかったです。初日はちょっとブーイングもされちゃったけど。
60年前の現女王様が村のフェスティバルで舞台をご覧になるという想定で、若い女王様も登場するし、そういう村祭りには野菜コンテストも付き物なので舞台いっぱい野菜は出てくるわ、全員に衣装をちゃんと作る予算がないのか1950年代の服のまま出てくる脇役もいるし等々、心にくい2重構造になってます。劇中劇なので、場面が終わると出演者が急ぎ足になっったり装置を目の前で替えたり、カードを掲げる子供だちが出てきたりして、村人総出で(演出家?はBブリテン自身のようです)、舞台裏まで見えてしまう田舎芝居の雰囲気がよく出てます
一見豪華な主役準主役の衣装もセットも、わざとカラフル過ぎて安っぽく見えるようにしてあって、女王様をお迎えする村の精一杯の歓迎ぶりが感じらし、場面も衣装も何度も変わるし、バレエや歌手たちのダンスもあり、ビジュアル的には最高に楽しめました。
歴代の王様たちが(全員ではないけど)ずらっと登場したのも、王室と言えばイギリス王室でしょ、という自信の表れであり、タイミング良い戴冠60年祝いでした。
Director Richard Jones
Designs Ultz
Lighting design Mimi Jordan Sherin
Choreography Lucy Burge
Conductor Paul Daniel
Elizabeth I Susan Bullock
Robert Devereux, Earl of Essex Toby Spence
Lady Essex Patricia Bardon
Lord Mountjoy Mark Stone
Penelope, Lady Rich Kate Royal
Sir Robert Cecil Jeremy Carpenter
Sir Walter RAleign Clive Bayley
Lady-in -Waiting Nadine Livingston
Blind Ballad Singer Brindley Sherratt
Sprit of the Masque Andrew Tortise
パフォーマンス
英語オペラでもあり、出演者はほとんどイギリス人で、皆さん、しっかり準備もしたようで、上手でした。
エリザベス1世役のスーザン・ブロックは、ROHではリングのブリュンヒルデやRシュトラウスのエレクトラ等でよく出るのですが、私は一度も良いと思ったことがなく、声自体が弱いのがその理由だけど、今回も、初老女王を見事に熱演して演技賞と努力賞は差し上げるけど、魅力のない声が足を引っ張り、彼女が長々歌う場面だけすごく退屈だった。
私のご贔屓テノールであるトビー・スペンスがエセックス伯爵ですが、喉頭ガンから回復して立派なパフォーマンスを見せてくれて嬉しい限り。
やけに低音が多くて、彼の魅力である清らかな高音があまり聴けなかったのは残念だけど、何度も着替えたちょうちんブルマー姿も可愛くて、正直ちょっと老けたなとは思ってけど、元気なトビー君をたっぷり見られて満足 ミュンヘンばかり行かないで、もっとロンドンに出ろ!
でも、もう一人のテノールに負けちゃったね
トビーを負かしたのは誰かと言うと、Sprit of the Masqueというちょい役のアンドリュー・トーティス(→こちら
)。
ケンブリッジ大学2002年卒にしては老けてみえるけど、ハンサムではないけどうんと長身で、なんといっても立派な声量が素晴らしくて、特に美声ではないが、厚みもあってなんでも歌えそう。ぺッ!(ツバつけた音)。グラインドボーンどさ回りのコジに出てたらしいけど、次は見逃しませんよ
もう一人、無名でも光ってる人がいて、女王の侍女役のナディーン・リヴィングストンの張りのある美声が高らかに響きわたりました。
あとの準主役たちは、中堅バリトンのマーク・ストーンも、パトリシア・バードンも、もちろんすらっと素敵なケイト・ロイヤルも何度も聴いてるのでお馴染みですが、皆さん上手。
ENO音楽監督だった指揮者のポール・ダニエルズにも拍手。
プロダクション・チーム エリザベス1世と2世の間の歴代の王様、女王様
折角の記念的リバイバル、現女王様もいらして下さったら最高でしたけどね。でも、オペラはお好きではないようだし、公務で毎日ご多忙ですもんね。代わりに、こんな可愛くて若い60年前の女王様が出てくれました。私が生まれた頃はこういうファッションだったんだ。
と言うことで、トビー君だけが目的だったのに、怖れたようなヘンテコな音楽じゃなかったし、お金を掛けた楽しいセットと衣装、更に上手な新人テノール発見というオマケまでついて、実り多いオペラ鑑賞でした。
明日は丸一日出勤して、夜はオペラ(シモン・ボッカネグラ)。
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