昨夜(6月10日)はバービカンでエフゲニー・キーシンのリサイタルがありました。
天才キーシンだと言うのに、半分くらいしか切符が売れてなかったのは、まず切符代のあまりの高さによるものに違いなくて、3,4年前までの安かった時にはあっという間に売れ切れたのに、今回はたしか25ポンドから85ポンドという、ロンドンのクラシック音楽コンサートとしては破格の値段。
うんとリーズナブルだった時は10席以上も仕入れて、知り合いに売りさばいたこともありますが、こんなことになっては椿姫お節介エージェント(非営利)は廃業で、今回も自分の分だけ一枚、どうしてもというわけではなかったけど、ラッキーにもベストな席がゲットできたのでとりあえず買っておきました。こんな席が買えるのも最後かもしれないし、とも思って。
以前のように安くすればすぐ売り切れるのに、値下げなんてプライドが許さない? 客席が埋まってる方がキーシン自身も嬉しいだろうし、その方がプライドが満足すると思うんですけどね。第一、こんな凄いピアニストの演奏がこんなガラガラでは勿体なさ過ぎ。
ということで、関係者一同さすがに反省したのか、次回は前代未聞の値下げに踏み切り、15ポンドから65ポンドになったけど、しれでにまだ高いので激余り。来年3月20日(→こちら
)ですが、私の察するところ、バルコニー席はおそらく今回そうしたようにクローズするので、ここを今買っておくと、もっと高い席にアップグレードしてもらえる可能性あるのではないかしら。
あっ! 今見たら、プログラムも変わってるじゃないですか! バービカンの来シーズン発表になった時のお勧めコンサート記事(→こちら )だとラフマニノフのプレリュードだったのがショパンとリストになってて、これならお馴染みだし盛り上がりそうです。 特に彼のリストは素晴らしいですから、一気に楽しみ倍増。又良い席がキャッチできたのでつい手が出たのでした。 因みに、最前列の同じ席で、昨夜は65ポンド、来年は48ポンド。数年前は枚数割引もあって20ポンドちょっとだったんですけどね・・。補助が減ったのが理由らしくて、バービカンも苦しいのはわかるけど、まず満席になるような値段設定にするのが結局は得策でしょうに。
前置きが長くなりましたが、今回はどうだったでしょうか?
まず、売れ行きが悪かったのは曲目の地味さもあるでしょうね。
Evgeny Kissin piano
Schubert Sonata in D major
Scriabin Sonata No 2 in G sharp minor
Scriabin Selection of Etudes from Op 8
アンコールは3曲で、バッハのシシリアーナ (ヴィルヘルム・ケンプがピアノ曲にアレンジしたバッハのシシリアーナ、スクリャビンのエチュード、ショパンの英雄ポロネーズ。
最初のシューベルトのソナタは、手の動きが複雑でテクニック的にはチャレンジなんでしょうが、ゴツゴツした曲でちっとも美しいとは思えませんでした。キーシンは静かな部分だと力が入り過ぎていつも唸ったりするのですが、今回は表情が更に苦しそうだっただけでなく、なんと歯をカタカタ鳴らせて、うるさかったこと! 何十回もよ。
至近距離で長年聴いてますが、こんなの初めてですよ。妙な癖がついたものです。うんと近くの人にしか聴こえないでしょうが、イライラしました。 40分位の曲でしたが、特に静かなパートがやたら長くて、聴いてて疲れました。 なにもそういう部分が嫌というほど続いて彼の欠点を強調するような曲を選ばなくてもいいのに、と腹立たしい気持ちさえ起こりましたが、苦しそうに見えてももしかしたら本人は楽しんでいるのかしら? 私はキーシンのそういう姿を何度も見てちょっとうんざりですけど・・。
不調なわけではなかったし(絶好調でもなかったけど)、後半は彼の良さがわかる曲目で楽しめました。
スクリャビンはあまり聴いたことがなかったけど、ショパンとリストにラフマニノフを振りかけたような感じで華やか。
最後は派手な英雄ポロネーズで盛り上がりました。ちょっと練習不足かなという気もしましたが、キーシンの左手の力強さは天下一品だし、目も眩むようなテクニックをまじかに感じることができて、65ポンドも払った価値はあったかな? いや、15ポンドで聴いたユジャ・ワン(→こちら )を4回聴くほうが得だな。彼女のリサイタルは満員だったよ。
でも、カーテンコールで良い写真が撮れなかったのは残念で、椅子の近くに立つと足元から見上げることになるし、ちょっと向こうに立つと横顔ばっかりな上、良い角度のは全てピンボケ
尚、これまでのキーシンのリサイタル記事は→こちら にまとめてあります。