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Channel: 着物でオペラ in ロンドン
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ロベルト・デヴリュー by Donizetti @チューリッヒ with グルベローヴァ

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<26th July Sat>

暑さも少しおさまって、でもまだイギリスでは珍しい夏らしい日が続く嬉しい毎日晴れ 日本の皆様には暑中お見舞い申し上げます。

ROHのオペラシーズンも昨日のウェルシュ・オペラ引越公演で終了し、これからはヒマになるので溜まってる記事を片付ける余裕がやっとできましたが、まずチューリッヒ関連を片付けましょう。

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7月1日にチューリッヒ歌劇場で観たのはドニゼッティのロベルト・デヴリューRobert Devereux。


ドニゼッティが女王三部作のひとつで、エリザベス一世が主役ですが、他の二つもアナ・ボレーナ(エリザベス女王の母親)とマリア・ストゥアルダ(エリザベスの宿敵)ということでエリザベス女王に纏わっています。史実とはかけ離れたストーリーになっているとは言え、イタリア人のドニゼッティが英国王室を舞台にしたオペラをいくつも作ってくれたなんて嬉しいではありませんか。

本家イギリスではベンジャミン・ブリテンが現エリザベス二世女王陛下の戴冠祝い作曲したグロリアーナもあり(→こちら )、これもエリザベス1世とロベルト・デブュリューの話ですが、作品の知名度から言ったらイギリスでさえ断然ドニゼッティの方が上。耳に心地よいベルカントオペラですから当然ですが。


ロベルト・デヴリューは女王に寵愛された伯爵ですが、反逆罪で処刑されてしまったという史実をこのオペラでは三角関係のメロドラマ仕立てられてて、熟女エリザベッタが他の女を愛してる若いロベルトに悶々と怒るのがテーマ。



古めかしいプロダクションですが、ROHが現代に読み替えて背広姿ばかり出してうんざりしてるので、こういうまっとうな舞台と衣装を見られるのは嬉しいです。


ぐるりと後ろが時代劇らしい設定で、舞台の真ん中には何もなくてガラーンとしてるので歌手たち人の動きが重要で、特に私たちは横から全体が眺められる席だったので、わかりやすい演出で安心して観ていられました。グルベ様は杖を使ってて、もしかしたら膝を痛めたせいかもしれないけど、とても効果的でした。






←キャストはこちらを拡大してご覧下さい。


伝説的ソプラノで貫禄たっぷりのグルベローヴァ大姐御と若くてハンサムなブレスリ君のコンビはぴったりで、かつてはグルベローヴァ御大にパートナーとして寵愛を浴びていたテノールのホセ・ブロスはお払い箱になったようで、最近はあちこちで同じスロバキア出身のブレスリク君が共演させてもらってますね。







      

エディータ・グルベローヴ姐御は悲しいかなロンドンには長い間ほとんど来てくれず、私が生で聴くのはこれで僅か4回目。ウィグモアのリサイタル、バルセロナのアナ・ボレーナ、ブダペストのアナ・ボレーナですが、その度に「グルベローヴァってまだ凄く上手なの?」と質問されます。


録音や映像で彼女の大ファンだったけど全盛期に生で聴いたことがない私に答えられるのは、「この年齢(おそらく67才)でまだあれだけ歌えるのは驚異的だけど、高音はかなり苦しい上に上がりきらないことが多いし、あの鈴のような美声の片鱗は充分聴けるものの、きっと昔はもっと上手だったに違いないわね」ってとこでしょうか。

彼女が誰なのか全く知らないで、しかも顔を見ないで年齢もわからなかったら、「まあ、このソプラノ、なかなかのものじゃないの。高音と低音のつなぎがなんかスムーズじゃないし、全体に苦しそうだけど、時折聴かせてくれる美声は魅力的だし、貫禄があって存在感ある」、と思ったことでしょう。


そして、例えスコーンと決まらなくても高音にチャレンジしてくれるのが嬉しくて、このすぐ後にROHでディドナート(メゾソプラノ)のマリア・ストゥアルダ(グルベ様のオハコだった)と比べて、「やっぱりこれはメゾよりもソプラノの方がスリルがあって聴き応えあるわ」と思いました。


イギリスには来なくても日本にはしょっちゅう行ってたグルベ様、ちょっと前に日本ではもう歌わないと宣言したそうですが、地元チューリッヒやミュンヘンではまだ結構出てくれてるので、ヨーロッパ大陸まで追っ掛けっ掛けようとまでは思いませんが、また聴く機会があるかもしれません。


     


パヴォル・ブレスリクはルックスの貧しい人の多いテノール界にあってハンサムで背丈も充分なのが貴重な存在ですが、今回は特に長髪の金髪カツラとクラシックな衣装でますます素敵。

格好はよくても歌が下手だったら駄目ですが、下手だったらグルベ様と立て続けに共演させてもらえる筈もないわけで、ルックスにマッチするスムーズでノーブルな美声が心地良いテノール君です。


これだけの美貌と歌唱力なのだからもっと人気が出てもよさそうなのに、もう一つ突き出ることができないのは、素直過ぎて強い個性が感じられない声のせいでしょうか?



     


エリザベッタの恋敵のサラ役のヴェロニカ・シメオニは知らない人ですが、時代コスチュームがよく似合う絵のような美女。強い印象は残さないけど歌も充分上手で貢献しました。


     



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