<20th February Mon>
朝晩はとても冷たい日でしたが、モーツァルト三昧も佳境に入った今週、今日は2度目のフィガロの結婚へ。
明日だけは空いてるので、ムスメが仕事帰りに夕食に寄ってくれます。職場のお持たせ用に又トーチャンが張り切ってクッキーを焼いてあげるらしいです。私も食べたいんですけど・・・
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2月15日、ウィグモア・ホールにAlexandre Tharaudのピアノ・リサイタルを聴きに行きました。いつもは地味な年寄りばかりなのに、なぜかこの日はお洒落なゲイ・カップルが多かったような。
タロー君の大ファンであるA先生と二人で着物で行った様子は→こちら
をご覧下さい。
Scarlatti
Sonata in D minor Kk9/in C Kk72/in C Kk132/in D Kk29/in E Kk380/in A minor Kk3/in C Kk514/in F minor Kk481/in D minor Kk141
interval
Chopin
Piano Sonata No. 2 in B♭ minor Op. 35 ‘Funeral March’
Liszt
Funérailles S173 No. 7
タロー君を聴くのは、3年前に続いてこれで2度目の私(2年前はキャンセルされました)、先回は音譜を見ながらの演奏にびっくりしたのですが(→こちら
)、今回は当然のこととして全く気にならなりませんでした。見るからに繊細な彼がそれで精神的に楽になれるのであれば、それは聴き手にとっても良いことですから。
で、音譜を真剣に目で追いながら、どうだったかと言うと、
今日の目玉でもあるスカラッティは、感無量でうるうるなさってた大ファンのA先生ですら「CDの方がずっと良いわ」と仰ってたように、実力を出し切ることができなかったのが残念でしたね、タロー君
特に最初は緊張していたのでしょう、ピュアな音で軽やかに弾くべきスカラッティのところ、どんよりして重くて・・・
弾いていくうちにどんどん音は良くなったし、思い入れたっぷりのテンション高い演奏も彼らしくて良かったのですが、これはやっぱりアンドラス・シフのような正確で安定度の高いピアニストで聴く方がいいかな、と思ったりしました。
今回は知っていたので驚かなかったことはもう一つあり、それはチック症(ピクピクっとした素早い動きなどが、本人の意思とは関係なく、繰り返し おきてしまうのが症状)のタロー君の演奏中の奇怪な行動で、時々壊れたロボットのような動作が突然出る度に、演奏に影響はないのですが、どうしてもドキッとしてしまいます
チック症と精神的な弱さを克服して人前で弾くのは、心身共に健康な演奏家と比べると大変なことでしょうから、ここまで弾けるタロー君は凄いと思います。後半のショパンとリストは、どちらもお葬式がテーマという、ホラー映画に出たらぴったりな青白くて痩身タロー君にビジュアル的にも相応しかったし、細くても43歳の男盛りが渾身の力で叩きつける迫力は立派で、本人も上出来と思ったか、カーテンコールでは嬉しそうなタロー君でした。上機嫌でアンコールで2曲弾いてくれて(ひとつはお得意のクープランらしい)、短いけれど、暗くて重い葬式曲の後にほっとするような軽やかで洗練されたフランスの音を聴かせてくれました。
それにしても、この1週間前に聴いたスティーヴン・ホフ(→こちら
)の、安定してるのは良いけどリストなのに熱気の感じられないクール過ぎる演奏と、清らかに弾いて欲しいスカラッティに力が入り過ぎたタロー君、ビジュアル的にも静と動で対照的な二人を聴いて、あらためて色んなスタイルのピアニストがいるもんだと思った次第。
来月は、私にとってはピアニストの真打とも言える二人、キーシンとアンスネスが聴けるのがとても楽しみです。他にももっと行きたいんですが、今はオペラに行くだけのに忙しくて、ピアノのコンサートには限りがあるのが残念。