<19th March Mon>
退屈新作オペラMiss Fortuneには2度と行きたくないと思うと、あとはROHではバレエばかり。こんな時に限ってコンサートの切符もあまり買ってないので、今週は珍しくなにも無し。急になにかに行くかもしれないけど、無理はせず、家でブログでも書いてましょ。まずはルサルカ。
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2月27日(初日)と3月9日の2回、ドヴォルザークのルサルカの新プロダクションを観に行きました。
有名な人魚姫のお話で大ヒット曲「月に寄せる歌」もあるのに、なんとフル舞台はROHでこれがはじめて。
コンサート形式ではやったことがあり(2003年7月に2回)、聴きに行きましたが、オケはピットに入ったままで、なにもないがらーんとした大きな舞台で歌手が動き回ってて、主役のルネ・フレミングはじめ芝居っ気たっぷりに演じる人から音譜を持って歩きながら歌う人までいたという妙なちぐはぐさがシュールな雰囲気さえ醸し出してて、忘れがたいパフォーマンスでした。
フレミングの裾の広がったゴージャスなドレスは覚えてますが、王子様が誰だったまでは覚えてなかったけど、調べたら、今はどうしているやらのセルゲイ・ラリン。でも、セットも無いそのコンサートの方が、今回の醜いプロダクションよりもずっと良かったです。
人間の王子に恋をした水の精ルサルカは声を失ってでも魔法で人間でしてもらい望み通りすぐ婚約。でも移り気な王子は他の女性に惹かれ、裏切った王子を殺さないとルサルカは永遠に成仏できないけど、王子を愛するルサルカにはそれはできなくて、王子もルサルカに戻ってきて、最後は二人で湖の底に沈んで行く
という、ディズニーのリトル・マーメイドよりはダークなお話ですが、このプロダクションでは家族が売春宿してるルサルカが金持ちの男に恋してその境遇から抜け出そうとしたけど、あまりに境遇の違う上流社会ではお里がばれるのが怖くて口もきけず・・・という設定なのかしら?
はじめて上演するんなら、新鮮味はなくてもまずストレートなファンタジーにしてもらいたかったけど、いきなりこんな変化球が飛んできて、しかもお下劣
Composer Antonin Dvorák
Directors Jossi Wieler/Sergio Morabito
Revival Director Samantha Seymour
Set designs Barbara Ehnes
Costume designs Anja Rabes
Lighting design Olaf Freese
Choreographer Altea Garrido
Video Chris Kondek
Conductor Yannick Nézet-Séguin
Rusalka Camilla Nylund
Foreign Princess Petra Lang
Prince Bryan Hymel
Ježibaba Agnes Zwierko
Vodník Alan Held
Huntsman Daniel Grice
Gamekeeper Gyula Orendt
Kitchen Boy Ilse Eerens
Wood Nymphs Anna Devin/Justina Gringyte/Madeleine Pierard
プロダクション
水の精であるルサルカはTシャツにトレーナー、姉妹たちはスケスケルックの売春婦、おとっつぁんは飲んだくれのポン引き、不気味な黒猫の着ぐるみは出てくるは、安いベニヤ板のサウナのような壁と下品な売春宿。初日に演出家たちが大いにブーイングされたのも当然です(下にブーイング動画あり)。
私は時代や状況の読み替えは決して嫌ではなく、かなりヘンテコに変えられてても古いオペラに新しい息吹を感じさせてくれることもあるわけですが、ドヴォルザークの美しい音楽を汚すだけのこの演出には腹が立ちました ザルツブルグで既にやってて写真は見てたんですが、ここまで下品とは思わなかったです。
おかげで、1回目はすっ飛んだ演出のせいで気が散って音楽を楽しむ余裕がありませんでした。幸い私はもう一度観る機会があり、2回目は意識して音楽に集中したお陰で堪能できましたが(パフォーマンス自体もより良かったし)、一度しか観ない人は最低の印象を持ったままになってしまうでしょう。ドヴォルザーク先生に謝れ
因みに、2回目は全く違う舞台を自分で想像しながら聴こうと思ったのですが、こないだマドリッドで見た、海のように青くてすっきりと幻想的なペレアスとメリザンドがぴったりということに気付いて、そのまま拝借しました。
パフォーマンス
これで歌手もひどかったら目も当てられませんが、幸い水準は充分高かったのは大きな救い。ROH初登場のフィンランド人カミラ・ニュールントは少々太目ながら美人だし、エンジンがかかるのに時間が掛かったせいで一番のきかせどころである例のアリアはいまいちだったものの、後半は盛り上がり泣かせてくれました。
すっかり見直したのは王子様のブライアン・ハイメルで、カルメンのドン・ホセはぱっとしなかったけど、今回は情熱的な演技と歌が素晴らしかった その日の出来不出来とは別に役の向き不向きがあるものね。
ペトラ・ラングはあまり好きではないけれど、今回の悪女ぶりは漫画チックで面白かったし、ルックスは冴えないお父さんのアラン・ヘルドも上手。
そして一番の後継者は急上昇してトップグループに入った指揮者のヤニック・ネゼット・セグインでしょう。おそらくROHデビューだと思うんですが、他で何度か観たことのある超小柄なれどエネルギッシュな指揮ぶりでいつも盛り上げるし、民族風で叙情的な美しいドヴォルザークの良さを余すところなく表現。数年後にパッパーノ大将の後継者になってくれないかなあ。
ブ~~ッ