サンセバスチャンで素敵なオペラハウスを発見したことは→こちらでご覧下さいですが、10月6日、そのVictoria Eugenia劇場でドニゼッティのドン・パスクァーレを観ました。
でも、今年3月のリスボンでもそうでしたが、かつては立派な歌劇場だったのに、今ではマイナーどころかオペラ上演なんて年に数回のみという有様で、薄い観客層のせいで客の入りが悪いのは実に勿体ないこと。 この日も、空席がたくさんありました。切符代は一番高くても75ユーロとリーズナブルなのに・・(当日買うとそこから1割引)。
ストーリー等は10年前にROHでやった時の記事でご覧下さいですが(→こちら)、金持ちの爺さんの遺産相続にまつわるドタバタコメディで、甥が結婚したいという相手が気に入らない爺さんが、それなら自分が若い娘と結婚して子作りするわいと従順な女性を紹介してもらうが、実はそれは甥の恋人の仮の姿で、結婚した途端にとんだあばずれに豹変。 皆で爺さんをぎゃふんと言わせるオヤジ虐待物語。
カーテンコール写真に少し家具や背景が加わったプロダクションは、洗練されてはいないけど演出家のエゴよりも素直にドラマを引き立てようという意図が明らかなのも好感度大
パフォーマンスで高いレベルは期待してませんでしたが、これが意外に良くて、今ROHでやってるコジ・ファン・トゥッテなんかよりもずっと楽しめました。 字幕はスペイン語とバスク語で理解できないので、歌と芝居に集中できたのも良かったし。
Don Pasquale : Carlos Chausson
Norina : Ainhoa Garmendia
Ernesto : Jorge Franco
Malatesta : Joan Martin-Royo
指揮 : Andrea Albertin
スペイン人で揃えた歌手陣の中で知名度が一番高く経歴も立派なのが(→こちら)タイトルロールのカルロス・ショーソン。ROHのフィガロの結婚にも出てたし、映像でもお馴染みのおじさんですが、まだ立派に声は出るし、なかなかダンディだし、わざとらしい過剰な喜劇演技はせず自然体でとても良い感じでした。
アインホア・ガルメンディアは声も姿もアラーニャ夫人のアレクサンドラ・クルチャクみたい。もちろんクルチャクより格は下ですが、歌も演技も上手で、まだ一流歌劇場で活躍するには至ってませんが(スケジュールは→こちら)、大劇場で有名歌手の代役で登場しても誰も「やだー、こんな下手なソプラノじゃ」、とは言わないでしょう。
今回の4人の中で順位を付けると容姿も歌も最下位になってしまうテノールのジョルジュ・フランコですが、それでも細いクリアな声はなかなか魅力的。なんかおどおど遠慮した歌唱だったのが残念だったけど、調子が良い時はきっともっと良いと思う。マドリッドでセヴィリアの理髪師、リセウでチェネレントラの主役をやってるくらいだからそこそこの活躍ぶりなわけだし。
ノリーナのお兄さんは脇役だけど、ジャン・マルティン・ロヨはハンサムだし輪郭のはっきりした声なのが好き。リセウでコジに出たりもしてるからスペインでは成功してるんでしょうね(スケジュールは→こちら)。
というわけで、思いがけず素敵なオペラハウスでリーズナブルな値段で良い席で楽しいオペラを堪能できて、今回のサンセバ旅行の良い思い出になりました