<29th November Tue>
iPhoneで遊ぶのに時間を取られてますが、宿題をやり残してるような気がするオペラ記事もちょこちょこ書きましょう。
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10月18日と11月1日2回、ROHのさまよえるオランダ人を観に行きました。ワーグナーは結構な回数生で聴いてるのに、なんと居眠りしないで全部聴けたことがないという記録をまた更新してしまったのは情けないですが、責めるべきは私であり、今回のパフォーマンスは立派なものでした。
どんなお話?かというと、
ハインリッヒ・ハイネの有名なFlying Dutchman、詳しいストーリーはネットでたくさんあるので、ご自分でテキトーに検索して頂くのがベストですが、一応、ご多忙の方のために文章ひとつでまとめると、
神罰を食らって死ぬことができない幽霊船のオランダ人船長が救われるチャンスは7年に一度上陸できる時に真実の愛を捧げる女性が現れたときで、幸いなことにその伝説に魅せられて「それは私よ」とその気になってる乙女と出会い、すんなりいくかと思いきや、横恋慕する若者に乙女が言い寄られるのを知って、「おぬし、裏切ったな、さらばじゃ」、と去ろうとする幽霊船長に「死ぬまで貴方しか愛さないって誓ったのを証明するわ」と海に身を投げる思い込みの激しい乙女の犠牲によってめでたく呪いは解け、二人で天国へ
えーっ、あと一歩で待ち望んだ願いが叶えられるってのに、婚約者は勝手に片思いされてるだけなのに裏切ったと責めるなんてアホじゃないの?などという突っ込みはさておいて・・・、
ワーグナーのオペラの中では旧来の番号オペラのスタイルを一応保っているのでわかりやすいし、なによりも短いのが助かるんですが(とは云っても、休憩なしで2時半近く)いわゆるワーグナーらしさには欠けるので、これだけでワーグナーを聴いたとは言えないかもしれません。
Director Tim Albery
Set designs Michael Levine
Costume design Constance Hoffman
Lighting design David Finn
Movement Philippe Giraudeau
Conductor Jeffrey Tate
The Dutchman Egils Silins (Falk Struckmannの代役)Senta Anja Kampe
Daland Stephen Milling
Steersman John Tessier
Mary Clare Shearer
Erik Endrik Wottrich
舞台と衣装
現代に読み替えられている上にゼンタの衣装が安っぽくて全然素敵じゃないワンピースなので、これでロマンチックな伝説を思い浮かべろと言われても難しいですが、シンプルで暗いセットは嵐の夜の海のようでなかなか雰囲気があり、私は結構好き。2009年5月がプレミエで(ターフェルとカンペ)、もちろん観たのですが、忙しかったのでしょう、記事にはしてません(多少遅れても書き残しておくべきだった)。
パフォーマンス
オランダ人船長はそこそこ知名度のあるFalk Struckannの予定だったのに、なんて全く聴いたこともないバリトンに変ってしまったので期待度が一気に落ちたのですが、ROHデビューのラトヴィア人のバルバリトンのエギルス・シリンス 、ヴォータンなども歌うそうですが、重さと迫力には欠けるものの、バスバリトンにしては細くて軽くて輪郭もはっきりしてる声は私好み。ビジュアル面でも、ハンサムではないけれど二枚目的雰囲気もあり、そこそこ若くてほっそりとして青白い顔は幽霊船にはぴったりで、このプロダクションは今まではいつもブリン・ターフェルだったんだけど、乙女心を悲劇のロマンスのヒーロー役にはそりゃ漫画チックなブリンよりもずっと良いでしょう。期待してなかった分、得した気分にさせてくれたダッチマン、ロマンチックな気分にさせてもらえたのは貴方のお陰で、この来年のROHサロメにも出てくれるそうなので楽しみです
期待という面では、先回もゼンタ役で素晴らしかったアーニャ・カンペは良くて当たり前なんですが、今回も高い期待にたがわず、また立派な歌唱で聞惚れました
苦手なワーグナーを2回分買っておいたのも彼女が目的だったんですが、彼女が出てくるまでが長くて私も居眠りしちゃったけど、いったん登場してからは出ずっぱり歌いっぱなしのカンペの迫力は素晴らしくて、実は次の日に夢遊病の女を観に行ったのですが、二人のソプラノのあまりの実力の差に、あらためてカンペの良さを再認識もしました。
恋に恋する乙女にはとても見えない中年女ですが、これだけ歌が上手であれば、ルックスなんてこと全くどうでもいいんです。オペラってそういうものだし、若くてなよなよなネーチャンではワーグナーはとても歌えません。
他には、片思いのゼンタが他の男と結婚すると聞いて女々しく迫る若者エリックのEndrik Wottrichはグラグラして頼りないのでX、宝石に目が眩んで得体の知れないオランダ人に娘を嫁にやることを快諾する欲張りパパのStephen Millingはいつも通りの迫力で○、テノール好きの私にはちょい役でも光ってたJohn Tessierがよく通る美声で◎。
指揮者のJeffrey Tateはイギリス人だそうですが初めて見る人で、私の席からは指揮者もよく見えるので、指揮者の身振り手振りもオペラに浸る大切な要素なんですが、ちょっと身体障害者のようなこの指揮者は椅子に座ったまま無表情で指揮棒をかすかに動かすだけなので、ビジュアル的に私はとても不満足。音楽もメリハリなく聴こえてしまうしね。