10月15日にパリのバスチーユ・オペラ(→こちら)で観たのはレハールのオペレッタ「メリー・ウィドウ」(フランス語ではLa Veuve Joyeuse)。そんなに若くない男女が意地を張って好きだと言えない他愛ない恋のさやあてですが、さすがパリ・オペラのオープニング演目だけあって、歌手陣はなかなか豪華。 でも、超目玉ドンカルロスの陰に隠れて目立たなかったようで、最前列のほぼ真ん中が買えました(180ユーロ)。
基本ドイツ語なのですが、舞台がパリなのでフランス語も混じり、語りの部分だけマイク使用なので変わり目に違和感ありですが、安心して観ていられるオーソドックスな演出も良いもので、特にヘンテコリンなコジ・ファン・トゥッテを前日にガルニエで観たばかりの私には新鮮。日本からドン・カルロスのついでにコジとこれもご覧になった方も多かったですが、これでほっと一安心できたでしょう。
さすがに年は食ったけど、まだなんとかダンディでチャーミングなトーマス・ハンプソンとパリのマダムそのもののヴェロニク・ジャンスは長身の美男美女カップルで、特に私はジャンスが大好きなのでうっとり。
主役の周りをちょろちょろする色男はご贔屓テノールのコステロ君で、良かったけど、この役には地味過ぎ。もっと大袈裟に女性を口説いて笑わせてくれなきゃ。
大躍進中のヴァレンティナ・ナフォルミータは若くて綺麗で歌も演技も上手で、舞台の華でした。ジャンスと共に脚がきれいなことと言ったら! まじかで観るとそういうことも楽しめます。
若い妻の浮気を疑う 役、最初はホセ・ヴァン・ダムの予定だったのですが、残念ながら無名のバリトンに代わってました。
ちゃんと出てくれて書記官役で味のある演技で目立ったのは、歌わないのでキャスト表には載ってませんが、なんと往年の名ワーグナー歌いテノールであるジークフリート・イェルザレム。 彼が誰だか知らない人でもやり過ぎないけどとぼけた演技で笑わせてくれた70年代半ばの爺さんは印象に残ったでしょう。台詞だけでも声の良さはわかるしね。ベルリンで観た往年歌手オンパレードのマイスタージンガーではほんのちょこっと歌ってくれましたが(→こちら)、それよりも今回の演技だけの方が目立つ役で、昔はダニロ役をやってたそうですが、本人はそれを思い出しながら楽しんだに違いないです。
パリが舞台で最後はフレンチ・カンカンでパーッと華やかに終わったのも、「そうよ、私は今パリにいるのよ」、という気分にさせてくれてワクワクしたし、今回泊ったのはムーランルージュのカンカン踊り子のポスターで有名な画家ロートレックがかつて住んでたホテルですからね、そんな繋がりも嬉しかったです。
ここでオーケストラストール席に座る夢もやっと叶ったし、やはり正面から近くで観る迫力は凄いので、奮発しただけの価値はあったと思うことにしましょう。