<3rd December (Sat)>
今夜、メトのHDライブ・ビューイング「ロデリンダ」に行ってきました。言いたいことはたくさんあるし、スクリーンを動画にも撮ったので、明日アップしますね。今日は時間がないので、前から準備してあった今更記事オペラ・シリーズです。
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11月2日と10日の2回、ロイヤルオペラハウスにベッリーニの夢遊病の女La Sonnambulaを観に行きました。
アホらしいストーリーの多いオペラの中でもこれはあり得なさではトップを争う作品で、内容についてはNUメトのライブ・ビューイングで2009年3月に観たときの記事をご覧下さい(→こちら )なのですが、かいつまんでコピペすると
夢遊病の女が結婚式の前夜にことにあろうに無意識で他の男の部屋にさ迷いこんでベッドで寝てしまい、それが露見して婚約者はカンカンに怒って婚約を破棄、他の女と結婚することに。夢遊病の自覚のない女は「私はなにも悪いことしてないのにいい」と嘆くが、最後に皆の前で運よく病気が出て、無実が証明され、疑ってごめんねと誤る彼氏とめでたく予定通りに結婚する
という破天荒なお話なんですが、ストーリーはどうでも良くて歌だけが命のベルカント・オペラですから、突っ込むだけ時間の無駄。
で、その肝心の歌なんですが、元よりメトのデセイとフローレスというゴールデンコンビとは比べるよしもないとしても、もうちょっとましなヒロインを引っ張ってこないとコベントガーデンの名にしおれるのではないかと思うくらい情けなかったです
Composer Vincenzo Bellini
Director Marco Arturo Marelli
Set designs Marco Arturo Marelli
Lighting designs Marco Arturo Marelli
Costume design Dagmar Niefind-Marelli
Associate Director Andreas Leisner
Lighting Associate Friedrich Eggert
Conductor Daniel Oren
Elvino Celso Albelo
Amina Eglise Gutiérrez
Lisa Elena Xanthoudakis
Count Rodolfo Michele Pertusi
Alessio Jihoon Kim
Teresa Elizabeth Sikora
プロダクション自体はどうだったかというと、オリジナルの設定はスイスの田舎の旅籠なんですが、このプロダクションはスイスのアルプスの見える現代のサナトリウムで、アミーナはメイド。劇場の舞台裏にしてしまったひどいメトよりはオリジナルに忠実でそれなりに豪華さもあって、まあまあでしょうか。
エグリーゼ・グテイエレズのベルカント歌手としてのお粗末さは、ROHのシャモニーのリンダやベルリンのルチア等で私は嫌というほど知っていて、またあれを聴くのか~、病気になってくれないかな~、とずっと怖れていたんですが、元気一杯で登場しちゃいました
超高音は限りなく細々として情けないけれど一応出るので三百歩譲るとしても、中音の汚さが我慢できません。
それに、美人ではないけれど、オペラからは程遠いアブナイ世界の女性かしら思わせる巨乳体型も以前はウエストはくびれてたのでそれなりに魅力的ともいえなくなかったけど、なんだかちょっと太っちゃったみたいで、アゴのあたりにも肉がついて、おまけに芝居も妙に遠慮がちなのでビジュアル的にもますます失望 優し過ぎるROHの観客はカーテンコールで絶大な拍手してましたけど・・・
私にはテノールが大事なんですが、セルソ・アルベロって誰だろう?、無名だから大した人じゃないだろうなと期待は全くしてなかったんですが、ちょっと前に今年フローレスが日本公演をキャンセルした時の(清教徒でしたっけ?)代役に抜擢され、なかなか評判よかったので、俄然楽しみになり、彼を聴くために切符を持ってた2回共行こうと決めました。
そして、一気に高まった期待を裏切ることのない立派な素質で、私にとっては今回のパフォーマンスを救ってくれた救世主となりました
もちろんフローレスと比べたらまだまだで荒削りなんですが、ダイアモンドの原石であるのはたしか。ハンサムじゃないし若いのにすでに太目なのは残念だけど、テノールにしては背丈は充分だし、この美声と声量ですもん、私、大ファンになったから、細かいところをちゃんとして精進するんだよ。又来てね
女たらしの伯爵はミカエル・ペトルージ。一度も良いと思ったことのないバリトンですが、今回は迫力も個性もないけどスムーズな歌唱とスマートな身のこなしで、一番ましだったかしら。ばりっとしたスーツがとてもダンディだったのはカツラのおかげでしょう(メトの時は地毛(=禿げ)でしたもんね。
エルヴィーノに横恋慕するリーザ役はエレーナ・ザンソダキスElena Xanthoudakis。ROHの脇役(カルメンとチェネレントラ)で聴いたことがあって、美人で張りのある美声がいつもチャーミングなので大好きなんですが、今回も脇役にしては光ってて、誰もが主役のアミーナよりもこっちの方が良いではないか!と思ったことでしょう。彼女がこれを歌うことはできなかったんでしょうか? 3年前に声だけマチルダ・ディ・シャブランのリハーサルで主役の代役した時もすごく上手だったけど(→こちら )
指揮者のダニエル・オレンは、いつもはテンポよくエネルギッシュに指揮するのに、今回は早いとエングレーゼ嬢がついてこれらないからという配慮なのか、嫌になるくらいスローで、このオペラの良さを殺してしまったのでは?