<2nd Mar Sat>
3月の予定はオペラ4回、コンサート4回、バレエ2回と回数こそ平均的ですが、ほれ、話題のカウフマンとネトレプコ共演のオペラもあるし、フローレス王子のコンサートもあるし、皆さんキャンセルせずに出てくれたら、なかなかホットなロンドンよ。
久し振りにトーチャンと旅行にも行くし(ムスメが住んでるブダペスト)、もちろん仕事も忙しいし、全て元気にこなせますよう
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行ったオペラやコンサート全てについて書くのは無理ですが、2月18日に行ったROHのカーチャ・カバノヴァは外せません。
どんなお話かは、2007年6月に観た時に記事にしてますが(→こちら)、以下あらすじだけコピペすると、
あらすじ (突っ込み付き)
原作はオストロフスキーの戯曲「嵐」で、舞台は1860年代のロシア。
裕福な商家に嫁いできたカーチャは鬼姑に虐げられて辛い毎日を送っている。夫は義母の言いなり。(ここまではどこにでもあり過ぎる話)
が、この退屈夫人は夫以外の男性に惹かれている。(ま、退屈しのぎに何かにときめきたいですもんね。日本の奥さんたちがキャーッ、ヨン様~というのと大して変わらないかも)
家を牛耳っている姑の命令で夫が出張に行くときに一緒に連れてってとせがむが勿論拒否される。
彼女に同情する義妹が自分の密会脱出用に鬼義母から掠め取った裏門の鍵をカーチャに渡し、間男ボリスとの逢瀬もアレンジ。(親切心からなんだろうけど、フリンと軽く呼ばれる現代とはちがうんだから、これってまずいよねえ)
さて、ルンルン気分の熱い10日間が過ぎ、夫が帰宅。このまま隠してうまくやろうとするのが賢い奥さんなんだけど、カーチャの悲劇はそれができないことで、良心の呵責に耐えかねた彼女は、なんと自分から皆に告白してしまう。しかも相手の名前までばらして。(これは絶対ルール違反。例え現場を押さえられても白ばっくれるのが鉄則では?)
ボリスはそれを怒らなかったけど(独身だもんね)、伯父さんにお仕置きとしてシベリアに送られてしまう。
まだ愛していると言うボリスに「それなら私も一緒に連れてって」とせがむが「貴女は自由の身ではないから」と断られ(自由の身ではない人に手を出すのはいいのか?)、絶望した彼女は、冷たいヴォルガ河に身を投げる。
養女は恋人と新天地を求めてモスクワに駆落ち。(こちらの若い二人は回りに押し潰されずにうまくやりました。これがないと暗いばかりで辛過ぎるもんね)
という、嫁姑問題や不倫で悩んでいる人にとってはすごく身につまされるお話で、どちらも縁のない私ですら、主人公の心のひだを細やかに叙情豊かに表現したヤナチェックのドラマチックな音楽につい同情してしまい、「ボリス、モスクワにカーチャを一緒に連れてってやれ~っ」、とか「カーチャ、自殺するんなら、その前に鬼ババアをぶっ殺したれ~っ」とか思って引き込まれてしまいました。
ヤナチェク作曲で美しいアリアがあるわけじゃないしとっつき難い音楽なんですが、上手く歌い演じてくれると共感感じて見応えあるパフォーマンスになるこの作品、今回はどんびしゃで、レビューもこの通り(クリックで記事に飛びます)。1970年代に読み替えたプロダクションはダサいので、この高評価は純粋にパフォーマンスによるものです。
The Times (£) ★★★★★
Independent ★★★★
Guardian ★★★★
Telegraph ★★★★
Financial Times ★★★★
The Arts Desk ★★★★
The Stage ★★★★
Culture Whisper ★★★★
Bachtrack ★★★
Spectator (no stars, positive)
Music Leoš Janáček
Libretto Leoš Janáček
Director Richard Jones
Designer Antony McDonald
Lighting designer Lucy Carter
Movement director Sarah Fahie
- Conductor Edward Gardner
- Katerina (Katya) Amanda Majeski
- Boris Grigorjevic Pavel Cernoch
- Marfa Ignatevna Kabanova Susan Bickley
- Varvara Emily Edmonds
- Vána Kudrjáš Andrew Tortise
- Tichon Ivanyc Kabanov Andrew Staples
- Glaša Sarah Pring
- Savël Prokofjevic Dikoj Clive Bayley
- Kuligin Dominic Sedgwick
- Fekluša Dervla Ramsay
カーチャ役はアメリカ人のアマンダ・マジェスキ。すごい声量と迫真の演技、すらっとした美貌で、見事なROHデビューでした。名前すら知らなかったソプラノですが、既に一流歌劇場で主役をたくさんやってるのは当然。色んな役でもっともっと聴きたい!
間男役ボリスを歌ったパヴェル・チェノック(って読むのか?)もアマンダ嬢と釣り合う長身で逞しくて野生的な魅力あるテノールで、歌も立派。オペラには珍しい美男美女で不倫ドラマとしてビジュアル的にも納得できるカップルでした。彼は来シーズンにNYメトでもこの役をやるようです。
主役カップルを観るだけでも行く価値ありましたが、脇はイギリス勢で固めてて、大事な鬼姑役はイギリスが誇る年増メゾ・ソプラノのスーザン・ビックリー。いつもは声量では断トツの彼女が今回は主役のアマンダ嬢に負けましたが、さすがの歌唱と演技でドラマを盛り上げました。
特に楽しみだったのは二人のイギリス人ご贔屓テノールでしたが、名前は同じアンドリューでも、こちらは明暗がはっきり分かれました。
アンドリュー・ステイプルズは母親に逆らえない情けないカーチャの夫を上手く演じたけど、声量がいまいちだったし、ちょっとハゲ始めちゃって、心ときめくテノールが一人いなくなっちゃったかな・・。
一方、アンドリュー・トーティスは、明るく爽やかな美声にますます磨きが掛かり、ちょっと痩せたこともあり(ヘンテコなカツラと70年代そのものダサイ衣装なので格好良くはないけど)、これなら二枚目役も(遠目には)サマになるでしょう。
というわけで、今回はアマンダ嬢を筆頭に皆さんルックスもぴったりで歌も上手だったので盛り上がりましたが、次回下手くそな違う人がやったら、見ちゃいられないプロダクションだわ。
尚、なんと、指揮者のエドワード・ガードナーはこれがROHデビューだそうです。ENOの音楽監督だったから出してもらえなかったんでしょうが、待ってるうちにすっかり白髪になっちゃったね。