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Channel: 着物でオペラ in ロンドン
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ビリー・バッド by Britten  意外なヒットで、ご贔屓トビー君にブラヴォー

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ベンジャミン・ブリテンのビリー・バッド、ROHでやるのは2000年9月以来だそうですが、新プロダクションで盛り上がり、安めの値段設定だったこともあるでしょうが全部売り切れて、ROHもブリテン上演に自信が持てたでしょうし、観客もおそらくブリテンは苦手と思って来てみたけどなかなか良いじゃないかと見直した人が多かったでしょう。 私もその一人で、途中で一回リターンを拾って、4月23日の初日、5月7日と10日の最終日と結局3回行きましたが、その度に良さがわかり、一通り観てるブリテンの中でこれは今回作品として一番好きになったかも。

 

「白鯨」と同じメルヴィル作の内容については以前の記事をご覧下さいですが(→こちら)、要するに、

戦艦に新しく乗り込んだ善良で美貌の若者ビリー・バッドは皆に好かれるが、彼を憎む(屈折した愛の裏返しでしょうけど)クラガート水兵長に濡れ衣を被せられて思わず殴り殺してしまうという事件が起き、ビリーに同情的な艦長は彼を救いたかったが、軍法会議で死刑が決定。「救おうと思えば救えたのに・・・」と艦長は一生悔やむことになる、という思い切り暗く切ない話で、登場人物は男ばかり。

 

20年近く前にやったのは観ましたがまだブログやってなかったのでアーカイブをご覧下さいですが(→こちら)、2005年のENO版はよく覚えてます(→こちら)。 どちらもビリー役はサイモン・キーンリーサイドでした。

 

光と影が効果的なデボラ・ウォーナーの演出はENOの「ベニスに死す」が特に素晴らしかったのですが、今回の新プロダクションもすっきりシンプルながら床が上下斜めに動いたり揺れたりしてドラマを盛り上げ、初日の演出チームはは大きな拍手拍手

 

 

Music Benjamin Britten

Libretto E.M. Forster and Eric Crozier

Director Deborah Warner

Set designer Michael Levine

Costume designer Chloé Obolensky

Lighting designer Jean Kalman

Choreographer Kim Brandstrup

Conductor Ivor Bolton

Billy Budd Jacques Imbrailo

Captain Edward Fairfax Vere Toby Spence

John Claggart Brindley Sherratt

Mr Flint David Soar

Mr Redburn Thomas Oliemans

Lieutenant Ratcliffe Peter Kellner

Dansker Clive Bayley

Bosun Alan Ewing

Donald Duncan Rock

Maintop Konu Kim

Novice Sam Furness

Novice's Friend Dominic Sedgwick

Squeak Alasdair Elliott

Red Whiskers Christopher Gillett

First Mate Ross Ramgobin

Second Mate Simon Wilding

Arthur Jones Thomas Barnard

 

レビューも上々OK

The Telegraph ★★★★★
The Stage ★★★★★
The Independent ★★★★
FT ★★★★
Bachtrack ★★★★
Evening Standard ★★★★
MusicOMH ★★★★
The Guardian ★★★
The Times (£) ★★★
The Arts Desk ★★★

 

 

 

長年のご贔屓であるトビー君(Toby Spence)が艦長役で、リリカル過ぎて声が軽過ぎるというレビューが多く、それはその通りなんですが、私は清々しい彼の声が大好き。初日は程ほどの出来だったのであまり褒められなかったけど、私が2回目に聴いた時は声がよく出てうっとり聞惚れ、双眼鏡でじっくり表情も見ましたが観客が感情移入しやすいこの役を細やかな演技で共感を得てました爆  笑

喉頭癌になった時に「歌えないなら死にたいガックリ」とまで思ったと語ったトビー君の病気を克服してさらに立派な大人の歌手になった姿にはぐっときましたドキドキ。 本当によかったね。今月50歳になるようには見えない若々しいトビー君に惚れ直しましたドキドキ

これでROHで又近いうちに主役が出来る日が来るといいなあ。Wigmore Hallとかのリサイタルの席も埋まるかしら(いつもガラガラなの・・えー?

 

トビー君ばかり見てたので、他の人はしっかり観察できてないのですが、

ビリー・バッド役は元ROHの若手アーチストで長年に渡り何度も聴いてるけど一度も良いと思ったことがない南アフリカ人のジャック・インブレイロ。 大して成功もしてないし、こんな格下のバリトンをここで主役にするなんて観客に失礼では?と危惧してました。 そりゃ、サイモンと比べるとは酷ですが、ジャックはきっとボディビルもやって頑張って役作りに努力し、彼としてはベストを尽くして合格レベル達したでしょうか。でも、ビリーは皆からビューティーと呼ばれる程の美貌というのがポイントなのに、(オペラでは無理なのはわかってますが)全然魅力がなくて、船員たちに混じると存在感ゼロ。これではビリーの不運に船員たちが嘆き悲しみ怒るドラマが生きてきませんね。因みに、映画では若い日のテレンス・スタンプが演じて、水も滴る良い男でした。

 

    

 

悪役クラガードは地味ながら実力派の英バリトン、ブリンドリー・シェラット。ENOでのジョン・トムリンソンのいやらしいまでの大袈裟な悪人ぶりが忘れられないので、今回のシェラットは眼鏡で表情がわからない上に演技もスマートでクール過ぎて物足りなかった。歌唱は文句なしでも、観客の憎しみを一気に背負うように演じてくれると艦長や船員のやるせない気持ちがもっと共感できるんですけどね。このオペラでは大事なポイントです。

 

その他にたくさんいる脇役は皆さんなかなか上手で、演技もきっちり練習したのがよくわかりました。オケもコーラスも満足。ROHでもっとブリテンをやるべきだと誰しも思ったことでしょう。次回は良い歌手が出るのであれば、普通の値段設定でもいいかもとROH側も思ったかも。

 

カメラ写真は色んな角度から観た日毎にまとめてみました。トビー君の表情が明らかに違ってたのが私には印象的でした。

 

1 4月23日、ストールサークル舞台脇

  拍手 演出チームには大きな拍手

    

 

 

2 5月7日、ストールサークル正面立ち見

この日のトビーのはしゃぎようったら!! この日が初めて会心の出来だったのかな?

 

    

 

   

 

小さい写真はクリックで拡大します。後で自分でうっとり見たいですから、これ以上は削れません。  

    

 

   

 

   

 

 

3 5月10日、バルコニー

    

滅多に座らないバルコニー、スペースはゆったりして椅子も自由に動かせるのはいいけど、うんと乗り出さないとなにも見えないので、しんどい姿勢で疲れる。私はA12だったけど(43ポンド)、隣のA13は足元に出っ張りがあるのでNGですからね。

 

    

筋肉マンがたくさん出てた中で、特に目立ったのがこのムキムキマン、ドナルド役のバリトン、ダンカン・ロック。 歌も迫力ある彼のせいでビリー・バッドが貧弱にみえちゃいましたね。


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