<6th Nov Tue>
とても寒いロンドン、今朝家を出た時はなんと3度。これは真冬でも「今日はすごく寒いね~」、と感じる気温で、日曜日はなんとイングランド南部で初雪も
ROHのリングサイクル騒ぎが終わってからすでにしばらく経ってしまいましたが、あと一つだけ残ってる「神々の黄昏」についても一応記録しておかないとね。
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私たちはサイクル4回のうちの3回目に行ったのですが、そのクライマックスである神々の黄昏が10月24日でした。
ワーグナーが15年掛けて描いた壮大なストーリーの筋書き椿姫的解釈は以前の記事(→こちら )をご覧下さいですが、要するに、
ボス神ヴォータンが指輪奪回作戦のために生み出した英雄ジークフリートは見事指輪を手に入れたが(頭が弱いし、指輪の価値は理解できないので、すぐに愛の証にブリュンヒルデにあげちゃうんですが)、アルベリヒ(覚えてますか?最初にライン河底から黄金を盗んだ人です)の息子ハーゲンの策略で忘れ薬を飲まされ、ブリュンヒルデを捨ててハーゲンの妹と結婚。怒り心頭のブリュンヒルデがジークフリートの弱点を暴露してためにジークフリートは殺され、指輪をめぐる諍いをこれ以上繰り返さないようにと、ブリュンヒルデはジークフリートの遺骸が燃え盛る中、指輪もろともライン河に飛び込み、ヴォータンが建てたワルハラ城も炎上
で、3代に渡る長年の呪いと葛藤は終焉し、結局、物語の最初の状態に戻っただけという、進歩のない話なんですが、まあ世の中そんなものでしょう。
パフォーマンスについてですが、
そろそろ疲労で倒れてくれてもいいがとワラ人形した祈りも空しく、ブリュンヒルデのスーザン・ブロックは今日も元気一杯。でも、絶好調でも弱い声だし、ワルキューレ、ジークフリートと散々聴き飽きたので、彼女が歌ってる間は死ぬほど退屈して、長いオペラがますます長く感じました。当たり前のことだけど、オペラは歌手の出来によって良くも悪くもなるということを痛い形で再確認
その証拠に、ジークフリートのステファン・ヴィンクが歌ってる間は短く感じましたよ。スコーンと声が抜けるテノールはやっぱりオペラの華だわ。
反対に、いくら上手でもバリトンやバスには萌えない私は、ハーゲン役のジョン・トムリンソンは感心と尊敬はすれども、聞き飽きたこともあり、来年1月のミノタウロス(→こちら )もパス。
今日とても良かったのは、この回で初登場の女性二人。
まず、藤村実穂子さんは、ブリュンヒルデの妹役で、「お姉ちゃん、皆が呪いから救われるように、指輪はワインの乙女たちに返してあげて」、と懸命に説得するんですが、腰の据わった歌と演技はi説得力もあり、実に立派なパフォーマンスでした。この役はいつも彼女なので聴くのは少なくとも3回目なのですが、今回は特に相手役が迫力のないブリュンヒルデだったので、藤村さんの素晴らしさが更に際立って、大きな拍手を受けました。他の役でも聴いてみたい!
あ、藤村さんはもうすぐ日本のあちこちでお歌いになるようですよ!(→こちら
)
もう一人は、歌う場面は少ないけれど、舞台映えする大柄美人のレイチェル・ウィリス・ソレンセンで、私は彼女のよく通る張りのある輪郭のはっきりしたクリアな声が大好き。今年はじめのフィガロの結婚でも素敵な伯爵夫人だったけど(→こちら )、モーツァルトもワーグナーも上手に歌えるなんて凄い。
今日はオーケストラ全員が舞台に立ってカーテンコール。ROHでこのスタイルを見たのは初めてですが、これをいつもやってるバレンボイム先生の真似をしたのでしょうか?
今回残念だったのは、いつものオケの横の席に座ったところ、普段は後ろにいる金管楽器の一部が横に流れ、私のすぐ下にホルンとチューバがいたので、彼らがフルに吹くと(下手だし)オケも歌手も聞えなくなってしまうという状態だったこと。ワーグナーはオケが最重要とも言えるわけですから、パッパーノ大将の勇姿をまじかに見られたのは感激でしたが、あまりにもアンバランスで台無し・・・
ということで、全ての役に一流歌手を揃えることはできなかったですが、来年のワーグナー生誕二百年に先駆けて切符の売れ行きは凄まじかったし、全体的にはまあまあの出来だったのではないかしら。
私はここでサイクルを通しで観るのは、ゲルギエフ指揮のキーロフも含むと3度目なので、特に達成感もないのですが、フルサイクルを一気に観るのは初めてだったトーチャンは、「あれだけ払った価値はあったよな」と何度も言い(私が高いなあとブツブツ言い過ぎたわけではないですよ)、楽しんだようで、彼にとっては今年のオペラ鑑賞のハイライトだったに違いないです。
ワーグナーがとても気に入ったトーチャンには申し訳ないのですが、もうすぐ私だけ海外遠征でローエングリンを聴きに行きま~す それについては又近いうちに。