<13th Jan Sun>
一昨日のコンサートのアンコールでカレヤがシャンペングラスを私に渡してくれた出来事についてはすでに書きましたが(こちら )、今日はコンサート自体についてです。
以下の写真はクリックで拡大します
1月11日、ロイヤル・フェスティバール・ホールでテノールのジョセフ・カレヤのコンサートがありました。
マルタ島出身のカレヤは、去年のプロムスのライスナイト出演で知名度がぐんと上がったおかげか、この大ホールが満員(カウフマンの半額であるのも理由でしょうが)。途中のお喋りでカレヤ自身が言ってたのですが、今日はクラシックのコンサートに来るのが初めてという人もたくさんいたそうです。
Gioachino Rossini: Overture, The Thieving Magpie
Amilcare Ponchielli: Cielo e mar from La Gioconda
Georges Bizet: Flower Song from Carmen
Georges Bizet: Danse bohème from Carmen
Giacomo Puccini: Recondita armonia from Tosca
Giacomo Puccini: Vissi d'arte from Tosca
Giacomo Puccini: La tregenda (The witches dance) from Le Villi
Giacomo Puccini: E lucevan le stella from Tosca
Giacomo Puccini: Si, mi chiamano Mimi from La Bohème
Giacomo Puccini: O soave fanciulla from La Bohème
Interval
Giuseppe Verdi: Overture, I vespri siciliani
Giuseppe Verdi: Pace, pace mio Dio! from La Forza del destino
Giuseppe Verdi: La donna è mobile from Rigoletto
Giuseppe Verdi: Ernani, involami from Ernani
Pietro Mascagni: Intermezzo from Cavalleria rusticana
Pietro Mascagni: Addio alla madre from Cavalleria Rusticana
Umberto Giordano: Amor ti vieta from Fedora
George Gershwin: Summertime from Porgy and Bess
Nicholas Brodszky: Serenade from Serenade
Nicholas Brodszky: Be my love from The Toast of New Orleans
アンコールは2曲で、同カルーソ映画からBecauseと、椿姫から乾杯の歌。
Philharmonia Orchestra
Andrew Greenwood conductor
Joseph Calleja tenor
Indra Thomas soprano
マリオ・ランツァMario Lanza(1921-1959)に捧げるというのがテーマでしたが、カレヤが13歳の時にハリウッド映画The Great Caruso(邦題は歌劇王カルーソ)で偉大なテノールであるエンリコ・カルーソーを歌い演じたランツァの映画を観たのがオペラに興味を持ったきっかけだったと熱く語ってくれました。(2、3年前にテレビで観ました、この映画)
イタリア系アメリカ人マリオ・ランツァは、舞台でちゃんとしたオペラ歌手になりたくて実力もあったらしいのに、美貌ゆえにハリウッドに目を付けられてオペラ風味のミュージカル映画俳優にされてしまい、結局舞台で大した成果も上げないうちに心身共に壊れて38歳で死亡。
ランツァ同様、現代でもクラシック畑で勉強して実力は大したことがないけどルックスは良いという歌手たちには、オペラっぽいポップ歌手になるという道もあるわけで、本人たちも迷うところでしょう。
その点、このご面相のカレヤは選択の余地がなく、女性にキャーキャー言ってもらえる一般向け歌手にはなれませんから安心。この実力ですからそんな必要は全くないしね。
でも、本人はその方面の野望もちょっとあるらしくて、今日はテーマがテーマですから仕方ないのですが、最後2曲と最初のアンコールはハリウッド映画で歌われた英語の歌でまるで歌謡ショーになってしまい、オペラアリアほど彼の魅力を出せる曲でなかったこともありちょっと不満。ルックス云々を別にしても、本格的なアリアで勝負するほうが良いと思うんですけどね。
その証拠に、一番受けたのはカヴァレリア・ルスティカーナで、ほら、上手ならオペラになじみのない人でもちゃんと魅力はわかるのよ。
因みに、私が一番うっとりしたのは、アリアとして聴き飽きて ないという理由で、ジョコンダとフェードラ。
カレヤの最大の売り物は声量とクリーミーな美声ですが、これだけのヴォリュームを楽々と出せる人はそうはいなくて、私はこのホールの同じ席でカウフマンやフローレスを聴いたこともありますが、違うレベルです。彼の口から私の耳まで3メートルくらいでしたが、彼の声を全身に浴びるような感覚で嬉しいけど、少々迫力あり過ぎと思ったくらい。
それに、こんなに近くだと、呼吸やつなぎの部分で小さい妙な音が漏れるのも聴こえてしまうこともよくあるのですが、カレヤはこれが顕著で、クシュクシュというドイツ語みたいな発音の雑音をしょっちゅう出したのがちょっと興ざめだったかも。
で、それならいっそドイツ語で歌ってくれればいいのにとつい思ってしまい、最近私はYoutubeでクラウス君のローエングリンばかり観てるんですが、カレヤのこの立派な声量とまっすぐな美声とスタミナありそうな体躯はローエングリン向きではないのかしらとも思ったし。ワーグナーを歌うにはドイツ語が問題でしょうが、是非習得して頂きたいものです。それとも、ENOで彼が英語でワーグナーをやってくれるのであれば、翻訳オペラは大嫌いな私ですが、何度でも聴きに行きますとも
カレヤは期待通りの素晴らしさで、素人客でも「オペラ歌手ってすごーい!」と感激したに違いないですが、このコンサートには、残念乍ら大きな欠点があり、それは共演したソプラノがあまりにひどかったことです
インディラ・トーマスって名前も聴いたことないし、経歴を見ても大したことないので期待はしてませんでしたが、声はかすれるし声量はまるっきりないし、たまたまこの日だけ超不調だったということでもない限り、この由緒あるホールでソロを歌えるレベルではありません。
後半は少しましになりましたが、前半のひどさが普通なのであれば、このホールどころか、どこででもプロとしてやっていける筈がありません。
もっと上手なソプラノはゴマンはいるのに、なぜ彼女がここに? と不思議でなりませんでしたが、こうなったらもうヤケクソで、「これほどレベルの違う二人のデュエットを聴くことは滅多にないから、貴重で珍しい機会と思って面白がるしかないわ」、と
アイーダがお得意のようですから、役柄にぴったりの褐色の肌の美人なんだし、アイーダを歌い演じてくれればまだ救われたかもしれないのに、いやそれ以前の問題として、カレヤとの二重唱の相手としてだけで充分なのに、結構難しいのもたくさん歌いたがって(歌わせてあげる側が悪い)、聴いてる身にもなってよね
トーマス嬢の2着のドレスを比べて、体型に合う衣装選びがいかに大切ということもいやと言うほど再認識させられました。
赤いドレスの時は、顔は華やかな美人で大柄な彼女は舞台映えしてとてもチャーミングだったのに、体型がもろに出る黒いドレスに着替えたら、まるで別人
二人の後ろ姿の写真でもおわかりのように、でっかいカレヤが、彼女の隣に立つとほっそり見えるくらい(ちょっと燕尾服のズボンが短いのが残念)。
実は最近、これと似たようなドレープのワンピースを買った私、頑張ってジムで運動して醜態をさらさないようにしなくては、と決意もあらたにしました。
さて、明日はウィグモア・ホールにイタリア人テノールのファビオ・アルミリアートを聴きに行きますが、今がピークのカレヤのすぐ後に、やや盛りを過ぎたアルミリアートというのも興味深いかも。
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