<5th May Sun>
今日は、ムスメがもうすぐ引っ越すフラットを見に行ったり、近所でお花見したりして過ごしました。近所の公園も八重桜もようやく満開に。こういう写真が2週間前の誕生日に撮りたかったんだよ
昨夜のドンカルロの初日は盛り上がりましたが、はジョイス・ディドナートとトビー・スペンスも来てました。二人とももうすぐROHに出演するのでここにいても不思議はないですね(こないだホセ・クーラをカフェで見掛けた時とは違って)。魔笛やらドンカルロやら書きたいことがどんどん溜まる一方ですが、まずハンブルグ関連を優先することにして、旅行の目的であったオペラ鑑賞について片付けましょう。
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4月28日の日曜日、ハンブルグ州立歌劇場でワーグナーのニュールンベルグのマイスタージンガーを観たわけですが、そんなに遠くないとは言え、ハンブルグくんだりまでわざわざお金と時間を使って行ったのは、一にも二にも愛しいクラウス君(クラウス・フロリアン・フォークト)の生声を聴くためだけでした。そういう贅沢をしてみたかったんです。
私よりもっとご存知ない方のために、どんなオペラなのかざっと説明すると、
ワーグナーでは唯一の明るく楽しい作品で、テーマはマイスタージンガー(英語だとmaster singer)。要するに中世のシンガーソングライターのコンテストなんですが、今回の一等賞はなんと超美人のお嫁さん。通り掛った騎士が彼女に惚れて、コンテストのことはなんにも知らないし歌うのもはじめてだけど、特訓と素質で、ズルしようとしたライバルを蹴落として、見事優勝するというお話。だけどこいつは「僕さ、彼女と結婚するだけで充分。マスターシンガーになんかなりたくないよ」と失礼なことを言い出すもんだから、皆で寄ってたかってマスター歌手がいかに価値あるものかを説得して、最後は「ははーっ、わかりやした。謹んでお受けします」、とめでたしめでたし。
最近、東京でクラウス君出演コンサート形式で上演されましたが、これほどコンサート形式に不向きなオペラもないでしょうから、日本の皆さんはお気の毒。でも、クラウス君が来てくれたんだから、ロンドンよりいいですよ。
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プロダクション
プロダクションについてはオペラハウスのサイトに写真も載ってないし調べてる余裕もなかったこともあり、一体どんな演出なのか謎でしたが、「まあ、何も知らない白紙の状態で接すると見方もあるわけだし、今回はそれでいこう」、と言い訳しつつ、いきあたりばったりで鑑賞。
で、何も知らずに観て結果的に良かったと口惜しまぎれするしかないのですが、後で色々読んでみたら、結構話題になったコンヴィチニーの演出だったのでした。道理で、面白かったわけだ。(ドレスデンのタンホイザーも面白かったです→こちら )
詳しいことは、(今はどうなさってらっしゃるのか、数年間ブログの更新もないのですが)、ハンブルグ在住でらしたフンメルさんのブログ→こちら
でお読み下さい。
などと、また人の褌で相撲を取ろうとするこっすい(名古屋弁でずるいという意味)椿姫ですが、要するに、私の感想では、古めかしい色調のセットと、論議を醸し出すことが多いことで有名な演出家コンヴィチュニーらしいひねりが、動きもたくさんあるし、前から2列目で観ていてビジュアル的にとても楽しかったです。
マイスタージンガー達のいでたちが丸っきりワーグナーだったのは(帽子にオカッパ付け毛!)、今年は彼の生誕2百年ということでぴったりだし、歌合戦にはワーグナーのオペラの登場人物にコーラスの人たちが扮して次か次に出てきたのは爆笑でした。そして、これはコンヴィチュニーの指示通りかどうかわかりませんが、人選の基準は「最も役に似つかわしくない人」だったとしか思えないくらい年食ってて醜い人たちばかりだったんですよね、これが。特に白鳥を抱いたローエングリンは、こないだのベルリンのクラウス君扮する美男騎士とのあまりの差にのぞけってしまいましたわ。
ドイツ語が理解できないので細かい歌詞や台詞はもちろん全くわからずなのですが、特にこの演出で話題になったのは、最後近くに演奏を中断して歌手たちがああだこうだと論議をする場面のようです。客席から拍手や野次も飛んだりして盛り上がってましたが(サクラかも)、事前に知ってたら、「キャハハっ、なにこれ?!」、という意外性は半減しちゃったでしょうから、無知のままで良かったと素直に思えます。
パフォーマンス
唯一大切だったクラウス君ですが、なんと茶色の長髪巻き毛のカツラに付けヒゲで登場。行く前にブログで「あの長い金髪が彼の魅力なんだから変なカツラだけはやめてね」、と書いたのですが、それがモロに的中してしまい、面食らったのなんのって。
三銃士のダルタニアンみたいなヘアスタイルと衣装ですが、これはニュールンベルグ出身のデューラーの自画像にも基づいてるらしいです。なんせ大変な美男子の肖像ですから、ヘチャムクレの歌手が演じたらゲロゲロですが、最初は、「やだ~!、素顔のクラウス君をわざわざ観に来たのに、なにこれ~」、と泣きたいくらいでしたが、見慣れるととても似合ってて、長身なの重たそうな長いコート姿も立派で見栄えがして、「そうよね、端正な美男子は何を着てもチャーミングだわ~」、と惚れ惚れ 初めて見る彼のコメディ演技も新鮮で、私の視線はずっと釘付け (以下の写真はクリックで拡大)
歌も絶好調で危ないところは全くなくて(こないだベルリンでは声がひっくり返ったりしたんですが)、前から2列目ですからうんと近くで彼の真っ直ぐに突き抜ける声を思い切り受け止めることができて大満足&メロメロ。ミュンヘンとベルリンで聴いてローエングリンがワーグナー作品の中ではベストと思っていたのですが、クラウス君の澄んだ声で美しいメロディをたっぷり聴いたらマイスタージンガーの方が好きになりました。
(尚、イギリスと違い、ドイツではインターバル毎にカーテンコールがあるようで、今回も2回ありました。両方ともクラウス君ばかり狙ったので幸い彼の充分写真があるのですが、終わった後のカーテンコールで撮り始めたら、隅っこから4つめの席の私は劇場の係に「写真は駄目」と言われてしまったので、他の人の写真はほとんどありません。他のところでは他にも写真撮ってる人がいるものですが、ここは誰もいなかったので、特に厳しいんでしょうね、きっと。遠征を考える際にはマイナス点か?)。
歌合戦の賞品にされた美人エヴァは、アメリカ人ソプラノのミーガン・ミラー。歌う場面が少ないので歌唱力は判断できませんが、心地良い声は充分合格。舞台映えする華やかで大柄な金髪美人なので、ちょっと前にROHでやった新作オペラ「アンナ・ニコール」なんて素顔のままでぴったんこだわ。
若いエヴァに密かに想いを寄せるマスターシンガー兼靴職人ハンス・ザックスがこのオペラのタイトルロールなんですが、中年という設定なのに、誰よりも若いイギリス人のジェームス・ラザフォードなのでびっくり。
うちのトーチャンと同郷で、数年前にグラインドボーンのドサ周りでモーツァルトのフィガロを地元ノリッチで歌った時はローカルボーイが故郷に錦を飾ったと盛り上がりましたが、立派なのは体格だけで声量はないしソフトな声なので、とてもワーグナーを歌えるとは思えず心配でした。
案の定、オケにかき消されてしまいハラハラしましたが、太った体と優しい声に接してるうちに役柄に見合う暖かい人柄がにじみ出てきてなかなか良い感じでした。イギリス人なのにドイツ語で喋る場面もあったけど、なんとかうまく言えたようで安心しました。というわけで、若いイギリス人が本国ドイツでワーグナーの主役するなんて凄いことでしょうから、つい応援してしまいました。
イギリス人歌手がもう一人いて、エヴァの父親にピーター・ローズ。ROHのちょい役でよく出てましたが、ちょっと前までぱっとしなかったのに、最近とみに上手になった60歳くらいのの縦横でかいおっさんで、こないだのROHのオネーギンですっかり見直されました。この直前にミュンヘンのさまよえるオランダ人にも出てたし、急にどうしちゃったの? でも、たこ坊主のようなユニークな容貌はバリトンには得なこともあるでしょうから、頑張って欲しいものです。それに、オネーギンでは彼だけえらく大きく見えたのに、長身歌手たちの中ではなんだかちっちゃく見えたのも可笑しかった。
今回、クラウス君の次に楽しみにしてたのが、生で初めて聴くデンマーク人バリトンのボー・スコウフス。
ちょっと前までタフガイ的二枚目だった筈なのに、なんとツルツルに剃りあげた坊主頭になってて、エヴァに横恋慕する三枚目のベックメッサーを大袈裟なコメディ演技で大熱演
歌も演技も凄く上手な上に、どんなにおどけても坊主頭でもシャープで魅力的な同情集める悪役ぶりで、たとえ彼が誰だか知らなかったとしてもこの人凄い!と思ったに違いありません。もうすぐROHにもカプリッチョで出てくれて別の面を見られるのが楽しみ。
指揮者は女性でこのオペラハウスの音楽監督であるシモーネ・ヤング。私は可もなく不可もなくと思ったのですが、彼女だけブーイングされちゃいました。
切符代は89ユーロ(おそらく一番高い席)とリーズナブルだったし、クラウス君を近くでたっぷり聴けたし、面白いプロダクションだったし、(写真撮れなかった以外は)大満足のハンブルグ遠征となりました。クラウス君のおかげでここに来られたわけだし、ありがとう。
お天気にも恵まれたハンブルグはなかなか雰囲気のある港町でしたが、あと観光編とレストラン編が続きます。一番手間の掛かる写真選びは既に済んでますので、まもなくアップの予定。
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