<18th May Sat>
怒涛の5月も半分終わり、今週末は久し振りに家でのんびり。明日はムスメが遊びに来るのですが、今日は家であれこれ片付けましょう。今夜はドンカルロは止めて、TVユーロヴィジョン・ソング・コンテストを観ることにしましたが、一昨日の予選で印象的だったルーマニア代表のカウンターテナー君が楽しみ。
魔笛、ドンカルロと書くことは溜まる一方ですが、昨夜は湖上の美人の初日だったので、まずそれについて朝のうちにちょっとだけ書いちゃいましょう。
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待ちに待ったロッシーニの湖上の美女La donna del lagoの新プロダクションの初日
なんと、当日の午後になってネットでコリン・リーが病欠と発表され、彼が出ることなんてすっかり忘れていたにも拘わらず、大好きなテノールなのでがっかり
それ以外でも、なんだか失望することの多くて、やたら長く感じた夜でした。
まず、原作はウォルター・スコットの小説なので、しっかり出来た話なんでしょうけど、深い心理描写はできないオペラにするとえらく薄っぺらい話を無理に引き伸ばし、ドラマが展開する部分はえらくあっさりで、皆が「XXが好き~」って歌ってるばかりの印象なので冗長で退屈
スコットランド国王が絡んだ愛の三角関係なんですが、湖で出会った美人(反逆者の娘)に惹かれて求愛するが、彼女には恋人がいて、王に刃向かった彼女の父親の命を助けてやるから俺のものになれとまで脅迫しても頑として断られ、最後は「わかったよ、好きな男と一緒になれってんだ。親父も許してやるぜ」、とめでたしめでたし。これじゃあヘンデルじゃないの(あ、ドラマ欠如でも私はヘンデルのオペラが大好きですから)。
セットは製作初期段階でちらっと見てたんですが、なんだか野暮ったいなあと思っていたところ、やっぱりプロダクション・チームはカーテンコールで大いにブーイングされてしまいましたね。スコットランド=タータンチェックとメル・ギブソンの映画Braveheartってあまりにも単純で、でもまだそこからアイデアを膨らませてデザイン的に工夫のしようもあるだろうに、全くベタで斬新さゼロ。羊の生贄場面だって、あそこまでリアルにしなくてもいいのに。
特に、去年のフォルスタッフで余ったパネルに描いたのではないかと思われる古めかしい写実的な風景画がまずかったのではないかしら? 大きならせん階段はそれなりに効果があったと思うけど。
衣装は、スコットランド国王役のフローレスが何度も着替え、どれも丁寧に作ってあって可愛い~、と思っていたら、最後はやり過ぎのタータンチェックでコケましたが、楽しめました。対照的に、ディドナートは赤毛のカツラと薄汚れたドレスだけでつまんな~い。衣装デザイナーはゲイか?
はじめて聴くオペラですが、音楽的には、私が今までに聴いたロッシーニで一番つまんない作品だと昨夜は思いました。でもそれは最後のメゾソプラノの超技巧アリア以外は聴いたことがなくて馴染みがないからであり、何度か聴いてるうちには聴き慣れて良さがわかるかもしれないし、歌手のテクニックを要するという点では聴き応えのある作品です。
Director | John Fulljames |
Set designs | Dick Bird |
Costume designs | Yannis Thavoris |
Lighting design | Bruno Poet |
Choreographer | Arthur Pita |
Conductor | Michele Mariotti |
Elena | Joyce DiDonato |
Uberto | Juan Diego Flórez |
Albina | Justina Gringyte |
Serano | Robin Leggate |
Malcolm | Daniela Barcellona |
Douglas | Simon Orfila |
Rodrigo | Micheal Spyres(Colin Leeの代役) |
Bertram | Pablo Bemsch |
Un Bardo | Christopher Lackner |
救いはパフォーマンスが素晴らしかったことで、フローレスとディドナートは絶好調。しっかり芯のあるパワフルなフローレスと、繊細なディドナート、さすがです
ROHに初登場(少なくともこの14年間では)のダニエラ・バルチェローナをはじめて生で聴くのを楽しみにしてましたが、期待以上の出来で、どの音域も継ぎ目がなくスムーズで、コロラチューラも軽やか。彼女のことは知らないROHの聴衆も「お、上手じゃないか」、とびっくりしたでしょう。
しかし、彼女はディドナートの恋人のズボン役なんですが、その男らしいことと言ったら 長身なだけでなく誰よりも男性的な容貌と振る舞いで、あれが女性だとはとても信じられません。
唯一残念だったのは、コリン・リーのキャンセルで、もし出てたら、四つ巴の歌の競演がきっと素晴らしかっただろうに。
代役のマイケル・スパイヤーズは健闘したし声も悪くないので普通の役だったらなかなか良いかもしれませんが、ディドナートを横恋慕するロドリゴ役は、超高音から超低音まで出さなくてはならず、並のテノールでは無理。低音はまずまずだったけど、高音がヘナヘナな時も何度かあり、「ああ、これがコリン・リーだったら、力強い声でフローレスさえも吹き飛ばしたかもしれないのに・・・」、と想像してばかり。早く治って、2回目からは出て下さいね、絶対に。
というわけで、いつもは同じ役で比較することの多いフローレスとコリン・リーの競演を聴き逃したのは残念ですが、少なくともあと3回は行くので、また違う意見を持てるかもしれません。
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