<22nd Nov Fri>
今朝のROHのサポートフレンズ予約開始バトル、いつものことながらイライラすることが多くて疲れました。「すでに他の人が取ってった席をいつまでもクリックできるように残しておくなよな~っ」 そのせいで、何倍も時間は掛かるは頭に来るわで、終わった時にはぐったり。折角今日は休みだしお天気も良いのに、出掛けそびれたじゃないの 因みに、今回の目玉はカウフマンのリサイタル(冬の旅)とネトレプコのファウストで、理想的ではないけど、なんとか残り物をゲットできてやれやれ。
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ブリュッセル旅行について書いてる間に書きそびれたオペラやコンサートがいくつかあるのですが、一応記録に残しておかないと、あとで自分でわからなくなってしまうので、「え~っ!、今頃なに言ってんのよ」、と呆れられても、手短にアップしておきます。
本公演ではなく、10月28日のリハーサルでしたが、カメラのシャッターの音がかしゃかしゃうるさい以外は本番と同じようにちゃんとやってくれるし、僅か14ポンドで普段は座れないストールサークルの1列目から観られるのはありがたいことです。2列目、3列目は硬めのベンチシートですが、1列目は柔らかいひじかけ椅子なので快適 トーチャンにも滅多にできない贅沢を味わわせてあげました。
1925年初演のアルバン・ベルクのこの作品は、実際にあった死刑となった元兵士の情婦殺人事件に基づいており、オペラでは死刑にはならず溺れ死ぬのですが、お金のために人体実験のモルモットになってる貧しい床屋上がりの兵士ヴォツェックが、他の男と通じた内縁の妻マリーを殺すという陰惨なお話で、まるでショッキングな三面記事みたい
陰惨な内容でも、そこはオペラのマジックというか甘美なメロディで包んでしまうことが多いのですが、この作品は音楽もリアルに相応しく陰気で不気味なので、2012年秋のプレミエで観た時は聴いてて頭痛がしたほど
そんな経験は後にも先にもそれ一回だけなので、「うへーっ、あれを又観るのか・・・。今度は途中で逃げ出したくなったらトンズラできる席にしよう。休憩なしで2時間近くぶっ続けだから、さぞかし苦痛に違いない」、と心配だったのですが、あれ以来もっと前衛的なオペラを結構観て慣れたせいか、「なーんだ、普通じゃん。それどころか、評判通りの名作だ」、と感心すらしたのでした。
それは勿論、パフォーマンスが素晴らしかったからで、前回も高いレベルでしたが(マティアス・ゲルネとカタリーナ・ダライマン)、今回は更にレベルアップ
クスリの副作用で幻覚症状も出る哀れなヴォツェックを、いつもの俳優並みの細やかな演技でサイモン・キーンリーサイド、こういう苦悩の人を演じさせたらピカ一の彼ですから、新聞評などで好評だったのも当然。うすのろをすごく上手に演じているのに、彼がインテリだと知っているのでどうしても滲み出る知性を感じてしまうのは、私が悪いんでしょうしね。
溺死シーンは水槽の中で管で呼吸して長い間浸かっているのですが、目を開けたまま全く動かないので、「も、もしや・・・」、と心配になり、双眼鏡で彼がまばたきしてるのを確認したほどで、全くサイモンのリアルなのめり込みにはぞっとして、 あ~、怖かった。
マリー役のカリタ・マッティラもサイモンに劣らず歌も演技も素晴らしくて、彼女はあまり好きではないのですが、今回は真摯な体当たり演技に感動。人体実験アルバイトで忙しいヴォツェックに放っておかれて淋しい女盛りの色気と焦燥感をこれほど上手に表現できるソプラノは滅多にいないので、普通のイタリア物とかはやらなくていいから、こういう難解な役に特化したらいいのではないかしら。
低い声には魅力感じない上に嫌というほどROHには出るので聴き飽きたジョン・トムリンソン爺だけど、いつもの通りさすがと思わせる貫禄と深い声でサディスティックな医者を楽しんで演じているようでした。
来週は彼のマスタークラスに行く予定です。インタビューにも行ったことあるのですが、意外と庶民的なおじさんなんで、でも話す声がとても威厳があって聞き惚れてしまうほどなので、歌えなくなってもナレーションで充分食っていけるでしょう。
こんな斬新で手強い音楽でも、堅実で何でも振っちゃう指揮者マーク・エルダーですから、安心して聴いていられました。
というわけで、緊張感を感じながらも思いのほか楽しめて、私のヴォツェック恐怖症もすっかり治りました
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