<24th Nov Sun>
寒いし、結局3日間家から一歩も出ずに過ごしてしまったわ。イギリスでは大人気のSFテレビ番組Dr .Whoが50周年ということで記念番組をどっさりやってて、トーチャンに付き合って観ちゃったしね。パートタイムになってテレビを観られる時間はたしかに増えたけど、一番増えたのは睡眠時間で、寝るためにそうしたわけじゃないんだから、これではいけないわ。幸い明日からは毎日あれこれあって出掛けるので、頑張ろ。寒さも和らぎますよう・・
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11月7日、ベルリオーズのファウストの劫罰のコンサートに行ってきました。
LSOは11月にゲルギエフ指揮でこれを2回と、同じくベルリオーズの「ロミオとジュリエット」を2回やり、出演者の目玉は両方ともボロディナ夫妻だったのですが、問題含みの夫婦のこと、どちらかはキャンセルするんだろうなと思っていたところ、旦那アブドラザコフがキャンセル。どちらかと言うと、生で聴いた回数の少ない彼の方を楽しみにしてたんですが、ま、上手なボロディナも聴きたいから、いいとしましょう。
しかし、この日は字幕が故障して全く出なかったんです。指揮者の真後ろに座ってた私とトーチャンはどうせ半分しか見えないので大して変わりはないのですが、お馴染みのストーリーとは言え、やっぱり字幕がないと細かいところがわからないので(フランス語堪能の人は別にして)、オペラの良さを理解するのが難しいし不便。
でも、字幕がないと歌手の演技に集中するしかないわけで、それはそれで良い点かもしれません。特にこの日の演技面では、凄く熱の入ってる人と、全く無表情の人があまりにも極端だったので、笑えました。
Berlioz The Damnation of Faust
Valery Gergiev conductor
Olga Borodina Marguerite
Michael Spyres Faust
Mirco Palazzi Mephistopheles(Ildar Abdrazakovの代役) Florian Boesch Brander
London Symphony Chorus
London Symphony Orchestra
馴染みのゲーテのファウストで、オペラとしてはグノーの方がうんと有名ですが、私は両方好き。
このベルリオーズのファウストは、難易度でも時間の長さでもテノールの比重がとても大きいのもテノール好きの私にはたまりません。
で、切符を買った時にはどのテノールか未定だったので、誰なんだろうと楽しみにしてたら、アメリカ人のマイケル・スパイヤーズですって。
ヨーロッパでの知名度は低いですが、今年5月にROHの湖上の美人でコリン・リーとのダブルキャストで荒っぽいハイランダー役ロドリゴをシェアしてフローレスやディドナートと共演し、高音はコリン・リーに負けたけど、中低音がしっかりした美声だったので結構気に入ったテノール君です。
なので、期待は割と高かったんですが、聴いてびっくり
パワフルなのは知ってましたが、湖上の美人の時の荒っぽさ(役柄上それでいいんですが)とは打って変わった細やかさと律儀さで、しかも、この役をすっかり自分のものにしてるようで(一年前にゲントとアントワープで)、歌う場面もうんと多いのに全て暗譜で感情もたっぷり込め、コンサート形式とは思えない演技付きのパフォーマンスでした。うんと高音の箇所はやっぱりちょっと弱くて、スコーンと抜けるテノールの醍醐味は味わえませんでしたが、まるでバリトンのパートのような音域も多いこの役は彼にぴったりで、うっとり聴き惚れた私
彼がこのオペラ自体をとても楽しんでいる様子もよくわかりました。私は前から2列目の真ん中でしたが、彼が座って出番を待つ時なんか足の半分が舞台外にはみ出してるくらい近かったので、目がずっと輝いてて、オケに聞き惚れる恍惚の表情もばっちり見えたんです。
でも、折角背も高くて見栄えもするのに、肥満気味なのが残念。それは自分でなんとかなるんだから、痩せる努力しようね
後半にやっと登場したオルガ・ボロディナは、いつもにも増してぶすっとした怖い無表情で通し(クレオパトラのようなどぎついアイメイキャップが凄みあり過ぎ)、演技をするつもりは全くなし。でも、歌はさすがで、深い低音がすごい迫力。
声同様、体もどっしりしてますが、この日のドレスは、やぼったいですが(それはいつものこと)、体型に合ってて、違う日の白いドレスよりはうんとましでしょう(Imtermezzoさんのブログ→こちら )。
スパイヤーズとボロディナは素晴らしかったのですが、メフィストフェレ役のミルコ・パラッツィは、声も容姿もあまりに貧相で(顔はハンサムだけど)、代役だから仕方ないけど、悪魔らしい雰囲気ゼロ。 ロメジュリの代役バリトンはニキーチンだってのに、えらい差だわね
ゲルギエフは、私は彼のヒラヒラ指揮が好きではないんですが、大人数のコーラスも含めスケールの大きなこのオペラがあまり好きではないのかしら、グリップ不足で覇気の感じられない指揮でした。
というわけで、テノールが最重要のこのオペラをスパイヤーズ君のおかげで期待以上に楽しめたわけですが、実はこのオペラを遠征してまで観に行こうか迷っている機会があるんです。
来年2、3月のベルリンのドイチェ・オーパーなんですが、テノールはなんと、あの、愛しいクラウス君(クラウス・フロリアン・ヴォークト)。
彼が本当に歌ってくれるのであれば、どんな下手でも聴きたいけど、果たして出るのかしら? 声自体の魅力でストレートに歌うワーグナーと違って、これは彼に向いてないと思うし、こんな難しいのを、しかもフランス語で、クラウス君、できるんかいな? 海外遠征はキャンセルの危険が伴うのけど、これはあまりにもリスクが大きいかも。
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