<22nd Jan Wed>
ROHから夏のフレンズ予約案内が届きました。話題の新プロダクション2つ、カウフマンのマノン・レスコーとディドナートのマリア・スチュアーダは一体切符を何枚買わせてもらえるのかしらと心配でしたが、全部で4枚ということで、いつも2枚だけのワーグナーよりましだ。トーチャン、良かったね、これなら一緒に連れてってあげるわ(ワーグナーは2枚だけでも連れてってあげたけどね)。因みに、「又か、しつこい!」のラ・ボエームも、ゲオルギューとグリゴーロ共演なので全部で4枚ですって。
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1月14日、バービカンでヘンデル最後のオラトリオJephthaを聴きました。歌手陣は地味ですが、ヘンデル好き、コンサート・オペラ好きの私がこれを聞き逃す筈はなく、抜かりなくかぶりつき(2列目だけど)ど真ん中を確保。
旧約聖書に出てくるお話で、古代イスラエルの武将ジェフサは「この戦いに勝てたら、帰還して最初に出迎えてくれた人を生贄にするから」、と無責任に神に誓ったところ、あちゃーっ!現れたのは「お父さん、お帰りなさ~い」、と喜ぶ自分の娘・・・。
って、これじゃあモーツァルトのイドメネオとそっくりな悲劇的シチュエーションですが、オペラにしたのはヘンデルの方が30年先ですからね。
で、聖書では娘は殺されてしまうのだけど、このオラトリオでは最後に天使に救われるんです。でも、一生を神に捧げるという条件付きなので、恋人もいるのに、それじゃあ幸せになれないかもですね。
でも、ドラマチックな設定の割にはドラマ的には盛り上がらない作品なのでそんなことは気にしないで、歌合戦として楽しみましょう。
晩年のヘンデルが視力の衰えに苦しみながら作曲したこの最後のオラトリオは1751年にヘンデル自らの指揮でロンドンで初演され、ヒット・アリアはないけど、いわゆる軽やかで華やかなヘンデル節とはちょっと違う深みのあるしっとりした名作で、珍しく四重唱もあり、いわば次の時代への橋渡しとなったのではないかしら。
今年からバービカンはプログラムが有料になり、(おそらく)僅か2ポンドなので買ってもいいんですが、一緒に行ったトーチャンがオンラインで全リブレットを見つけたので今回はそれで済まそうと2部プリントアウトして持って行き、英語なのでしっかり読みながら聴きました(少し省略してすっ飛ばした箇所も2、3あり)。
ハリー・クリストファーズ率いるThe SixteenはこのオラトリオのCD録音を予定してそうで、いわば今回はそれに向けての準備なんでしょう。どうもまだキャストは決まってないみたいなんですが、果たしてこの日の歌手たちが適役だったでしょうか?
The Sixteen
まず、カウンターテノール好きの私にとって一番興味深いのは当然ロビン・ブレーズ。
名門音大Royal College of Musicの教授になった今では舞台に立つことは少ないようで、私は2011年5月にイエスティン君とウィグモアホールで共演したコンサート以来(→こちら )。その時は伸び盛りのイエスティン君にすっかりお株を取られて世代交代があからさまになり、私も以前は好きだったけど中年になって衰えたブレーズを棄てて、若いピチピチCTに乗り換えたわけです。
この日のブレーズは、決して悪くはなかったけど、観客の多くはきっと先月のメサイヤでイエスティン君を聴いてるので、「うーん、やっぱり声量面と中低音の美しさと安定度ではイエスティン君に大きく差を付けられて負けてるなあ。イエスティン君がここにいたらいいのに・・」、と思ったに違いないです。
でも、コロラチューラはブレーズの方が上手だし、童顔の割には長身で颯爽と格好よく、オツムは薄くなりかけてるけど(以前はもっと禿げてたような気もするけどな・・・)、まだまだチャーミングで目が離せないブレーズ教授でした
でも、やっぱりCDはイエスティン君に歌って欲しいですよね、クリストファーズさん。
しかし、きっとカウンターテナーって賞味期間が短いんでしょうね。ブレーズだって、まだ42歳よ
盛りを過ぎたカウンターテナーと言えば、来週バービカンにアンドレアス・ショルが来るんです。腐っても鯛(?)のショル兄、まだまだ人気は高く、バービカンにしては珍しく切符の売れ行きも上々(→こちら )。もちろん私も行きます。この頃不調の時が多いけど、もし絶好調であればまだうっとりさせてもらえるという期待で最前列のど真ん中からかぶりつきます ショル兄、頑張れ~っ! まだ(完全には)見棄ててないからね。
今日のベスト・シンガーは誰だった?と知名度とか知らないので偏見なく判断できるトーチャンに質問したところ、Jephtha役のジェームス・ギルクライストだと。
これには私も賛成。ラジオではお馴染みの彼を生で聴くのは初めてだけど、声量も充分で深みのある声がよく伸びる端正な歌唱は素晴らしく、この手のテノールではイギリスでベストでしょう 最後にやっと盛り上がった父親の苦悩を真摯に歌い上げた時は、途中で拍手をしてはいけないのは知ってても喝采されました
生贄にされてしまうことになった悲劇の娘役のソフィー・ビーヴァン、何度か聴いてますが、その度に上手になてて、今イギリスの若手ソプラノではトップでしょう。世界的にはルーシー・クロウの方がもてはやされてるけど、一本調子気味のルーシーより、色んなニュアンスを聴かせてくれるソフィーの方が実力は上だと思います。
小柄だけどグラマーな体型を生かした青いドレスに金髪が映えて素敵だけど、ポイントになる共布のベルト部分がへしゃげてしまって残念でしたね。
The Sixteenの演奏はまあこんなものでしょうという感じでしたが、コーラスは抜群で、特に6人しかいない女性陣はオケの後ろにいたのに個々の声がちゃんと判別できるほど立派な声量の人もいて、その中で一番上手な人が最後に前に進み出て天使役になりました 上手だし、グレーのドレスと黒ジャケットも洒落てます。