<13th Feb Thu>
4泊してったムスメを送りがてら、彼女の手料理でランチ。
オリンピックのフィギュアスケート観戦で忙しいのに、昨日のNYメトに続き、今日は早くもWigmore Hallの来シーズンが発表に。ニューヨークはおそらく行かないけど、地元のウィグモアには身近なホールで、歌モノで何度か行くことになりそうです。特にカウンターテナーのファッジョーリとチェンチッチが楽しみ。CTに関して言えば、イエスティン君は来ないけど、ショルとジャルスキーは来てくれます。詳細は→こちら でご覧下さい。あっ!、マドリッドも出てるけど、すぐには付いていけないわ。
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明日は又ドン・ジョヴァンニに行くのですが、昨日の公演は日本でも映画中継があったそうね。それには間に合いませんでしたが、ドン・ジョヴァンニの登場人物をご紹介します。2006年の記事のコピペですが(→こちら )、あの頃はヒマだったのね・・。
写真は今回の新プロダクションですが(クリックで拡大)、ヴィクトリア時代のイギリスに設定されてて、色んなイメージがプロジェクターで投影されるのが賛否両論が、ごちゃごちゃし過ぎて、よく工夫されてるとは思うけど、私は好きではありません。
色情魔のドンジョヴァンニがやりまくった挙句、行きがかり上殺人まで犯してしまい、改心を拒んで地獄に堕ちるというお話ですが、彼を巡って出てくるのは「ったく、どいつもこいつも・・」、という人ばかりで、だからこそ面白いわけです。
ドン・ジョバンニ (スペインの貴族)
2千人以上をモノにした稀代の色事師で女たらしの悪い奴と思われているのですが、「一人の女しか愛さなかったら、その他大勢女性に対して失礼だろ?」という論理には妙に説得力があるし、金持ちでも貧乏でも美人でもブスでもデブでも痩せでも黒髪でも金髪でも差別しないのは立派です(できれば夏はやせっぽちがよくて冬はふくよかなのがいいけどとちょっとだけ贅沢言いますが)。ここまでくれば博愛主義と言ってもいいくらいだし、彼に口説かれて一時的にせよ女として幸せを感じ自信を持たせてもらった女はたくさんいるわけです。
都合の悪いことは召使に濡れ衣を着せたりして姑息なところもあるのですが、女性に関しては信念に基づいて行動し、周りから不道徳と責められても、「改心しないと地獄に引きずっていくぞ」と行きがかり上殺してしまった(正当防衛と言えなくもない)騎士長の亡霊に脅されても、「俺は意気地なしじゃねえぜ。これが俺の生き様なんだ」と潔く地獄に堕ちて行きます。
でも地獄に行ってもきっと女性を幸せにするのが俺のミッションと切磋琢磨するのでしょう。或いは生まれ変わって信念を貫く肝のすわった男です。事実そういう男は世の中に後を発たないわけで、彼の生まれ変わりかもしれません。頑張れドン・ジョバンニ、フォーエヴァー!
ドン・ジョバンニは、大したアリアがあるわけでなし、一番大事なのはキャラクターなのだと思います。ひどい男だわと言いながら女性は3人ともジョヴァンニに惹かれているわけですから、彼に彼に魅力がないとオペラが盛り上がりません。
レポレロ (ドン・ジョバンニの下男)
フィガロと並んでオペラ界では一番有名な召使。ここではご主人の女性攻略の大切な手助け役で、モノにした女の記録もする几帳面なところもあり。こんなことやるのはおいら嫌なんだとぶつくさ言ってるけど、お金であっさり丸め込まれてしまうし、それにおこぼれも頂戴したり海外遠征にもお供して変化に富んだ興味深い仕事に就いているわけで、ドン・ジョバンニ亡き後もし御清潔で御誠実なご主人様に仕えたら退屈して、きっと前の雇い主と同じような人のところに転職するのではないでしょうか?
レポレロも歌唱力より芝居っ気の方が大事かも。おどけ役なだけでなく下男の悲哀さも出さなきゃならないので、ドンジョバより演技力が要るのではなかろうか。
ドンナ・エルヴィラ (ドン・ジョバンニが棄てた女)
ひどい男に棄てられて悲しい思いをしている可哀相な女がいるから慰めてやろうという優しい心根で近づいたら、なんと怒ってる対象は自分で、とんだヤブヘビ。あんたひどいじゃないの、と詰め寄るだけじゃなくて、他の人に「こいつは悪者だから」と言いふらして彼の邪魔をしまくる恨み女。でもまだドン・ジョバンニを誰よりも愛していて、それはいいけど、なんとか愛の力で自堕落生活から救ってあげるなんて無理なことを本気で思ってる思い込み女。ドン・ジョバンニが一番避けなきゃいけない一途な迷惑女ですが、一番わかりやすくて純粋。
男二人が大したアリアが無くてキャラ主体なのに比べると、エルヴィラ嬢とアンナ嬢はかなりの歌唱力が要求されます。エルヴィラは怒っている場面が多いので、力強い声のソプラノが向いてます。
ドンナ・アンナ (ドン・ジョバンニに父親を殺されて復讐を誓う女)
この女、私は嫌いです。ドン・ジョバンニに惹かれているのに、婚約者も安全弁としてキープして、慰めてあげたいから早く結婚しようと親切な申し出にも、「私がこんなに苦しんでるのによくそんなこと言えるわね! それよりも貴方も一緒に復讐すると誓うのよ」、なんて命令して結婚を引き伸ばす二股女。ドン・ジョバンニが部屋に侵入してきたなんて言ってるけど、当時の上流階級のお嬢様の部屋に簡単に入れるはずないから、人払いをして自分で招き入れたんでは?彼は言い訳しないけど。
エルヴィラよりも高い声が必要でコロラチューラも必要な難しい役だと思います。
ドン・オッタヴィオ (ドンナ・アンナの婚約者)
私が相談投おばさんで、彼から「婚約者が復讐第一、結婚はその後って言ってるんですけど、僕どうしたらいいんでしょう?」と相談を受けたら、「そんな勝手なのとはすぐ別れて、他の女探しなさい。でないと一生尻に敷かれるわよ」と即答えます。
二股女のドンナ・アンナにコケにされる丸っきりのアホですが、美しいアリアが2曲ある得な役で、必要なのは素直な美声だけ。
ツェルリーナ (結婚式を控えた村娘で、ドン・ジョバンニの今日のターゲットの一人)
この娘はしたたかですよ~。結婚式の日に「君程の女性があんな田舎者と結婚して村に収まるのは勿体ないよ。僕のところにおいで」とドン・ジョバンニに口説かれると、「そうやって道を踏み外す女はいるのよね」と冷静に判断しながらも、「でもちょっと遊んじゃおうかな。それにやっぱり私って野良仕事するにはゴージャス過ぎるわよね。マゼットが嫉妬して怒ってるけど、単純な彼をなだめることなんてチョロイからとりあえず甘えておこうっと」。一応、結婚すると約束したんだから守らなくちゃいけないわよね、と殊勝なことも思ってるけど、これで一旦もっと上の世界を夢見てしまったツェルリーナは、この先貞淑な村の奥さんでいられる筈はなくて、椿姫のような道を辿ってお金持ち社会でのし上っていくにちがいありません。
女性3人の中では一番軽くて難易度も低い役なのですが、でも、したたかさは歌には出さずにあくまで気の良い農民の花嫁さんでいかないとね。
マゼット (ツェルリーナの婚約者の村の若者)
なぜツェルリーナのような美人で頭も切れる女性がこんなぱっとしない農民にいちゃんと結婚しようと思ったのわかりません。結婚式の日に花嫁が羽振りの良い男といちゃつくは、レポレロに変装したドン・ジョバンニに暴力を振るわれてと怪我するは、踏んだり蹴ったりの可哀相な青年です。私が村の仲人おばさんだったら、この善良なおにいちゃんにはオツムの程度が同じような素朴なおねえちゃんを紹介します。長い結婚生活には釣り合いってものが大切でしょ?
脇役なので若い駆け出しバリトンしか出ないので、お気軽にROHの現役若手アーチストもしくは卒業生を出すことが多い。
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