<18th Apr Fri>
昨日は午前中だけ働いて、夜がオペラに行ったのですが、午後の暇つぶしは、前から参加してみたかったナショナル・ギャラリーの1時間の無料解説。館内を移動しながら3点の絵について詳しく説明もらったのですが、いつも素通りしてた絵の背景がよくわかって面白かったので、これからも機会を捕らえて行ってみるつもり。私らの税金で外国人観光客に無料で宝物を見せてあげてるわけですから、そろそろ自分でもその恩恵に預かりたいですしね。
今日から4日間のイースター休暇で、私はさらに2日追加してなんと6連休。エンジョイするためには気になってる宿題をまず片付けようと、えらく時間が経ってしまった「影のない女」。
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初めて観て書きたいことがたくさんあるオペラに限って何書こうか考えてるうちに時間が経ってしまって結局書かず終いということが何度があり(日本で話題になった「死の都」とか)、それではオペラ鑑賞記録簿として片手落ちなわけで、後でどの歌手を聴いたのかすらわからなくなって不便なので、これからは少なくともROHで観たオペラはキャストと写真だけでもアップしておこうと固く決心した筈なのに又こんなに遅れてしまいました
3月14日の初日と26日の2回、リヒャルト・シュトラウス生誕150周年記念の新プロダクション、影のない女Die Frau ohne Schattenを観に行きました。Rシュトラウスはオケが大編成でいつもの舞台横の席は売られてなかったので、upperslipの左右から1回づつ見下ろしました。
シュトラウスがホフマンスタールと共同して1919年初演したこのオペラは思い切り観念的でしょうから、、筋書きだけ書いても意味ないでしょうけど、「お伽の世界の皇后は元々は霊界出身で影がないので子供が産めず、子供が産めないと夫(皇帝)が石にされてしまうので、人間から影を買おうと下界に降り、「それじゃあ、私が影を売って上げるわ、子供欲しくないから」、という女性も見つけたけれど、その人間夫婦に対すて良心の呵責を感じた皇后は辞退。結局はその優しい心根によって皇帝は救われ、2組の夫婦は将来きっと子供が産めるでしょう」、というお話です。
もちろん、単純に受け取ってはいけなくて、霊界、お伽の国、人間社会と三つの世界を行き来するだけでも難しいコンセプトなのに、歌わない着ぐるみの動物たちが出てきて意味ありげな動きをしたり、なにを言いたいのかわからない映像も出てきたりするんですもの、一回目は私の頭の中は???だらけ。横からだと片側見えないので余計さっぱりでした
敢えて批評は読まなかったのですが(忙しくてヒマなかったし)、2回目に反対側からも観たら、ちょっとわかったような気もしましたが、要するにこのプロダクションではオペラが書かれた20世紀初頭の精神病院が舞台で、全ては皇后の善と悪の葛藤の想像ということのようです。
プロダクションの写真でご覧のように(クリックで拡大)、セットはすっきりして衣装はまともで、動物が多過ぎるかなとは思いましたが、ベルトコンベヤーで動きもあり、光と影、シルエットも効果的。暗いトーンの雰囲気がシュトラウスの前衛的になる一歩手前のモダンな音楽とぴったりで、プロダクションの評価は高かったです。
Conductor, Semyon Bychkov
Emperor ..... Johan Botha (Tenor)
Empress ..... Emily Magee (Soprano)
Nurse (Amme) ..... Michaela Schuster (Mezzo-soprano)
Barak ..... Johan Reuter (Baritone)
Barak's Wife ..... Elena Pankratova (Soprano)
One-Eyed Brother ..... Adrian Clarke (Baritone)
One-Armed Brother ..... Jeremy White (Bass)
Hunchback Brother ..... Hubert Francis (Tenor)
Spirit Messenger ..... Ashley Holland (Baritone)
Voice of a Falcon ..... Anush Hovhannisyan (Soprano)
Apparition of a Youth ..... David Butt Philip (Baritone)
Guardian of the Threshold ..... Dusica Bijelic (Soprano)
Voice from Above ..... Catherine Carby (Mezzo-soprano)
まるでワーグナーのような壮大で美しい流れの作品は、2度観てる間ずっと「難しいことは何も考えないで、音楽だけに耽溺したいものだ」と思っていましたが、それはラジオ生放送で叶えられ、舞台を思い出しながらも実際に見るものがないと余計なことは考えずに済みました。
ヒロインの皇后はアメリカ人ソプラノのエミリー・マギーで、3人の女声の中では声の魅力も声量も一番乏しかったけど、細かい所はなかなか上手。でも、贅沢を言わせてもらえば、タイトルロールの彼女に少々不満が残ったのが正直なところ。
皇帝は肥満歌手の例には必ず出てくるヨハン・ボータ。いつも通り一本調子だけど美声で存在感はありました。しかし、いつもこいつがROHのローエングリン(美しい白鳥の騎士なのに)なのは悲しい・・
悪巧みする皇后の乳母はミカエラ・シュスター。ROHでもワーグナーでお馴染みの実力派で、こういう悪役はお手の物。演技面も含めたらこの役では今ベストな歌手に違いない。
一番気に入ったには、意外にも、名前も聞いたことがなかったエレーナ・パンクラトーヴァで、声量も立派で艶のある美声に聞き惚れました 出番もうんと多くて、私にとっては彼女が主役。でも、やせれば美人なんだから、お願い、これ以上太らないでね 女ヨハン・ボータにはなりたくないでしょ?
お馴染みのヨハン・ロイターはいつも感心するけど、この足が地についた人間の男性役は今までの中でもベストではないかしら。声のパワーもさることながら、温かみのあるこまやかな歌唱と演技で、達者な歌手が揃った今回のキャストの中でも一番上手だと私は思いました。
歌手にはブーイングしないROHの観客も製作チームには容赦しませんが、今回のトリオは大きな拍手をもらって嬉しそうでした。
私の知る限りでは2001年秋以来ROHではやってないので馴染みが薄くて切符の売れ行きも悪くダンピングまでされたようですが、蓋を開けたら評価が良くて売り切れたよう模様。シュトラウスの記念の年のロンドンでの目玉になったのはめでたいことで、これでリヒャルト・シュトラウスが良さがわかった人も多いでしょう
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