良いお天気だったので、午後はトーチャンと近所を散歩。ライラックの花や新緑の木が青空に映えてきれい。明日も晴れてたら、ちょっと遠出しようかな?
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この1週間に3度もロンドンで歌ってくれたご贔屓テノールのToby Spence三昧の最終回が5月2日にあり、一人でミルトン・コートに行きました。
4日前のウィグモアホール(→)では珍しく違う衣装でしたが、この日はまたいつもの黒いベルベットのジャケット。わたしゃ、これを何度みたことか・・。
床屋さんに行ったついでなのか、ヒゲを剃ってすっきりしたのはいいですね。ウィグモアホールの舞台裏で私が「そのヒゲはない方が絶対いいよ!」と散々言ったからではないでしょうけどね
Guildhall School of Music & Drama
Alumni Recital Series
Toby Spence tenor
Julian Milford piano
Beethoven An Die Ferne Geliebte
Mahler Songs from Des Knaben Wunderhorn
Der Schildwache Nachtlied
Rheinlegendchen
Urlicht
Der Tamboursg'sell
Schumann Dichterliebe (詩人の恋)
Milton Court Concert Hallは、去年9月にオープンしたGuildhall School of Music & Dramaという音楽及び演劇学校のための約600席のホールで、バービカンから100メートル離れてますが、切符購入、バービカンの一貫として行なわれていて、バービカンの小劇場としても使われています。
私はこのミルトン・ホールでコンサートを聴くのはこれが2度目ですが、真新しい建物でオーケストラが収まるくらい舞台も広く、ゆったりとした客席も気持ち良いのですが、壁とかほとんど木製で茶色ばっかりだし、すっきりし過ぎで、ゴージャス感は無し。椅子は安っぽくて座り心地が悪く、私が座った最前列ど真ん中はすでに肘掛が壊れてました
住居もたくさん入ってる高層で大きなモダンなビルで、芝居用の劇場やリハーサル室もあり、色々なイベントが行われるようですが、なんとトビー君のリサイタルの最中に妙な音が漏れ聞えてきたのにはびっくり
かすかな音だったので一体なんだったのかわかりませんでしたが、外の交通騒音ではなく建物内でなにかやってたのではないかしら。だとしたらコンサートホールにはあるまじき初歩的なミスで、クラシック音楽のコンサートでは曲と曲の間の静寂がとても大切なんですから、今後はこんなことはないようにして下さいよね
トビー君は、歌の途中で(まだ騒音がはじまる前に)、「こんな素晴らしい音響のホールが出来て嬉しい」、と褒めちぎってたので、音は良いのかもしれないけど(私は2回とも最前列ど真ん中なので直接の音しか聞えなくて残響についてはわからず)。
ギルドホール音楽学校の卒業生リサイタルシリーズと銘打ったコンサートですから、トビー君もオックスフォード大学を出た後でここで声楽を学んだわけで、終了後は校長先生主催の関係者のドリンクパーティもあったようです。
で、母校に錦を飾ったトビー君が、当初予定されていた演目を変更してこの日歌ったのは、ベートーベン、マーラー、シューマンの渋い歌曲。
最近はドイツ歌曲に力を入れているトビー君ですが、先日のシューベルトの「白鳥の歌」同様、知性溢れるパフォーマンスでした。彼のドイツ語がどれほど正確かは私にはわかりませんが、全て暗譜で、一言一言大切に感情込めて丁寧に歌ってくれ、並々ならぬ努力の成果ということがよくわかりました。
特に最後のシューマンの詩人の恋が圧巻で、ハイネの詩による愛の喜びと失恋の悲しみを、豊かな表現で(歌唱も顔も)熱唱。長年見守ってるトビー君が大人になって(その間に喉頭ガンも克服し)、いつまでも若々しいリリカルなオペラの役と並行して進む道を見つけたことは素晴らしいです
1週間に3回も舞台に立ち、そのうち2回はリサイタルですから、そろそろ疲れが出るのも無理ないでしょうが、この日は徐々に声がかすれてきて、ついに歌の途中で咳き込んだりしました。アンコールの最後はシューベルトで、トビー君が「これはガラスのように透き通った声で歌わなくちゃいけないんだけど、大丈夫かな」、と心配した通り、透明度百パーセントとは言えず、「嗚呼、この曲を絶好調のトビー君のピュアな高音で聴けたらどんなに素晴らしかったことか・・・」と思うと残念でしたが、それでも挑戦してくれたのは嬉しいです。
アンコールの一曲目はベートーベンでしたが、意外な事実に皆がびっくりしたことがありました。
「この曲はここギルドホールの学生だった時にテノールとして初めて歌った曲なんだ。それまで僕はバリトンだったんだけど」って言うんですもん
清らかな高音が売り物でテノールの典型みたいなトビー君が(オックスフォード大学でも歌ってたんですが)バリトンだったなんて信じられません。
それにしては、低音が上手に出ないのが不思議で、トビー君の弱点は低音なんですよね
というわけで、1週間のトビー君特集が終わってしまって淋しいです。今年のプロムスに出るんですが(ベンジャミン・ブリテンの戦争レクイエム)、プロムス嫌いの私はラジオで聴くだけになりそうなので、生トビーは来年のROHの魔笛まで待たなくちゃいけないでしょう。
ところで、4月28日のウィグモアホールのリサイタルはまだ1週間iPlayerで聴けますので、おヒマな方はどうぞ(→こちら )。
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