<6th Oct Mon>
うぅ、さぶーい! って、これがこの季節では普通でしょうけど、今週末から行く日本で何を着るかを考えてるんですが、不思議なもので、そっちも厚着になりそう。
仕事も一段落したので、明日は会社休んで日程作りに励むつもりですが、その前にどうしても外せないオペラ記事を済ませておきましょう。
-------------------------------------------
9月22日と29日の2回、ロイヤルオペラハウスでセヴィリアの理髪師を観ました。
どんなお話なの?というのは以前の記事をご覧下さいですが(→こちら )、要するに、このセヴィリアの理髪師というのはオペラ界では有名なキャラクターであるフィガロです。ストーリーとしてはモーツァルトの「フィガロの結婚」の前哨戦で(オペラとしてはモーツァルトの方が先)、伯爵がセヴィリアで見初めた娘を嫁にもらうまでのドタバタ喜劇。ロッシーニですから、軽やかなコロラチューラができないと困るし、コメディ演技も必須
喜劇オペラの傑作ですが、有名歌手が出てないので話題にもならずひっそり始まったという感じで、今回はパスしたオペラファンも多かったのでは? 私も大好きなオペラなのに、この時期仕事が忙しいこともあり、いつもより少な目の回数しか買ってませんでしたが、蓋を開けてみれば、これからという若い歌手が大活躍して、とても楽しめました。こんなことなら、もっと切符を買っておけばよかった・・
左右から一回づつ観たカーテンコール写真、以下はクリックで拡大します。
アルマヴィーヴァ伯爵はミケーレ・アンジェリーニ。
特に甘い美声というわけでもなく、ちゃんと声は出ててもなんとなく弱弱しい印象を与えてしまうのですが、私はとても気に入りました 翌日ウィグモア・ホールで聴いてぶっ飛んだ超高音が凄まじいハビエル・カマレラよりも私はアンジェリーニ君の声の方が好みで、ず~っと聞き惚れっぱなし
歌も身のこなしもなよっとしてて、もちろんフローレス王子のような華やかなカリスマ性はないけど、長身で角度によってはハンサムだし、歌も芝居も自信を持ってもっと大袈裟にすればうんと舞台栄えする筈。
省略されることも多い最後の大アリアを歌わせてもらえたのも嬉しい驚き
だって、これ、今までROHで歌わせてもらったのはフローレス王子だけよ
アンジェリーニ君は来年はROHのドン・ジョバンニに出てくれます。気の弱いドン・オッタビオはまさにぴったりで、今から楽しみ
アンジェリーニ君は9月21日にフランコ・ファジョーリのリサイタルを聴きに来てたので、ツーショットしてもらっちゃいました。 目瞑っちゃってるけど・・
歌唱同様、腰の低い優しい雰囲気の好青年です。
セリーナ・マルフィーは、ロジーナにしては深い声で、特に先回のクルザクの軽やかとは対極の重厚さですが、こういうどっしり身の詰まったロジーナも良いですね。
チェチリア・バルトリ似の容貌で、あまりにも慎み深いのでコメディエンヌとしては不満が残りますが、歌だけで充分魅力的でした。
でも、折角これだけの声なんだし、それをもっと活かせる役が他にある筈で、モーツァルトのコジ・ファン・トゥッテのドラベッラ歌ったらぴったりでしょうね。 そして、容姿も演技も悲劇の方が向いてそうなので、アイーダの恋敵アムネリス王女とかも聴いてみたいです。
セリーナ嬢ともウィグモア・ホールで会いました。ローゼンブラット・シリーズのカマレラのリサイタルでしたが、彼女自身も4年前にローゼンブラット・シリーズに出演したことがあるそうで、いやはや、あらためてローゼンブラット弁護士の先見の明には感心しました。
フィガロ、フィガロ、フィガロ~、という超有名なアリアで登場する床屋のフィガロ、今回はルーカス・ミーチェム。
名前だけではピンと来なかったけど、「あっ、この大男、見覚えあるなあ。・・・もしかして、フィガロの結婚で伯爵だった人かしら?」、と思い出しました。
だけど、いやいや、あの時のサイモン・キーンリーサイドの代役だった伯爵はでかいのは図体だけで、声はうんとしょぼかったから、まるで別人。 でも、後で確認したらやっぱり同じ人だったのでびっくり。
へーえ! 2012年のヘナヘナ伯爵(→こちら )とはまるで違って凄い声量だし、ナチュラルだけど飄々とした演技も面白い!
これまでのROHのロッシーニ・フィガロの中ではベストと私が思うピエトロ・スパニョーリの名人芸には及ばないけど、歌もコメディ演技もスパニューリに次ぐ出来で、バリトンには惹かれない私ですらうっとりでした
ドン・ジョバンニやってるルーカス君、それも素敵でしょうが、なんとタンホイザーまでやってるんだ! でも、そうよね、よく伸びる滑らかな大声なんだからワーグナーもいけるよね。
で、多岐に渡って将来有望なルーカス君の次のROH出演は、来年のラ・ボエームで、ネトレプコ、カレヤのAチーム。
ロジーナと持参金目当てで結婚しようとするヒヒ爺バルトロ医師はお馴染みのベテラン、アレッサンドロ・コルべっリで、最強チームだった2009年版(→こちら
with フローレス、車椅子のディドナート、スパニョーリ、フルラネット)から続投。若い時に比べると随分控え目な演技になってしまって残念ですが、今回の控え目演技の若い歌手たちの中では充分笑いを取ったし、なによりも素晴らしい声を維持してるのは素晴らしい。
音楽教師ドン・バジリオはこないだカウフマンとオポライスのマノン・レスコーの凄みのあるパトロン役だったモーリッツィオ・ムラーノ(→こちら )。よく響く低音は相変わらずだけど、こんなとぼけた役もできるなんて役者やのぉ。
指揮者はベテランのマーク・エルダーで、若い主役トリオを上手にリードして安心して聴けました。
というわけで、意外なヒットとなったセヴィリアの理髪師でした