<11th Nov Tue>
2月から工事してたコベントガーデン駅の新エレベーターがやっと設置されたので、昨夜オペラの帰りに早速乗ってみたところ、まだ試運転が充分でなかったのか、無駄に2往復もヨーヨーみたいに上がったり下がったりしちゃいました。皆で大笑いしてなごやかだったけど、これじゃまずいってことで又駅を閉鎖しないで下さいよね。
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時差ボケから回復した10月30日と11月2日の2回、左右一度づつ、ドミンゴ先生が出る「二人のフォスカリ」I due Foscariを観に行きました。
ヴェルディなのに知名度の低いオペラで上演されたのはバリトンに転向して張り切るドミンゴ先生がレパートリーに加えたからでしょう。
実存した15世紀のベニス総督とその息子が二人のフォルカリで、元祖落書き魔でもあった英国の風雲児、詩人バイロン卿の作をベースにしてるそうですが、無実の罪で流刑される息子の無念さと、その息子を公私混同できなくて救えない父親の葛藤がテーマ
しかし、内容が暗いばかりなのは構いませんが、全く話に展開がないのが大欠点で、ヒット曲はなくても音楽はヴェルディらしさに満ちてるのにこれだけ人気がないのはドラマ性ゼロのせいです。史実に基づいてるのに勝手に殺人とかで受け狙いすることはできないでしょうが、折角二人ともオペラの中で死ぬのに、そこはやけにあっさりなのが残念。
Director Thaddeus Strassberger
セットも衣装もつまらないくらいまともですが、最近はロンドンでも時代を読替えのヘンテコなプロダクションが多い中、かえって新鮮ですらあります。
ドミンゴ先生にはなぜか惹かれなくて、テノールとして全盛だった時にも好きだと思ったことがないので、私の目当ては一重に息子役のフランチェスコ・メリ。
生メリはリサイタル(→こちら )とリゴレット(ヌッチと共演→こちら )でしか聴いたことがなかったけど、更に成長して実に立派なテノールになってました。
個性的な声ではないので、「あら、この重い声はカウフマン」、とか「フローレスの鼻に掛かった声は明るくて軽くていいわね」、とかってことにはならなくて大スターにはなれないでしょうが、堂々とした正統的歌唱が素晴らしかったです。いつもの舞台横の安い席が出なかったので不本意ながらアッパースリップから見下ろしたのですが、こんなにメリ君がたくさん歌うパートだと知ってたら、高くても近くの席を奮発したのに・・・。年前のリサイタルの時のおっさん風情と比べると痩せてチャーミングになったし、ますます惚れました
73歳のプラシード・ドミンゴは、もちろんこの年でこれだけ歌えるのは驚愕で、新しい役に挑戦するのは尊敬しますが、年齢と過去の名声を差し引いたら果たしてどうなんでしょうか? バリトンにしては軽すぎてこの役の重厚さは出せない上に声も乾き気味じゃないですかねえ?
ドミンゴ先生は5月と6月にラ・トラヴィアータのパパ役で2回だけ出て下さって、再来週切符発売なんですが、どうしようかな?
これまたワンパターンに怒り嘆くだけのメリ君の妻役のソプラノはマリア・アグレスタは、スカラ座にちょくちょく出てるようですが、高音は苦しいけど豊かで艶のある中音は素晴らしいです。
なので、役を選ぶかメゾに転向すればよいにのと思うのですが、トゥーランドットのリューやボエームのミミってのはなんか路線間違ってるような・・。
美人な上に素敵な衣装をとっかえひっかえ、ビジュアル的には二重丸のアグレスタ嬢でした。
私が行ったのは最後の2回だったんですが、指揮者はそれまでのパッパーノ大将ではなく、なんといつもコーラス・マスタ-してるレナート・バルサドンナ。 指揮もできるなんて知りませんでしたが、そつなくまとめて問題なしでした。
というわけで、テノール好きの私にとっては満足の巻でした