私が日本人作家の中で一番好きな宮尾登美子さんの訃報を知り、宮尾さんがロンドンにいらした時のことを思い出しました。
軽く20年は前のことですが(30年近く経ってるかも)、宮尾さんがロンドンで講演会をなさった時に拝聴し、満州で苦労されたことをお話なさった時は皆が涙ぐんだことでした。
イギリス関連のネタとして、宮尾さんが初めて外国の女性を主人公にしようと思い立った際、クレオパトラとメアリー・スチュワートのどちらにしようかとても迷ったということで、結局クレオパトラになってしまったのですが、悲劇のスコットランド女王の人生にも強く心惹かれたと仰って下さいました。女性の人生を描く達人である宮尾さんにメアリー・スチュワートも書いて頂きたかったです。
その日、宮尾先生は紺地に宝尽くしの総柄の小紋をお召しで、先生の年齢を考えると少し派手なのですが、私は大好きでした。 それが、後にエッセイ「きものがたり」で、(なぜかその本が見つからないので記憶だけで書いてますが)「海外に住む日本人のために華やかな一枚を選んだのに、誰も褒めてくれなくてがっかりした」というような内容でお書きになったのです。
それを読んで、あ~、残念、それなら私がお言葉を掛ければよかった・・」、と後悔しました。私は司会者が喋っている時に椅子に控えてらした宮尾さんのすぐ後ろに座っていたので、その気になればチャンスはあっただろうし、私は当時ロンドンで着物は着てなかったけど着物雑誌を日本から取り寄せて読んでいたので「素敵な宝尽くしですね」、くらいは言えたのに・・。
勿論、立ち居振る舞いも着物に相応しい日本女性の見本のような美しい宮尾さんを、誰もが遠く離れた故国に思いを馳せて見惚れたに違いないのですが。
ロンドンにお住まいで宮尾さんの小説やエッセイを読んでみたい方、私がお貸ししますよ。
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