<16th Jan Fri>
一日出勤しただけでのんびり過ごせたこの一週間、もううぐ60歳になるトーチャンもすでに無料オイスターカードがもらえたので、寒い中、天気が悪くても二人で張り切ってあちこちに出掛けました。それについては又あらためて。
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1月12日はバービカンでイアン・ボストリッジがシューベルトの冬の旅Winterreiseを歌ってくれました。
失恋した若者が死を願望してさすらいの旅に出るという暗い内容ですが、容貌も歌もイアン博士版が私にとっては昔からの原型。
ピアノ伴奏はオペラ「テンペスト」の作曲家であるトーマス・アデスという豪華コンビだったせいか珍しく売り切れで、ぎっしり詰まったバービカンは盛り上がりました
しかし、彼のシューベルト歌曲のリサイタル、いつもはウィグモア・ホールでやるのに、なぜ今回はバービカンなのかしらと不思議でしたが、世界ツアーの一環としてなんとスカラ座でもやったそうです。
大ホールでの歌曲リサイタルということで、曲も同じだった去年4月のロイヤルオペラハウスでのヨナス・カウフマン(→こちら )とどうしても比べてしまいますが、極端に違ったのは身振りと表情。
カウフマンは直立不動で声のトーンと目だけで表現しましたが、イアン博士は少しもじっとしてなくて動き回り、顔の表情も大袈裟で、広いせいかもあるのか、ウィグモア・ホールの時よりもうんと手足も激しく動かしてました。
スカラ座やバービカンみたいな広い空間に相応しい振舞いにしようとしたと言うよりは、声を張り上げなくてはならないので自然と身振り手振りが激しくなったということでしょうけど、結果としてこんな激情ほとばしる冬の旅ははじめてで、お馴染みの彼の冬の旅とも違う感じで「ほほ~っ」。痛ましい気もしたせいかいつもより声が乾いてるかなという気もしましたが。
でも、最初出てきた時に「あれ、ますます痩せたかな? それにこの青白さ、どっか悪いんじゃなきゃいいけど」、と思ったけど、進むに従って紅潮する熱~いイアン博士、歌っていると悩み多き青年になってやっぱり素敵
ROHのカウフマン同様、終了後は長い沈黙があったのも良かったです。おかげで放心状態のイアン博士とアデスをかぶりつきで余韻を感じながら感動できました。
トーマス・アデスのピアノ演奏は前にも聴いたことがあり、上手なのは知ってましたが、始終温かみのある音色で、自分で楽譜をめくりながら、さすがの名演奏でした。
そして、この日は嬉しいオマケがあり、リサイタル終了後にイアン博士のトークがあったんです。司会はBBCラジオでお馴染みののトム・サーヴィス。
燕尾服から普通のスーツに着替えて表情もさっきまでとまるで違ってにこやかに、インタビュー形式で観客の質疑応答も含め熱く語ってくれた博士、実は最近冬の旅の解釈本を出版したので、このトークも本の宣伝なんでしょうね、きっと。
「魔法」学者であるイアン博士の書く文章はきっと知的過ぎてこ難しくて気軽には読めないでしょうが、冬の旅を百回以上も歌ってる博士の拘りが満載で興味深いに違いないです。
でも、やっぱり歌曲リサイタルはウィグモア・ホールくらいのこじんまりしたホールで聴くほうがいいかな。
ヨナス・カウフマンも同じ思いなのか、今月はじめにウィグモアでシューベルトを歌いましたよ。年間百ポンドのサポートフレンズではこの超人気テノール申し込んでも切符は買えませんでしたけどね(値段もメチャ高かったので買えても行ったかどうか・・)。 その代わり、20日から始まるカウフマンのアンドレア・シェニエは楽しみにしてて、初日に行きます!
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