無い<12th Apr Sun>
風はあったけど青空の日曜日、近所の散歩で新発見あり! 写真たくさん撮ったので次回アップしますが、その前に、10日以上も経ってしまったオペラについて手短に感想だけ書いておきます。
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4月1日、ROHの新プロダクション「マハゴニー市の興亡」Rise and Fall of the City of Mahagonnyの新プロダクションを観ました。
この日は例のホルボーン周辺で火事による停電があった日ですが(→こちら )、幸いパフォーマンスはキャンセルにはならず、世界中に配信するライブシネマに影響がなかったのは不幸中の幸い。
1930年初演のブレヒトとワイルのこの作品は、北米の架空の地にならず者3人が歓楽街を作り金儲けする中、田舎者のニーチャンが「お金を使い果たしまった」という罪で死刑になるという風刺劇
ジャズが混ざった小難しいミュージカルって感じで、映像も多くカラフルで賑やかな舞台を正面の立見席で全く見切れずに観られてとても面白かったです。このオペラの他のプロダクションを写真ですら見たことがないので基準もなく比較できませんが、ROHでホルテンのアシスタントをしてるフルジェームス、こないだのラウンドハウスのオルフェオも彼の演出だし、将来が楽しみな演出家でしょう。
でも、英語翻訳版だったのは残念。ENOじゃあるまいし、たとえ台詞は英語で妥協しても歌はブレヒトのリブレットのままドイツ語でやって欲しかったです。
(以下の写真はクリックで拡大)
Music Kurt Weill
映像用カメラが近くにありました。
喋る時はスピーカー使用、歌は生でというコンセプトだったようですが、つながりがスムーズとは言えず不自然。いっそ、ずっとマイク付きにして音量を押さえたほうがよかったのではないかしら?
キャストで一番知名度が高いのがメゾソプラノのアン・ソフィー・ヴォン・オッターですが、そう言えば彼女の活躍ぶりはしばらく聞いてないわと思ったら、今回のパフォーマンスで聴く限り、かなり衰退してしまったようです
声量が乏しくて艶もなく、あの素敵だったヴォン・オッターが・・、と悲しい気持ちになりました。 長身でかっこ良いし、貫禄と存在感はあるのですが、いくら上手な英語とは言っても、台詞も多いのにこの役をどうしてスェーデン人のヴォン・オッターがやるのかも解せないし、ミスキャストではないでしょうか? えげつないオバハン的な芝居のできる歌手が演じたら理想的なこの役、ヴォン・オッターは上品過ぎるし。
もう一人、盛りを過ぎた人がいて、それはサーの称号まで持ってるウィラード・ホワイト。 低音歌手には惹かれない私は彼がご贔屓だったことはないけど、それにしてもこの日は声量に乏しくて精彩なくて、これでは・・・ このまま続けたら、過去の偉大な功績に傷がつくかも。
彼も貫禄とカリスマはあるし、シネマでご覧になった中にはこの二人に感銘を受けた方もいらっしゃるかもしれませんが、生で聴くと声量が一番気になるわけで、「無名でも他に適役がいたのでは?」、というのが私の意見です。
他の歌手たちは英語圏の人たちでしょうし歌もほぼ皆さん上手でしたが、特に主役カップルとも言えるクルト・シュトレイトとクリスティン・ライスが素敵だったのが歌唱面での救い。
高音はちと苦しそうでしたが、私はシュトレイトの彼のスコーンと突き抜ける個性的な声が好きだし、長身でハンサムな彼は華があって舞台で映えるテノールです
イギリスを代表するメゾソプラノの一人であるライス嬢は、うんとクリーミーな美声が心地良くなめらかに響き渡ってうっとり ヴォン・オッターがしょぼく聴こえてしまったのはライスと比較してしまったからです。得体の知れない若い売春婦にしては年齢的に苦しい上に、いくら芝居が上手でもどうしても知性が滲み出てしまうのがミスキャストと言えなくもないですが、それを補っても余りある素晴らしいパフォーマンスでした
ということで、なかなかスケールの大きなプロダクションに仕上がってたし、たまにはこんな風変わりなのを観るのも楽しかったです。もう一度観たいとは特に思いませんでしたが。そして、オペラファンにとってチャンレンジな作品は値段も低く設定されてるので、極上のミュージカルとでも言うべきこのオペラが僅か7ポンドで観られたのもありがたいことです
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