<25th Oct Sun>
夏時間が終わり、一気に日没が早まりました。来年2月に備え、すでに心はすっかり冬の北海道に飛んでいて、いくつか宿も確保。計画作りは楽しいのでついのめり込んでしまいそうですが、一応このブログのテーマであるオペラのことを忘れてはいけないので、かなり時間が経ってしまいましたが、ROHのフィガロの結婚の感想です。
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「又フィガロか・・、又シュロットか・・」、とうんざりしてスルーしたオペラ仲間も多いですが(切符もダンピングされてました)、アニタ・ハルティヒのスザンヌ、ケイト・リンゼーのケルビーノ、ステファン・ドゥゴーの伯爵は見逃せないし、幸い舞台横の大好きな席を放出してくれたので、9月15日、10月5日、9日と3回行っちゃいました。
今までで一番豪華メンバーで良かった2008年(フリットリ、マッテイ、ダルカンジェロ、Sコッホ→こちら )と比べたりしたらそりゃ見劣りしますが、それでもなかなかレベルが高くて、楽しめました。
(以下の写真はクリックで拡大します)
オペラについては、2006年のプレミエ時の記事をご参照下さいですが(→こちら )、
要するに、
「セヴィリアの理髪師」の続きのストーリーで、床屋を廃業して伯爵に仕えるフィガロが同僚の女中さんと結婚することになったのを、伯爵は自分の結婚で世話になったにも拘わらず、フィガロの彼女をパワハラでモノにしようとして、周りの皆にとっちめられるという階級社会の風刺にもなってる複雑なお話です」。
読み返したら、まとも過ぎてつまらないプロダクションだなんて書いてありますが、たしかに「おお~っ!」という興奮はないですが、マクヴィッカー演出のすっきりシンプルで、特に照明と衣装が美しい、何度リバイバルしても鑑賞に耐えるクラシックなプロダクション。音楽が引き立ちます。
Le nozze di Figaro
Music Wolfgang Amadeus Mozart
フィガロ
フィガロのアーウィン・シュロットは10年前のプレミエ以来何度観たやら・・。最初は若くてピチピチで惚れましたが、その後頬がこけてニヒルになり過ぎたこともあったりして、毎回違うのが救いと言えば救い。
で、今回はどうかしらと思ったら、ついに中年太りが始まっちゃいましたが、たフィガロでした。それでもハンサムなシュロットはチャーミングなので、初めて彼を聴く人は、「まあ、ハンサムだし深い声が素敵」、と思うでしょう。
特に彼のコメディアンぶりは際立ってて、15日の初日は他の人たちがやけにおとなしくてお葬式みたいだったのをシュロットが一人でおちゃらけてました
ちゃんと歌えば凄い迫力だろうに相変わらず鼻歌風の日が多かったのは残念ですが(ライブシネマの日は結構まじに歌ってたけど)、余裕しゃくしゃく、と言うよりあちこちでフィガロやり過ぎて本人がうんざりしてるんでしょう、毎回違う動作で退屈しのぎしてたんでしょうね。皆が静かな分、俺が盛り上げてやるぜ、ということならアッパレですけど。
3回行った私にはありがたいシュロットの自分勝手演技でしたが、間の取り方なんか堂に入ってて、さすがでした。と褒めながらも、やっぱり新しい人で聴きたかったですけど。
初日がお葬式みたいだったのは、主にアニータ・ハルティヒのせいでしょう。
ラ・ボエーヌのミミは素晴らしくて、今までROHで観た数多くのミミの中でベストなんですが、そういう暗い役はどんぴしゃでも、対照的に明るさと溌剌さが求められるスザンナ、歌は期待通りの出来だったけど、アリアが一つしかなくて演技面が全てと言ってもいいスザンナはハルティヒには全く不向きで、一生懸命やってるだけに痛々しくて・・。
スザンナは辞めて伯爵夫人にスイッチしましょう。
などどボロクソ言っても歌は上手なハルティヒ、初日は緊張してても何度もやってるうちに硬さが取れるかも、と2度目、3度目を楽しみにしてたんですが、残念ながらキャンセルされちゃいました
代役は、ハルティヒが出ない日に元々歌うことになってたソフィ・ビーヴァン。イギリスでは一番売れてるソプラノの一人だから下手じゃないけど、嫌という程聴いてるので彼女が出る日は外したのに、2回も観ることになっちゃいました
でも、これが意外なヒットというか、天真爛漫で優しくておきゃんでおじさんのスケベ心をくすぐるセクシーな女中さんスザンナをすごく自然に演じて、演技的にはこれ以上のスザンナはあるまいと思ったくらい。と言うより、演じてることを感じさせないのは凄い! ライブシネマはソフィちゃんに変更になってラッキーでしたよ。 ソフィちゃん、コメディの素質を活かした明るい役をどんどんやりましょう (なのに、明日はバービカンSt. Lukeで「ねじの回転」か・・)
伯爵と伯爵夫人
ステファン・ドゥゴーの伯爵は、歌はとても良かったんだけど、天然で余裕のシュロットのフィガロと一緒だと、きっちり頑張ってはいるけど不自然な感じになってしまったのはお気の毒。でも、回を重ねるごとに、彼なりのムッツリ助平ぶりが個性として出るようになって、なかなか良い感じになり、本人も楽しみ始めたようで、よかった、よかった。
名前を聞いたこともないエリー・デーンで、一見容貌も歌も地味なのに、エレガントな振る舞いと悲しげな風情とたしかだけど頑張り過ぎない歌唱で、しっとり素敵なレディでした
ハルティと共にすごく楽しみにしてたケルビーノのケイト・リンゼー、今までのケルビーノ中では一番凛々しくてチャーミングな美少年ぶりで、彼女が出てる間はずっと目が釘付け
生き生きとした表情とキビキビした演技も、こもった感じの魅力的な声の歌唱も、期待以上に素晴らしくて、3回も聴けてハッピー。歴代のケルビーノは上手な人が多いんですが、魅力的という点ではケイトが一番かな。
他の人たちも揃って上手だったけど、イドメネオの脇役で今年のプロムスではモンテベルディのオルフェオの主役もやったクリスチャン・アダムのドン・バジリオが上手でおかしくて、いまだにこの役では群を抜いてピカ一のプレミエ時のフィリップ・ラングリッジの次に位置付けしましょう。
二人のバルバリーナのうち金髪の方はロビン・アレグラ・パートンで、ハムステッドオペラで上手なセメレセだったソプラノだ(→こちら )。
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