昨夜、トーチャンとコンサート・オペラに行ってきました。 運営面ではバービカンの一部でLSOがリハーサルに使ったりするSt. Luke'sという元教会で、バービカンから歩いて数分の少々不便な場所にありますが、カフェ等の施設は充実してます。 (クリックで写真は拡大)
ベンジャミン・ブリテンの1954年の室内オペラ「ねじの回転」は、イギリスの田舎のお屋敷が舞台の幽霊と人間の関わり合いがテーマで、原作はヘンリー・ジェームス。詳しくは、ENOで観た時の記事でご覧下さい(→こちら )。
コンサート形式のオペラって、ただ突っ立って歌うだけのものから、最小限のセットや衣装で演技までしっかりしてくれるものあるのですが、今回は演出家もいるtheatrical concert performanceですって。
どれどれと会場に入ったら、箱の形に布テープを巻きつけたこんなものがデーンと床に置いてあり、オーケストラがこの中で演奏し、テープ部分に時折光が当てられ、歌手達は中にいたり周りを回ったりして、風変わりな趣向でした。
演出家はソフィー・ハンター。・・・聞いたことのある名前だけど、思い出せない・・・
と思っていたら、開演前に謎が解けました。 カフェでカンバーバッチ夫人を見かけたので。
そうそう、ソフィー・ハンターってベネディクト・カンバーバッチの奥さんで、そう言えば演出家だったわ。長身でほっそりして、仏女優ソフィー・マルソー似の美人のソフィさん、インターバルに又カフェで見かけましたが、彼女が誰だか知らなくても「うわーッ、雰囲気ある素敵な人!」、と思うでしょう
プログラムによると、「子供たちを幽霊の誘いから守ろうとする主人公の女家庭教師はオーケストラに囲まれて箱の中にいて、周りで起こる恐ろしいことに直接関わらないので、観客が「全て、あんたの妄想なんじゃないのか?」、と思うようなコンセプトらしいです。
そういう観点であれば、上手く表現してると思うけど、ひねり過ぎててわかりにくいので、これならいっそ突っ立ってるだけで、全て観る側が想像するほうがいいかも、と思いました。 トーチャンはニコール・キッドマン主演のThe Othersを思い浮かべてたそうですが、たしかに雰囲気ぴったり。私はENOの素晴らしいプロダクションとリアル映画「ねじの回転」の設定を思い浮かべながら聴きましたが、このベンジャミン・ブリテンのドラマチックで怖い音楽にビジュアル面は特に大切です。
Britten The Turn of the Screw (theatrical concert performance)
Sophie Hunter & Andrew Staples directors
Will Reynolds design/lighting design
Aurora Orchestra
Nicholas Collon conductor
Sophie Bevan Governess
Ann Murray DBE Mrs Grose
Andrew Staples Prologue/Quint
Jane Irwin Miss Jessel
Louise Moseley Flora
Joshua Kenney Miles
オーロラ・オーケストラのブローシャーを受け取ってすぐに切符を買ったら3列目でしたが、お目当てはご贔屓の若い英国人テールのアンドリュー・ステイプルズ。
カンバーバッチ夫人と共同演出もしたステイプル君は、全音域スムーズな美声とめりはりのある歌唱で期待以上の出来でしたが、かつて私が白豚君と呼んでた頃よりはほっそりしたもののまだ太目の部類に入るわけで、幽霊というには無理のある容貌です。この役はROHで観た骸骨男イアン・ボストリッジに敵う人はいないでしょう。
ソフィー・ビーヴァンもあまりにも健康的な上、つい最近ROHのフィガロの結婚でスザンナをうんと明るく好演したばかりなので、幽霊に怯える役はあまりに違い過ぎて・・。
イメージに合わないながらも、複雑な心理描写を上手に表現しながら立派な歌唱だったし、レパートリーの広さは大したものですが、声に個性がないのが気の毒。
フィガロの結婚にも出てた家政婦役のアン・マレーはさすがの存在感だったし、元家庭教師で今は幽霊のジェッセル女史役のジェーン・アーウィンの声は誰よりも迫力がありました。
大人たちは音符を見ながら歌ってましたが、子供役の二人は暗譜で演技もしなくてはならず、一番大変だったでしょう。大きな劇場ではソプラノが歌うこともあるマイルズ役ですが、今回は本当の少年で、こういう小さい所ではちゃんと声も通り、とても上手でした。
ブリテンの中では私の好きな作品ですが、緊張感に満ちたオーケストラの引き締まった演奏も素晴らしく、レベルの高いパフォーマンスで満足しました
嗚呼、でも、悲しいかな、今日はミルトン・コートでトビー・スペンスのコンサートもあったのよね ねじの回転は売り切れだったけど、トビー君はガラガラだった筈。ごめんね、行けなくて。直前まで知らなかったのよ。でも知ってたらどっちに行くかうんと迷っただろうから、知らなくてよかった。
ハイヒールだと旦那とほとんど同じ高さになってしまうソフィー奥様、ぺったんこの靴だとこんな感じ。
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