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Channel: 着物でオペラ in ロンドン
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ペレアスとメリザンド by Debussy 幻想的なオペラなのに・・

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<12th Jan Tue>

ディヴィッド・ボゥイの訃報は日本でも大きなニュースだったようですが、長年故国から離れていたとは言え当然イギリスではもっとそうで、私は家にいたのですが、一日中彼のことばかりでした。私の年代にとって、ボゥイは青春の思い出と結びついているわけではないので、ジョン・レノンが時とはショック度が違いますが、現役でまだ60代の偉大なアーチストの病死は惜しまれます。

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1月10日、今年初めてのオペラはバービカンでペレアスとメリザンドでした。

光具合がヘンテコな写真が多いのは、舞台からの強いスポットライトが邪魔だったからですプンプン (以下の写真はクリックで拡大します)


メモ架空の国のゴロー王子は、森で迷ったときに出会った得体の知れない水の精のようなメリザンドと結婚するが、結婚指輪を失くしてしまった彼女をなじり、弟のペレアス王子と一緒に洞窟に探しに行かせる。二人は惹かれ合い、嫉妬したゴロー兄ちゃんは弟を殺し、メリザンドはお産で死亡


というのがおおまかな筋なのですが、叙情的なドビュッシーの音楽ですから、テーマは痴話喧嘩ではもちろんないだろうし、人間のドラマですらないかもしれなくて、みずがめ座が主題なのかも。


という叙情的で観念的なオペラの筈なのですが、このプロダクションは有名演出家の趣味で違う方向に行ってしまいましたガーン


カメラ以下の写真はクリックで拡大

     



ピーター・セラーズ
の演出は、セミステージとは言ってもしっかり演技も付いてフルオペラさながらのプロダクション。


ラブシーンも生々しいしメリザンドが大きなお腹を抱えて苦しそうだったりしてあまりにもリアルなので、新聞の三面記事、或いはベタな新派のお芝居みたいで、違和感ありました。

違う角度からのドラマを狙ったのでしょうが、コジェナが目を見開いて大袈裟にワナワナする表情はまるでサイレント映画みたいって、ちょっとやり過ぎでは?


セットが真っ黒で無機質なのはいいとしても、衣装も全員真っ黒だったのも私のイメージから程遠くて、しかも、「自分の普段着から黒いの選んで着るように」、って指示だったんでしょう、不揃いな素材とデザイン。黒で揃えるのって難しいんですけね。せめてメリザンドだけでも、妖精のような衣装(できれば白で)にしてもらいたかったです。


因みに今までこのオペラを生で観たのは以下の3つで、それぞれ違う環境と演出ですが、マドリッドで観たのが一番好きかな。


12007年 ROH(キルヒー、キーンリーサイド、フィンリー) 宇宙服というかテレタビーみたいな滑稽演出 (→こちら )。初めて観るのがこれでは、理解の妨げでした。


22011年 バービカン(デセイ、キーンリーサイド、ナウリ)(→こちら )。自分で想像できるコンサート形式は理想的。


32011年 マドリッドのテアトル・レアル (ティリング、ブーロン、ナウリ) 象徴的でシンプルなセットと能のような静かな動きと無表情がドビュッシーにぴったりで、演出面ではこれが一番好き(→こちら )。



Debussy
Pelléas et Mélisande (semi-staged performance)


Peter Sellars director
Ben Zamora lighting installation

Hans-Georg Lenhart assistant director
Betsy Ayer stage manager
Helen Collyer répétiteur


Magdalena Kožená Melisande
Christian Gerhaher Pelléas
Gerald Finley Golaud
Bernarda Fink Genevieve
Franz-Josef Selig Arkel
Joshua Bloom The Doctor, The Shepherd
Elias Madlër Yniold


Sir Simon Rattle conductor
London Symphony Chorus
Simon Halsey chorus director
London Symphony Orchestra

音譜パフォーマンス


このオペラにはそぐわない大袈裟で濃い演技を目の前で見るのは時にtoo muchでしたが、最前列ど真ん中から熱演を見られたのは勿論ラッキー。前日に続き二夜連続だったので心配でしたが、歌手は一流揃いで素晴らしいパフォーマンスでしたクラッカー



マグナレーナ・コジェナはクールな美貌が妖精みたいでぴったりなのに、いつも顔をワナワナさせられる演技で残念でしたが、そりゃ素晴らしかったです。

裸足で床にはいつくばって身をよじりながらの大熱演でメラメラ、私の席からはパンツまで見えてしまったくらい。でも、動きやすいジャージー素材でなければならなかったので仕方ないのですが、下半身のたるみがもろに出てしまうこのデザインはまずかったかな。ファッションセンスはイマイチであっても、彼女にはいつも綺麗でパーフェクトな美人でいて欲しいのにおとめ座


ペレアス役のクリスチャン・ゲルハーハー、文句なく素晴らしい歌唱力で、バリトンにしては高くて軽やかな声は好きなんですが、少し丸くなって白髪も増えた彼が、分別捨てて恋にもだえる姿をこんな近くで見るのはちょっと辛かったかも・・。知的でクールで思慮深いイメージでいて欲しいので・・。



これまた白髪が増えた無精ひげのジェラルド・フィンリーはROHに嫌という程色んな役で見てて、なにをやっても上手だということはわかっているので、今回も期待通りの名人ぶり。

妻の不倫を疑って苦しむゴロー兄ちゃんはこの中では現実的で、彼の演技も(もちろん歌も)どんぴしゃなんですが、ペレアスとメリザンドがイメージ通りのはかない存在であったら、フィンリーの人間味をもっとアピールできたのではないかしらん。


脇役歌手たちも文句なく上手でしたが、ちょっと残念だったのが(これも私のイメージに合わないってだけですが)、オーケストラが重過ぎたこと。こんなシンフォニー風じゃなくて、もっとふわっと軽く流れるように演奏して欲しかったです。って、あまりに近過ぎてバランス悪く聞えてしまう私には批判する資格はないでしょうけど。


指揮者サー・サイモン・ラトルは、始まる前に最近亡くなったピエール・ブーレーズとLSOの深い関わりを称し、この公演を彼に捧げたのですが、そうね、フランス人のブーレーズだったらもっとフランス的なものを醸し出してくれたのかも。


以上、あれこれ文句を言いましたが、熱の入った素晴らしいパフォーマンスだったし、ラトル夫妻の共演を目の前で見られたのも嬉しかったです。彼がイギリスに戻ってきたらこういう機会が増えるでしょうから、楽しみです。

    





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