昨日、バービカン・シアターでの蜷川幸雄一周忌追悼公演「マクベス」のロンドン公演初日に行ってきました(→こちら)。
→こちらで経緯が書いてあるのでご覧下さいですが、要約すると、このプロダクションは、
1980年の日本初演ではぱっとしなかったが、1985年にエジンバラ国際フェスティバルでこの日本の安土桃山時代に読替えたプロダクションが絶賛される。 2015年にリバイバルされ世界中で公演が決まっていたが昨年5月に蜷川氏が80歳で死去。演出家不在となってしまったが、キャンセルはせずに追悼公演として上演することが決定。
芝居には基本行かない私、ニナガワ作品も着物イベントとして便乗するために和服姿が登場する舞台にしか行かないので、ロンドンでニナガワ公演はいくつかあったけど、行ったのは2009年の十二夜→こちらと2010年のムサシ→こちらだけ。
そんな演劇無知の私は他と比べたりできないし、ましてや日本の役者さんのこと等全くわからず、ど素人の戯言ですが一応感想を。
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The Stage ★★★★★
The Guardian ★★★★
The Telegraph ★★★★
昨日は折りしも日本生まれで英国人になったカズオ・イシグロ氏がノーベル賞取ったニュースもあり、このマクベスと合わせてイギリスと日本ということを意識して感慨に耽ったことでした 。
この笑っちゃうくらい日本文化にまみれたシェイクスピアを日本人の私がロンドンで日本語で両脇をイギリス人(おそらく)に挟まれながら観るのは不思議な気持ちでした。最前列で横にあった字幕は読み辛い位置だった読みませんでしたが、簡単に見える位置だったらきっと読んで、英語と日本語ということにも思いを馳せた筈。
逆の立場で日本人じゃない人は不思議な気持ちだったでしょうし、それがエジンバラで評価されたわけですが、今回のロンドン初公演も期待通りの高い評価を得たのは日本人として嬉しいことです。
桜吹雪がことさら日本を感じさせて美しく、花びらが私の足元にハラハラと散ってまじかに観る臨場感が更に盛り上がり、同時に、今の会社で働いてる限り桜の季節に日本に行けない我が身の哀れさも・・・。
近くだと衣装の柄がよく見えたのも着物好きとしては嬉しかったです。化繊であってもほとんどの衣装はシックな色合いな中マクベス夫人の打ち掛けが安っぽいギンギラギンだったのは、私の好みではないけれど、リアルな映画とは違う「お芝居さ」を出すのには効果的なのかな。
仏壇のコンセプトは余程日本に詳しい人じゃないと理解できないでしょうが、仏壇って精神的物質的に日本の文化がぎゅっと詰まってるわけで、美しいですよね。イギリスに来るまで毎日キンキラキンの仏壇にお参りしてたわ、そう言えば。その時は強制されて形だけやってただけですが、今は心の中にご仏壇があって無意識に手を合わせてるかも。まさに仏壇は日本人の心が宿るところ。
等々、プロダクションとしては綺麗で斬新で日本の心が迫ってきて期待通りでしたが、失望したのは演技面で、特にマクベス役の市村正親さん。彼のことは全く知らなくて初めてなのですが、台詞の言い回しが滑らかじゃなくてごつごつで一本調子で声は硬くて深みが無くて、私好みではありません。 表情も豊かとは言えず、立ち居振る舞いも華がないように見えましたが、蜷川さんに抜擢されたくらいだし、日本では名優さんなんですか? 蜷川ハムレットにも出たそうですが、それは観たくないな・・。
田中裕子さんも、昨日ご一緒した方は皆さん凄く上手だと絶賛でしたが、私はいまいちピンと来ませんでした。もちろん充分上手ですが、地味だし風邪ひき声みたいだし、これくらいの演技できる女優さんはたくさんいるでしょう? もっとも、彼女に関しては私とは同郷で大好きだったザ・ピーナッツから夫を奪ったけしからん女としてそもそも良い印象を持ってないのも一因かもですけどね。
ま、俳優の好き嫌いはオペラ歌手同様、要するに好みの問題でしょうから。
カーテンコールの最後に蜷川さんの写真が出てきたのは感動的でした。オペラでは演出家が亡くなってもプロダクションが続くのは当たり前なので、この桜吹雪&仏壇マクベスも蜷川さんの作った形を守りながら続いていって欲しいものです。
でも、正直言って、私にはやっぱりオペラの方が迫るものがあるかなぁ。 今シーズンはROHでネトコちゃん(アンナ・ネトレプコ)がマクベス夫人を歌ってくれるのが今から楽しみ(→こちら)。
明日は大好きなヘンデルのジューリオ・チェーザレだ