<22nd July Sun>
日本は大変な猛暑だそうで、暑中お見舞い申しあげます。ロンドンも暑いですが、比べ物にはならないでしょうね。でも、冷房の効いてない地下鉄なんて軽く40度は越してるでしょうから、乗り物は日本よりうんと苦しいですよ。 なのに今日は着物でお出掛けしたのでした。
-------------------------------------------
7月18日はROHでドニゼッティのオペラL’Ange de Nisidaニシダの天使のワールドプレミエがありました(フランス語のコンサート形式)。ニシダというのは、ナポリ近くの小さな島だそうです。
18世紀半ばの作品なのに、なぜ今頃?と不思議でしょうが、ドニゼッティがコミッションを受けたオペラハウスが倒産して宙に浮いてしまったからです。それを隠れた作品を発掘するのが得意なOpera Rara(音楽監督は今回の指揮者サー・マーク・エルダー)が取り上げたわけです。
後にLa Favoritaラ・ファヴォリータとしてリメイクされたのですが、どれだけ違うのかは、ラ・ファヴォリータを一回しか聴いたことがない私にはわかりませんが、いくら全編麗しいドニゼッティ節でも、筋書もほぼ同じオペラがあるわけで、これをゴミ箱から拾い上げる意味が果たしてあるのでしょうか? 要するに「恋人が王様のお妾さんだったことがわかってショック」というだけの薄過ぎる上に共感ゼロな内容をコンサート形式で突っ立ったまま歌うのを聴くのはかなり退屈で、良い歌手を揃えたのであれば聞惚れることもできたのでしょうが、一流とは言えない歌手陣だったので、長いオペラだし、かなり退屈でした。
Music Gaetano Donizetti
Libretto Alphonse Royer and Gustave Vaëz
- Conductor Mark Elder
- Sylvia Joyce El-Khoury
- Leone de Casaldi David Junghoon Kim
- King Fernand of Naples Vito Priante
- Don Gaspar Laurent Naouri
- Monk Evgeny Stavinsky
女性が一人しか出てこないので責任重大なソプラノはレバノン系カナダ人のジョイス・エルコーリー。Opera Raraには気に入られてるようで、2017年7月にカドガン・ホールのRaraコンサートでマイケル・スパイヤーズと共演してました(→こちら)。 ROHでは2017年の椿姫のヴィオレッタ(→こちら)、2017年9月の新プロダクションのラ・ボエームのムゼッタ(→こちら)でも出ましたが、若い頃のアンジェラ・ゲオルギューのような美貌は素敵だけど、特に声に魅力がない上に、今回はちょっと不調だったようで声がかすれ気味で、この長丁場をもたせるには到底魅力不足。
まさか、隣にいるのが二枚目役のテノール? はい、そうです。韓国人のDavid Junghoon Kim君、最近までJette Parkerアーチストだったので嫌と言うほどROHにちょい役で出てたんですが、無名の新人なのに大抜擢ですね。 でも、顔はこんなでも甘い声で上手なので私は好きで、彼をやっとたっぷり聴ける機会だと実は一番楽しみにしてたんです。最初は緊張して硬かったけど、徐々にほぐれてなかなかの歌唱となり、大きな拍手をもらった時には嬉しかったです。歌唱力だけしか頼るものがないキム君だけど、頑張ってね。
王の側近役はローラン・ナウリ。 悲劇にはそぐわないコミカルな場面が多くて違和感ありましたが、さすがの余裕の歌唱と演技で、一流なのは彼だけだったという印象を残しました。
王様役のヴィート・プリアンテは2016年9月のセヴィリアの理髪師でフィガロだった人で(→こちら)、喜劇よりこういう悲劇向きですが、音程があやしい部分があったのと、演技ほぼゼロだったので影が薄かったです。僧侶役のエフゲニー・スタヴィンスキーは端正な歌唱のバスで好印象。
というわけで、がっかりなパフォーマンスでしたが、意欲に対して4ツ星を与えたレビューもありました。ガランチャ、ポレンザーニ、クヴィエチェンと揃えたミュンヘンのラ・ファヴォリータと張り合うくらいの歌手を揃えてくれたら良かったんですけどね。そりゃ無理ですもんね・・。