<29th July Sun>
ずーっと晴れてたロンドンなのに、肝心な金曜日の夕方から雷雨になり、月食のレッド・ムーンは見えず、天体ファンのトーチャンはがっかりで気の毒でした。それ以来、すっかり涼しくなってイギリスらしい夏になり、おまけに昨日は強風、今日は雨。
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7月20日、着物姿が5人揃ったグラインドボーン(→こちら)で観たのは、切符が争奪戦となったヘンデルのジュリオ・チェーザレ(→こちら)。
古代ローマ史を彩るシーザーとクレオパトラのラブストーリーが題材で、最初の出会いからとクレオパトラが弟との権力抗争に勝つまでのストーリーですが、明るくて軽やかで美しいメロディ満載のヘンデルで、特にこのマクヴィッカーの人気プロダクションをちゃんと観るのは初めてなので、とても楽しみでした。
19世紀のイギリスのエジプト征服に読み替えられた美しい舞台で、エキゾチックな雰囲気も出てたし、細かい演出が凄く面白くて、長いけどあっという間でした。このオペラ、2012年10月の英語版ENO(→こちら)と2017年10月のハックニー・エンパイヤ(→こちら)の2回観てて、パフォーマンスはどちらも素晴らしかったですが、総合点では今回のグラインドボーンが断とつトップで、5ツ星と4ツ星評価(→こちらとかこちら)も当然。騒ぎで切符をゲットした甲斐がありました。
Conductor
Jonathan Cohen (10, 13, 15, 20, 24, 28 July)
Director David McVicar
Set Designer Robert Jones
Costume Designer Brigitte Reiffenstuel
Lighting Designer Paule Constable
Choreographer Andrew George
Fight Director Mark Ruddick
Orchestra of the Age of Enlightenment
Giulio Cesare Sarah Connolly
Curio Harry Thatcher
Cornelia Patricia Bardon
Sesto Anna Stéphany
Cleopatra Joélle Harvey
Nireno Kangmin Justin Kim
Tolomeo Christophe Dumaux
Achilla John Moore
ルックスも振る舞いもまるで本当の男性のようなズボン役が二人。タイトルロールのサラ・コノリーは声量にやや難ありでしたが(私たちは最前列だったので問題なし)、さすがの貫禄(プレミエ時は→こちら)。 コノリーは歌ったらおっさんにしては女性っぽいけど、シーザーのライバルだったポンペイウスの息子セスト少年役のアンナ・ステファニーはどうしても女性とは思えず、見事は歌唱とも相まって不思議な魅力でした。ステファニーはコンサートとかでよく聴いてて上手いけど地味な存在だったのが、去年のROHデビュー「バラの騎士」のオクタヴィアン(→こちら)で一気に花開き、これからも彼女のズボン役は注目。セストの母親役はパトリシア・バードンで、上手いけど聞き飽きてるので(ENOでも彼女だった)、他の人で聴きたかったかも。でも、まるっきりコメディになってた中でこの親子だけはずっと悲劇的で母子のデュエットもしみじみと美しかった。
クレオパトラは小柄な米国人ソプラノのジョエル・ハーヴィー。今年3月のバービカンのリナルドのコンサート(→こちら)も良かったし、清らかな声と立派なコメディアン振りでチャーミング。踊りの部分とかはどうしてもダニエル・デニースのイメージ(→こちらや→こちら)が強いので損してますが。
悪役のクレオパトラの弟はカウンターテナーのクリストフ・デュモーの硬い声は特に好きではないですが、さすが十八番、彼が出ると盛り上がります。もう一人のカウンターテナーは生で初めて聴くので一番楽しみにしてたキムチリア(チェチリア・バルトリの真似が得意なので)こと韓国人カングミン・ジャスティン・キム。出番は少ないけど華やかなCT歌唱とオネエ風の演技で美味しいとこ取り。歌も悪くなかったですが、キワモノじゃない役でもじっくり聴いてみたいものです。
指揮者は私たちが行った日はウィリアム・クリスティではなく、イギリスではお馴染みのジョナサン・コーエンで、若いイケメンの指揮振りが見える席だったのも楽しかった。
というわけで、エンタメ性の強い爆笑ものになってて面白かったので、次に別の普通のシリアスな演出で見たらきっと物足りなく感じるに違いないです。
グラインドボーン、ちょっとしたワンピースとかもっと気楽に何度も行きたいですが、切符は高いし買うのも大変なので、やっぱり敷居が高いです。