<12th Jan Tue>
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今年初のコンサートは1月10日のマキシム・ヴェンゲロフ。ピアノ伴奏はソロとしても活躍してる シモン・トルプチェスキという贅沢な顔合わせ。
アンコールは3曲:
The “Blues” second movement of Ravel’s G major sonata
Fritz Kreisler’s Liebesleid(愛の悲しみ)and Liebesfreud(愛の喜び)
かぶりつき買ってたのに行けなくなったり、他と重なって2回逃したようで、私がヴェンゲロフを聴くのは9年ぶり。最後に聴いたコンサートは失望だったので(→こちら)、今回はどうなんだろうと少々不安でしたが、これが素晴らしい演奏で、当然のスタンディング・オベーション。それを最前列ど真ん中の彼から一番近い席で聴けて、至福の時でした。
優しいモーツァルトで始まった後はハイライトとなった超絶技巧のプロコフィエフ。これをこんな上手に弾ける人は滅多にいないでしょう。後半のフランクは誰でも弾く言わば手垢のついた有名曲で、何度も聴いたことありますが、これですらヴェンゲロフが弾くと「知らなかった、こんな良い曲だったんだ」と聞き惚れました。勿論ラヴェルも安定の素晴らしさで、当然の★★★★★評価(→こちら)。
かつての世界一に復帰してくれて本当に嬉しかったです(2006年のコンサート→こちら)。白髪が増えてお腹も出っ張ったけど、まだ47歳、また来て下さい。この日も「ロンドンに戻ってこられて嬉しい。感染リスクを犯してまで来て下さってありがとう。ワクチン接種済みですからご安心を」、と私の目の前で言ってくれました。
トーチャンが座ってるのが見えるでしょうか(白髪)。普通はピアノが真ん中にあるのですが、この日は違って、ヴェンゲロフはピアニストの斜め後ろで弾いたので、私の席からはトルプチェスキの手もばっちり見えたし、タイミングを合わせるために彼が振り向いてヴェンゲロフを見る表情も見えて、最高の席でした。勿論彼のピアノも素晴らしかったです。
一曲目が終った時に10歳くらいの身なりの良い少年が舞台に現れて、ヴェンゲロフに花束を渡しました。実はその子は開演前にあまり人のいないロビーの隅っこでヴァイオリンを弾いていたのです。きっと関係者でしょうが、難しい曲に挑戦してました。写真撮っとけばよかった。
さて、ヴァイオリンは楽器の良し悪しも大切で、この日も音色の美しさが際立ってました。かつて名演奏者クロイチェルも所有してた1727年作のストラディヴァリウスですが、これはある日本女性からのプレゼントでした。
東京芸大卒のハープ奏者のチェスキーナ・洋子さん(1932-2015)はイタリア留学中に公爵夫人となり、裁判で勝ち取った莫大な遺産をクラシック音楽のために寄付した方ですが、バービカンのヴェンゲロフのコンサートの客席ですぐ後ろの席に座ってらして、日本語で話してた私と友人に「日本の方なのね。ヴェンゲロフはお好き?」と声を掛けて下さったのです。その時は彼女が誰なのかわかりませんでしたが、後でヴェンゲロフ自身が舞台の上から「恩人のチェスキーナ洋子さんがあそこにいらしてます」と彼女を紹介したので、ああ、この方があの有名なとわかりました。こんな日本女性がいらしたのは嬉しいですね。