<23rd Oct Tue>
年に一度の健康診断へ。毎年同じ医者なんですが、いつも「えーっ、このお医者さんに会ったのはついこないだのような気がするのに、もう一年も経ったなんて信じられない・・・」と、なぜかこれで時の経つのを一番感じるんです。この年になると大事なのはもちろん健康だけど、時間も貴重なわけで、身の振り方に関して色々考えてしまうビミョーなお年頃の私。
明日はいよいよリングサイクル最終回。休憩も入れて6時間半も掛かるので体力勝負ですが、クッション持参のおかげで硬いベンチシートでもお尻は痛くない。
リングレポートは後手に回ってますが、2つめのワルキューレがやっとできました。
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10月18日、夕方5時開始のワルキューレを観るために会社を午後休んでROHに行きました。
4日間のワーグナーの超大作リングサイクルの2日目で、とんとん拍子に話が進む序夜とは違い、いよいよ本題に入って、ぐっとゆったりペースになり、休憩2回も入れると5時間45分で、帰宅したら12時近くでぐったり。素晴らしいパフォーマンスであればうんと短く感じるし疲れないのに、イマイチな歌手が長く歌う場面があると長いこと、疲れること。この日がそんな夜でした。
どんなお話かは、以前の記事(→こちら
)でご覧下さいですが、要するに、その持ち主が世界を支配できるという黄金の指輪を奪回するためにヴォータン神様は純血のヒーローを産み出す長期作戦に出て、そのためにまず双子の兄妹を妾に孕ませ、離れ離れになったその双子兄妹が成長して再会して恋に落ち、近親相姦でヒーローを身ごもるのですが、ワルキューレと呼ばれる戦争乙女たち一人であるブリュンヒルデと父親ヴォータンとの絡みが見せ場です。
Die Walküre
Director | Keith Warner |
Set designs | Stefanos Lazaridis |
Costume designs | Marie-Jeanne Lecca |
Lighting design | Wolfgang Göbbel |
Original Movement Director | Claire Glaskin |
Video | Mic Pool |
Video | Dick Straker |
Associate Set Designer | Matthew Deely |
Conductor |
Antonio Pappano |
Siegmund | Simon O'Neill |
Sieglinde | Eva-Maria Westbroek |
Hunding | John Tomlinson |
Wotan | Bryn Terfel |
Brünnhilde | Susan Bullock |
Fricka | Sarah Connolly |
Gerhilde | Alwyn Mellor |
Ortlinde | Katherine Broderick |
Waltraute | Karen Cargill |
Schwertleite | Anna Burford |
Helmwige | Elisabeth Meister |
Siegrune | Sarah Castle |
Grimgerde | Clare Shearer |
Rossweisse | Madeleine Shaw |
パフォーマンス
歌手の知名度には疎いがために偏見なく判断できるトーチャンに「今日のベストシンガーは誰だと思ったか?」、と問うたところ、「男性はフンディング(トムリンソン)、女性はフリッカ(サラ・コノリー)」と。
なるほど。そりゃ二人ともイギリスを代表する優れた歌い手であるからして、上手なのは当然だ。ジョン・トムリンソンは聞き飽きたので魅力は感じないけど、はじめて彼を聴いたとしたら「すげー迫力の声!」とびっくりするだろうし、サラ・コノリーはすらっとして気品があり、ブリンとは年恰好もぴったりな夫婦役で、これまでフリッカ役を独占していた初老のロザリンデ・プラウライトの声量と迫力では叶わないけど(誰も勝てないでしょう)立派な英国人フリッカ後継者。
だけど、この日はちょっと声が乾いていたような。ラインの黄金の時は艶があって凄く良かったのに、ちょっと残念。それでも立派な歌唱ですが、絶好調の彼女ならもっと良い筈。
ブリン・ターフェルは、5年前は怖気ついてキャンセルしてしまい、結局トムリンソンがヴォータンを全てやったんですが、あれからメトとかでも歌って自信がついたのでしょう、余裕すら感じさせて故郷に錦を飾りました。声量と威厳では永久にトムリンソンを超えることはできないでしょうが、変化に富んで微妙なニュアンスが出せる点はブリンの勝ち。と、褒めつつも、ヴォータンは器用じゃなくてもいいから、ぐわーっと大声であたりを睥睨させて欲しいです。
でも、ヴォータン、フリッカ、フンディングにイギリス人歌手を配して誇りを感じるのは喜ばしいんですが、無理してブリュンヒルデまでイギリス人にしなくても良かったのに・・・
スーザン・ブロックは、5年前のワルキューレを急な代役で救ってくれたので、今回招かれたのはその御礼ってことかもしれませんが、今回足を引っ張ったのは彼女でしょう。ちょっと前のエレクトラの時のような濁った不快な声ではなかったのはやれやれでしたが、声量も声の張りも劣ってて、特に低音の弱さは致命的。後半で盛り上がる筈の父娘の長いシーンは彼女のせいでうんとつまらなくなってしまい、いつもの5倍もする高い切符を奮発したんだから居眠りはするものかと必死だったんですが、この時ばかりは「これだったら、寝ててもいいかな」、と
4つの中ではこのワルキューレが一番人気ある筈なのに、ブリュンヒルデがこれでは台無しで、他2、3人の美声で声量もあるワルキューレたちも負けてるくらいでした。演技も硬かったし、容姿もねえ・・・。実際より若く見せてくれるカツラは首がないのも隠してくれてグーだけど、太くて短い腕は滑稽で、クマのぬいぐるみみたいだった。
ぱっとしないブリュンヒルデのせいで最後はだれましたが、出だしは素晴らしくて、特にテノール好きの私にとって第一幕のジークムントとジークリンデの双子兄妹の再会と愛を語らうシーンがベストでした。観客の拍手もここが一番大きかったと思います。
エヴァ・マリア・ウエストブルックはROHに出過ぎるくらいよく出てくれるけどまだ飽きてないし、彼女の厚味のある艶っぽい声が好き。舞台映えする大柄美人で、恋する女を全身で熱く演じて惹きつけられました。
サイモン・オニールは聴くたびに印象が違うので、果たして好きなのかどうか決め兼ねてるけど、今日は、こないだのマイスタージンガーよりは私好みの声に聴こえたし、愛らしいウエストブルックと憎たらしいトムリンソンの緊張感溢れる演技につられてか、感情のこもったジークムントになりました。
足元にいるホルンとチューバ連中が時折うるさいけど、パッパーノ大将の勇姿も近くで見られるこの席はやっぱりなかなか良いです。
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