<26th Oct Fri>
来週火曜日はROHでfund raisingのガラ公演があり、オペラ部門ではアラーニャ&ゲオルギュー夫妻、ブリン・ターフェル、エヴァ・マリア・ウエストブルックが出演するのですが、今日ROHからメールが来て、なんと女王陛下ご夫妻がいらっしゃるとのこと 私の席から見える席に座って下さると嬉しいけど、そうじゃない可能性が高い気がする
重いワーグナーばかり続いてはしんどいですから、リングの2つ目と3つ目に行った軽くて明るいオペラのことでも書いて、楽しい気分で週末を迎えましょう。なんだか色々あって気苦労が多かった週だったので、すごく寒くなる予報でもゆったりしたいです。
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1週間前のことになりますが、ROHのワーグナーの真っ最中の10月19日にEnglish National Operaに行きました。
コロシアム劇場のロケーションは抜群で、左の写真のナショナル・ギャラリーと教会の間をほんのちょっと行ったところにあります。
この日はトーチャンとこの教会St Martin-in-the-Fieldsの地下に納骨堂を改装したセルフサービスのカフェで夕食した後少し時間があったので、金曜日は遅くまで開いてるナショナルギャラリーでちょっと絵画鑑賞という贅沢もできました。
ENOの切符は当日にレスター・スクエアのtksで購入することにしてて、いつもは昼休みにひとっ走り買いに行くのですが、今回はご一緒して下さる友人が行って下さり、99ポンドの最高値の切符を25ポンドでお利口さんにゲット。トーチャンと3人でうんと舞台に近い席で楽しみました。
ENOなのでもちろん英語翻訳のジュリアス・シーザーですが(本来はイタリア語で、シーザーではなくチェーザレ)、1724年ロンドン初演のバロックオペラです。
私にとっては目的は歌手であり、セットや衣装はどうでもいいのですが、なにやらモダンで支離滅裂なプロダクションだということは聞こえてきて、最近のENOの新プロダクションは変なのばかりだけど、まあそれも面白いだろうと。
客席に着いたら、ぶらさがるワニと、ぶっ倒れてるキリンが舞台の上に置いてあり、どう使われるんだろうと幕が開く前からワクワク
Michael Keegan-Dolan (director, choreography)
Andrew Lieberman (set designs)
Doey Luthi (costumes)
Adam Silverman (lighting)
Christian Curnyn (conductor).
Giulio Cesare: Lawrence Zazzo
Curio: George Humphreys
Cornelia: Patricia Bardon
Sesto: Daniela Mack
Cleopatra: Anna Christy
Tolomeo: Tim Mead
Achilla: Andrew Craig Brown
Nireno: James Laing
Fabulous Dance Theatre: Saju Hari, Karolina Kraczkowska, Johannes Langholf, Louise Mochia, Erik Nevin, Emmanuel Obeya, Keir Patrick, Rachel Poirier, Raquel Gulatero Soriano, Louise Tanoto
写真はクリックで拡大しますので、「な、なんなのこれ・・・、何が言いたいの? 古代エジプトが舞台の筈よね?」、と不思議に思われる方は、しっかり見て下さいね
古代ローマ史を彩るシーザーとクレオパトラのラブストーリーが題材で、最初の出会いからとクレオパトラが弟との権力抗争に勝つまでのストーリーですが、エプジト要素はほとんど出てこず(大きなワニはナイル河を象徴してるんだろうけど、じゃあキリンは?)、衣装は現代もの。
殺されるキャラの衣装についた真っ赤な血のりが鮮やかな色ポイントなんですが、これは実は他の人がバケツから赤インクをたらしたもので、「あ、面白いアイデアだわ。こういうの好き。設定とちぐはぐなところがオペラらしいくてグー」、と感心したのですが、客席から楽しい笑いももれたユーモアのある場面でした
写真から雰囲気はわかって頂けると思いますが、実はこのプロダクションの一番の特徴は写真では表せないことで、ずっと数名のダンサーが踊り続けてたんです。内容に関係ない振り付けのモダンダンスで、「気が散るから嫌だ」という批評も当然あったのですが、ひょうきんな動きも多くて面白かったです。トーチャンは「歌が繰り返しが多くて退屈なのをダンスが救ってくれたね」と言ってました。
前夜ワルキューレを観たばかりでワーグナーに浸ってたトーチャンはどうもこれで気がそがれてちょっと不満だったふしがあるのですが、私はヘンデルが大好きだし、ワーグナーとは対極的だからこそ更に楽しめました。明るくて軽やかで美しいメロディ満載、というワーグナーには丸っきり欠けてる要素たっぷりで、内容の浅い歌合戦ですが、それはそれで素晴らしいでしょ。「椿姫さんって、のべつ幕なしになんでも観て、節操ないね」と思われそうですが、色々楽しめるのが長い間に培われたオペラの良さの一つですよね。
肝心のパフォーマンスですが、皆さん文句なしに素晴らしかったです。私にとっては日米ハーフでENOではお馴染みのコロラチューラ・ソプラノのアナ・クリスティが一番の目玉でしたが、大好きな優しい鈴のような軽やかな声がたっぷり聴けてとても幸せ。バーンスタインのキャンディード(→こちら
)も上手で可愛くて最高だったけど、クレオパトラも可憐でチャーミングでした。ルチアやジルダでも聴いてみたい!
タイトルロールは、米カウンターテナーのローレンス・ザッゾ。最初声量が乏しくて、もう一人のCTに負けてましたが、段々声が出て、さすがの手堅いテクニックをご披露。
もう一人というのは、売り出し中のイギリス人CTのティム・ミード。何度かちょい役で聴いてますが、その度に大きな役になり、今回はクレオパトラの弟役に抜擢されて着実に躍進中。イエスティン君と似たタイプのCTにしてはふくよかな声質で、声量も充分なティムは長身でルックスも悪くないし(今回はおそ松君に出てくるイヤミ氏みたいな髪型で男前下がりましたが)、今まで以上にウォッチしなくては。若くて上手なCTがたくさん出現してる中でも注目に値する31歳のティム君はイギリスではナンバーワンCTのイエスティン君のライバルになれるくらい伸びて欲しいです。
アルトのパトリシア・バードンはハスキーな低音で怖そうなイメージでしたが、こんなに可愛いとは知らなかった素敵な金髪美人。オペラでは珍しいことですが、他の歌手も皆さん美しかったです。
トーチャンに「今日のベストシンガーは誰?」と聞いたら、セスト役(息子ではなく娘という想定)のDaniela Mackだそうです。ふーん、そうかな~? たしかに上手だけど、華がなくて。私はアナ・クリスティに聞きほれましたけど。
若い指揮者のChristian Curnynはバロック専門なのかしら、去年のENOのカストールとポニュックス(パンツ脱ぎまくりオペラ→こちら )でもとても良かったです。
というわけで、英語翻訳という以外は、リングサイクルの合間の清涼剤としても楽しめました。私はやっぱりワーグナーよりもバロックが好きだわ。
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