<16th December Fri>
小雪が舞ったロンドンですが、休暇を取ってトーチャンと一緒にワーグナーのニュールンベルグのマイスタージンガーDie Meistersinger von Nürnbergのリハーサルを観に行きました。休憩込みで5時間40分も掛かるので、一日仕事ですわ。
どんなオペラなの?
ワーグナーでは唯一の明るく楽しい作品で、テーマはマイスタージンガー(英語だとmaster singer)。要するに中世のシンガーソングライターのコンテストなんですが、今回の一等賞はなんと超美人のお嫁さん。通り掛った騎士が彼女に惚れて、コンテストのことはなんにも知らないし歌うのもはじめてだけど、特訓と素質で、ズルしようとしたライヴァルを蹴落として、見事優勝するというお話。だけどこいつは「彼女と結婚するだけで充分。マスターシンガーになんかなりたくないよ」と失礼なことを言い出すもんだから、皆で寄ってたかってマスター歌手がいかに価値あるものかを説得して、最後は「ははーっ、わかりやした。謹んでお受けします」とめでたしめでたし。
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Composer Richard Wagner
Director Graham Vick
Designer Richard Hudson
Original lighting design Wolfgang Göbbel
Movement Ron Howell
Conductor Antonio Pappano
Hans Sachs Wolfgang Koch
Walter von Stolzing Simon O'Neill
Eva Emma Bell
Sixtus Beckmesser Peter Coleman-Wright
Veit Pogner John Tomlinson
David Toby Spence
Magdalene Heather Shipp
Kunz Vogelgesang Colin Judson
Konrad Nachtigall Nicholas Folwell
Fritz Kothner Donald Maxwell
Hermann Ortel Jihoon Kim
Balthazar Zorn Martyn Hill
Augustin Moser Pablo Bemsch
Eisslinger Andrew Rees
Hans Foltz Jeremy White
Hans Schwarz Richard Wiegold
Nightwatchman Robert Lloyd
淋しいかな、大した歌手は出てないんですが、それでも全体にはなかなかのレベルに達して、見応え充分。11時開始なので、朝ゆっくり起きてすぐ行ったわけで、決して疲れていた筈ないのに、私にとってワーグナーは睡眠薬なのか、また少しうとうとしちゃいましたけどね 9年ぶりなのでしっかり字幕を読んでいたというのに・・・。
私が特に楽しみにしてたのは勿論ごひいきテノールのトビー・スペンス
彼がワーグナーを歌うのを聴くのははじめてで、靴屋の丁稚役だけど長いワーグナーでは脇役でも出番が多くてしっかり歌わないといけないんですが、あんなリリカルで細い声でワグナーが歌えるのかしらと心配だったけど、先月観たENOのオネーギンのレンスキーとは違う太い声が出せて声量も充分。
可愛くてフレッシュなコミカル演技も含め、トビー君はとても素晴らしかったので、また惚れ直してしまいました
しかし、か弱いトビー君のこと、リハーサルからこんなに全力で頑張ると疲れちゃうんじゃないかと心配。
彼が一番良かったと思ったのは私だけではなかったようで、トーチャンに「誰が一番上手だったと思うか?」とたずねたら、「靴屋の丁稚」と言ってくれました。彼が私のfavourite tenorであることなんて覚えてなかったと思うけど(あまりにたくさんご贔屓テノールがいるしね)。
しかし、
もしかしたらリハーサルだから全力を出さなかったのかもしれないけど、肝心な主役カップルに期待を裏切られたのは残念で、
サイモン・オニールは声量は立派だったけどえらく硬い声でちょっとぐらぐら。それに、デブなのでちょいとエルヴィス・プレスリー風の白いスーツが滑稽で、ぷっと吹き出してしまったわ。「ヨハン・ボータ先輩よりましだろ」などど思っちゃ駄目だぞ! と怒りながら、麗しいクラウス君の姿と声に想像の中ですり替えようとしてた私でした。
エマ・ベルは化粧栄えする美人だったのにオバサンっぽくなった上に今日はスッピンっぽくて、しかもでかい声の筈なのになんだかしょぼくて、乳母役のヘザー・シップに負けてた。この二人は、以前聴いた時のことを考えればもっと上手な筈なので、本番じゃないから力抜いてたのかも。
エヴァに想いを寄せて複雑で味のあるハンス・ザックス役のウォルフガング・コッホははじめて聞く名前で、端正な顔立ちとバリトンにしては細い美声が私好みだけど、声量がいまいちなのと、カリスマ不足。隣に座ったおばさんが、グラインドボーンのジェラルド・フィンリーの方がうんと良かったわと言ってたのもうなづけます。
エヴァに横恋慕して優勝したくてたまらないベックメッサー役のピーター・コールマン・ライトも、充分上手なんだけど、主役級の道化役としてはもっと大袈裟にやって笑わせてくれなきゃ。
ジョン・トムリンソンとロバート・ロイドのベテラン英人コンビは年老いても上手なんですが、嫌というほどROHに出てるので、うんざり・・・。
パッパーノ大将の指揮は期待通りの素晴らしさ。
舞台や衣装については、今日撮影してた写真が出てきてからまた書きます。
ところで、
トーチャンは、「いくら良くても同じオペラを続けて2度観る気にはなれないな」、と言ってたんですが、元旦にも2枚、反対方向から見る席を買ってあるので行きたいかと聞いたら、「うん、とても楽しめたから又行きたい」ですって。段々私みたいになったらどうしよう・・・ 金掛かるしな~。実際、来年秋のリングサイクルも二人で行くんですが、トーチャンがどうしても近くで観たいと言うので、二人で(のべ8回分で)5百ポンド近くも奮発したんですよぉ