<19th Dec Wed>
うわっ! 忙しくしてる間に1ケ月も経ってしまいましたが、ロンドンで有名演奏家のコンサート多しと言えども、やっぱりキーシンは目玉ですから、どんなに遅れても記録を残さないわけにはいきません。それに、日本公演とかが最近あったのでしょうか、このブログに迷い込んだ人の検索ワードでここしばらくキーシンがトップなんです。
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ミュンヘンから帰った翌日の11月20日、バービカンでのエフゲニー・キーシンのリサイタルに行きました。
このコンサートがなかったらミュンヘンにもう少し長くいられたのに・・・、と恨むのは大間違いで、実はミュンヘンにご一緒した方はキーシンが主な目的でこの時期に日本から飛んでいらしたんです。そのついでにどっか旅行でもしましょうということであの週末にミュンヘンを企画したわけですから、あの素晴らしい山と湖の大景観もクラウス君の震えるほど素晴らしいローエングリンが聴けたのも、いわばキーシン様のおかげ。
バービカンの切符は先回から値段がえらく上がってしまい、この日も最高85ポンドとロンドンにしては破格の高額のため、天下のKey神様ですら切符の売れ行きが悪くて、最後はダンピングまでされたようですが、私はバービカン会員先行予約が開始した瞬間に最前列の至近距離席で下からですが手もばっちり見える斜め後ろの席をキャッチすることができました(最前列は70ポンド、2列目からは85ポンド)。
Haydn Sonata No 59
Beethoven Sonata No 32
Schubert 4 Impromtus:
F minor Op 142 No 1
B flat major Op 142 No 3
G flat major Op 90 No 3
A flat major Op 90 No 4
Liszt Hungarian Rhapsody No 12
Evgeny Kissin piano
なんせ、1ケ月も前なのですでに忘れかけてるんですが(メモなんぞ勿論取らないし)、覚えてることだけざっと書き残しておきましょう。
最初のハイドン、「え-っ、キーシンはハイドンなんて弾かないほうがいいんじゃないのかなあ・・」、という不安が見事的中して、もったり重くてぎこちない演奏でした。キーシンはいつもエンジンがかかるまでにしばらく時間が掛かるのですが、それはさておいても、これは軽やかで清清しいアンスネスにまかせるべきで、唸りながら力を入れ過ぎないで下さいね。
次のベートーベンの最後のソナタ、曲自体が暗いし力強さが必要なので、ハイドンよりももっと重くなった演奏が適してたとは思いますが、なぜかベートーベンにはピンと来ない私の心には響くものがなかったです。この曲に思い入れのある友人はこれが一番良かったと言ってましたけど。
シューベルトの即興曲は4つとも超おなじみで大好きなのばかり弾いてくれたのは嬉しかったけど、でもやっぱりもっとあっさり軽やかに弾いた方が良さが出るでしょうが。
私のような音楽知識のない聴き手には、キーシンはやっぱり「おおぉ~っ、凄いテクニックだ!」と単純に感動させてもらえるような曲が向いてるわけで、それは最後の、一番期待してたリストでやっと実現したのであります。底が浅くて技術みせびらかしのサーカスみたいな曲は嫌だわと仰る方もいるでしょうが、私はこういうののが素直に一番嬉しいです。ロボットみたいな曲芸演奏で、キーシンの目にも止まらぬ指使いと力強い左手の迫力に勝てるピアニストはいないでしょう(実はこの数日後に聞いた若いロシア人ピアニストDaniil Trifonov はかなりキーシンに迫ってましたが)。
アンコールは3曲。いつもは例えば「フレデリック・ショパン!」、とかキーシンが客席に向かってぶっきらぼうに少なくとも作曲家の名前は叫んでくれるのに、なぜか今回はそれがなかった上に知らない曲ばかりだったので、何なのかわからないのですが、最後のリスト(と思われる)曲が一番彼らしくて良かったです。
キーシンとリストの相性が良いのは、2011年2月のリサイタル(→こちら )がここ数年でベストだったことでも証明されてます。
ブログをはじめてからのキーシンのバービカンでのリサイタルを、私が気に入った順に並べるとこうなりますが(クリックで記事に飛びます)、まあまあだった今回のコンサートの位置づけとしては真ん中くらいでしょうか。
2011年2月 生誕二百年のリスト尽くしは大迫力
2007年3月 ショパンが素晴らしかった
2006年3月 写真もないしあまり覚えてないですが
2012年3月
なんか精彩がなかった
2009年6月
カーテンコールの憂鬱な表情が痛ましかった
キーシンのカーテンコールの表情は私の感想とはほぼ一致するような気がするんですが、今回は中くらいの出来だったのを反映して、すごく嬉しい顔はせず遠慮がちな笑顔。
因みに、表情という意味では、今までで彼が最も嬉しそうだったのは、リサイタルではなく歌手の伴奏なので上のリストには入ってませんが→こちら です。皮肉なことに、キーシンはおおはしゃぎだったのに、肝心(?)の歌手は硬い表情。で、歌手って誰? ほれ、私がここでよく話題にする例のロシアのバリトンですよ
あ、ミュンヘンにご一緒した高月園子さんが最前列で声援なさってますよ 「ほら、写真撮るからもっと体を乗り出して」、と合図して良い写真が撮れました。
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