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Channel: 着物でオペラ in ロンドン
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ドンカルロ by Verdi キャンセル女に振り回されて

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<26th May Sun>

3連休の真ん中。寒さが緩んで好天気だったけど、家でゆっくりできて、あれこれ片付き、やっとドンカルロもアップできます。明日はまた湖上の美人ですけど。

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London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)


London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)

5月4日、7日、11日と3回観たんですから、今更ですが、ヴェルディのドンカルロの感想を書いておきます。

ストーリーやオペラについては以前の記事(→こちら )をご覧下さいですが、


要するに、


王冠116世紀に絶大な権力を誇ったスペインの国王フィリッポ2世の息子ドンカルロと後妻エリザベッタ妃とのラブロマンスをでっちあげたシラー原作のスケールの大きなオペラで、2008年にROHで初登場して以来、同じプロダクションでNYメト等あちこちの大歌劇場をたらい回しされてて、ROHではこれが2回目のリバイバル。日本でもご覧になりましたよね? 


London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)     London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)


軽い乗りのベルカントオペラとヴェルディの重厚な歴史オペラを比べちゃいけないけど、ROHで並行して上演されてるロッシーニの湖上の美人よりは内容も音楽もずっと深くて優れた名作キラキラ


私はこの5年間でこれを10回くらい観てますが、いつも豪華歌手をずらっと揃えられないしょぼいROHには珍しく、今回はなかなかの顔ぶれでした。・・・当初の予定としては・・。


でも、嗚呼、そうは上手くいかないもので、やっぱり降板騒ぎばかりが話題になってしまいましたむっ


London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)
Director Nicholas Hytner
Designs Bob Crowley
Lighting design Mark Henderson
Movement Director Scarlett Mackmin
Fight director Terry King

Conductor Antonio Pappano
Don Carlos Jonas Kaufmann
Elizabeth of Valois Anja Harteros/Lianna Haroutounian
Rodrigo, Marquis of Posa Mariusz Kwiecien
Princess Eboli Béatrice Uria-Monzon
Philip II Ferruccio Furlanetto
Grand Inquisitor Eric Halfvarson
Tebaldo Dušica Bijelic
Count of Lerma Pablo Bemsch
Monk Robert Lloyd
Flemish Deputy Michel de Souza
Flemish Deputy Ashley Riches/Daniel Grice/ZhengZhong Zhou/Jihoon Kim/John Cunningham
Voice from Heaven Susana Gaspar

London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)
ロンドンのオペラファンにとっては、今回やっと箱ふぐポポ(マリーナ・ポプラフスカヤ)から開放されるということでやれやれと安堵だったのですが、しかし、出てくれる予定なのがアーニャ・ハルテロスということで、「本当に出てくれるんかな? 多分駄目よね」、と半ば諦め気味でした。

そしたら、案の定、2月末に「7回出るって予定だったけど、3回だけにするわ」、とわがまま仰ってガーン

でも、結局、実際に出てくれたのはリハーサルと初日だけで、2回目以降は扁桃腺炎と言う理由でトンズラ走る人。ご主人がドイツで病気らしいのですが、だったら最初から出るって言うんじゃない!等々ROHのサイトで盛り上がりました(→こちら )。
パッパーノ大将がこの頃に「この頃の歌手は簡単にキャンセルし過ぎる」、と怒ってたのも、彼女のせいであるところも大きいに決まってます。本当に人騒がせ。 

London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)    London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)

しかし、たしかに、ハルテロスが出るって言わなかったら他の有名なソプラノを引っ張ってこられたかもしれないのにと腹が立つものの、冷静に考えれば、ROHとは相性が悪いのかキャンセルばかりしてるバーバラ・フリットリでも出てくれない限り、可能性が高いのはポポ嬢だとロンドンでは誰しも怖れているので、それを阻止できただけでもハルテロス嬢に感謝しないといけないんでしょうね。ありがとう。


このキャンセルの女王様、この1、2年で4つもキャンセルして(ラ・ボエームと修道尼アンジェリカは全公演、オテロとドンカルロは一部)、さすがのROHも堪忍袋の緒が切れたに違いなくてむかっ、もう2度と呼んでもらえないでしょうが、そうだとしたらとても残念。だって、やっぱり上手だったんです、今回のドンカルロも。

私が聴いたのは初日だけですが、出だしが少々不安定だったものの、それすらスリリングだったし、声量もあって、とにかく魅力的な歌唱でした。すらっとして気品のある容姿も王妃役にはぴったりだし。一回聴けただけでもラッキーなのはわかってるけど、せめてもう一度出て欲しかったです。

London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)      London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)  
     代役エリザベッタはグーアップ                   代役エボリはブーダウン 

代役のリリアンナ・ハルトニアンが最初に登場した日のことは速報した通り(→こちら )、無名のおばさんだけど張りのある美声で、足を引っ張ることなく大役をこなし、少し余裕の出た2度目は演技もリラックスして、なかなか良かったです。長身細身首の長いハルテロス嬢と比べると、余計ずんぐりむっくりに見えてしまったのは不運ですが、この人も聴けて嬉しかったです。


同じ代役でも、大失望だったのは、エボリ皇女のベアトリス・ウリア・モンゾン。 名前すら聞いたことなかったものの、4月のOpera Awardにノミネートされてたし、すごく期待してたのに、なんですか、あの全く魅力のない声は。他の有名歌劇場でこの役を歌ってるらしく演技は堂に入って上手だったけど、彼女が歌っている間は退屈なので、録画で観るのであれば彼女の部分は早送りします。
London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)     London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)

問題含みの女性陣に対し、男性軍はとても充実してました。あの人気実力ともに今ナンバーワンのカウフマンがタイトルロールなのにかすんでしまう程、皆さん素晴らしかったクラッカー

いえ、ヨナス・カウフマンももちろん凄く良かったんですよ。そんなに好みじゃないとは言え、絵になる美男子だし。でも、先回も彼だったので、私にとっては新鮮味に欠けたし、テノールなのにまるでバリトン声の彼、やはり本物のバリトンに対しては分が悪い。因みにドンカルロはもう一人いて、カウフマンが出ない最後の2回はロベルト・アロニカでしたが、はなから興味なし。

London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)     London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)

今回一番楽しみだったのはロドリゴ役のマリューシュ・キフィエチェン(最近はクヴィエチェンって呼ぶのかな、ポーランド人って発音が難しいからいやだわ)でしたが、期待以上の素晴らしさで、朗々とした声がよく伸びて、先回までのサイモン・キーリーサイドに声では勝ったと思います。演技はちょっとあっさりし過ぎて、サイモンの方がやっぱり役者が上だけど。キフィエチェンはROHのドン・ジョバンニの中でも私にとってはナンバーワンだし、あの朗々とした声がきっととても好きなんでしょう。

London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)
低音に魅力は感じない私ですから、声が特に好きなわけでもなく、プレミエからずっとこの役なので嫌という程聴いて飽きてる筈なのに、フィリッポ2世のフルッチョ・フルラネットは歌も芝居も実に見事。何度聴いても感心で、低音歌手の良さを認識させるべきオペラの真髄は今回もまたフルラネットでした。
・・・そろそろ違う歌手で聴きたいけど。

というわけで、ハルテロスがキャンセルしたこともあり今回は3回で打ち止めましたが、この4時間半近い大作をまじかでたっぷり聴けて充分満足。

同じベルディでも、ドミンゴすら出てたのに観客の反応は冷めてたナブッコに比べると、全ての面でずっと盛り上がって、
パッパーノ大将もご機嫌でした。



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