<29th Jan Wed>
アラーニャとクルチャクに今日、予定より少し早く、女の子が誕生。Malenaちゃん。写真だとパパ似かな?
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今日は楽しみにしてた新プロダクションのドン・ジョバンニのリハーサル。ざっと感想を殴り書きしておきますが、一言で結論を先に言うと、パフォーマンスは5ツ星、前回の方が良かったプロダクションは3ツ星ってとこでしょうか。
ストーリーや前回プロダクションについては→こちら をご覧下さいですが、要するに、色情魔が女をたらしまくって最後は地獄に堕ちるというお話です。
プロダクション
お喋りな演出家カスパー・ホルテンが事前にヴィデオで、「設定は性が抑制されてたヴィクトリア時代で、セットは人が出入りしたり隠れられるようにドアや柱がある」、と言ってた通り、去年の彼のオネーギンに似たまともなセットでしたが、二階建てってのが気に断然入らなくて、私の舞台横の席からは上階がほとんど見えないので、私的にはこのセットはせいぜい2ツ星。
それだけじゃなくて、回り舞台になってる小さな白い二階建ての家に映像が投影されるんですが、それがしつこくてね。 映像も回転も立体感を出す良いアイデアとは思うけど、しょっちゅうぐるぐるチカチカ、やり過ぎだっちゅうの オネーギンもそうだったけど、ホルテンの演出は説明が多過ぎて邪魔。素晴らしい音楽と歌があればそれで充分だし、観客の想像力を尊重すべき。それに、こんなハイテクにして、故障するんじゃないの?
それに、前回のプロダクションでは最後のクライマックスが炎がぼうぼう燃えて「お~っ」、と盛り上がったけど、今回はな~んにもなくて面白みゼロ。
衣装は、とても素敵で大好きだった前回に比べると当然劣ります。まだ女性は大きく膨らんだスカートがゴージャスでどれも美しかったったけど、男性のは全くつまんなくて、特にドンジョヴァンニは普通のスーツやコートじゃあ魅力が出せないでしょ。まだ今回は上手なドンジョヴァンニだったからいいけど、下手な奴がやる時は衣装で誤魔化さなくちゃならないんだよ。
パフォーマンスは、これだけ粒揃いな歌手陣なのはROHでは珍しいほど、皆さん素晴らしくて、文句を付ける歌手はいません。
ドン・ジョバンニのマリューシュ・キフィエチェンは、これまでのROHのドンジョの中ではすでに私のベストだけど、更に凄みが加わってステップアップ。 だけど、小柄な彼が地味なヴィクトリアン紳士の格好しててもセクシーじゃなくて、そう言えば前プロダクションでは脱いだわよね、と思い浮かべたりしました。
レポレロ役のアレックス・エスポジートも私にとってはベストなレポレロで、前回はカツラ被ってたのでうんと若々しくて明るくてめげない悪戯少年のようだったけど、今回は地のスキンヘッドでぐんと精悍になったけど、こんな仕事をしてるのは嫌だと思いながら中年になりかけてる暗くて哀しいレポレロ。
ダークながらもコミカル演技もいつものように抜群で、トーチャンによると今日のベスト歌手だそうです。
ドンナ・アンナ役はスゥーデン美人のマリーン・バイストロムで、2011年10月のファウスト(→こちら
)と2012月2月のコジ・ファン・トゥッテ(→こちら
)でとても気に入ったソプラノで、リッチなダーク・チョコレートのような太い声がくぐもらずに元気に前に出て声量も立派で迫力があり、彼女が出ると舞台がぱっと華やぎます。容姿も歌も大好き。
ドンナ・エルヴィラ役のヴェロニク・ジャンスは、分別のあるしっとりした大人の雰囲気でこの役にはあまりぴったりしてないので、最初は派手なドンナ・アンナに押されて地味な存在でした。でも、最後はきっちり丁寧な歌唱がさすがで、テクニカルに一番上手な女性歌手は彼女でしょう。
この二人、バイストロムの太い迫力声とジャンスの細い繊細声が対照的で素晴らしかった。
ドン・オッタヴィオ役のアントニオ・ポリ君は、オテロのカッシオ役で注目したテノールで、一年前のベルリンの愛の妙薬(→こちら )がすっごく良かったので、若いテノールの中では私のイチオシとなり、今回は彼が出るのが一番の楽しみでした。
でも、ちょっと残念なことに、今日は絶好調ではなかったのか、いつもより声量がなくて声も少し乾いてたような。それでもうんと上手で聴き惚れましたが、例え絶好調でもこの役にはポリ君の声は既に重過ぎるかもしれないので、ヴェルディの方がいいのでは?
ツェルリーナ役はイギリス人のエリザベス・ワッツ。 かつてのような鈴のようにリンリンした声でなくなってしまったのはその手の声が好きな私としては淋しいけど、誰でも段々重くなるわけだし、今日は高音から低音までよく声が伸びて、元気一杯の村娘をエネルギッシュに好演。
村娘なのにこんな豪華なドレスも着せてもらって(ウエディングドレスはまた別)、よかったね。
最近はルーシー・クロウやソフィー・ビーヴァンに追いあげられてる感じだったけど、まだワッツも健在だ。
マゼット役のデビット・キンバーグは、ちょっと前までROH若手アーチストだったバリトンで、個性がなくて存在感なかったけど、今日はすっきり素直な好青年ぶり。あくどいドン・ジョヴァンニと濃いレポレロとの違いが出て、なかなか良かった。
指揮者はニコラ・ルイゾッティ。ROHでもすっかりお馴染みの彼は、時折チェンバロも弾きながら始終ニコニコ嬉しそうで、舞台の歌手たちの出来にも満足の様子。
というわけで、上の階が見えないのは頭に来たけど、素晴らしいパフォーマンスに大満足。外は冷たい雨の暗い日でしたが、ホカホカと温かい気持ちになりました。あと何度か行けるのが楽しみだけど(まず2月1日の初日)、毎回ストールサークルの3列目なので、誰かが「二階で歌うのは多過ぎないか?」、とか、高所恐怖症の歌手が「怖いから、下で歌いたい」、とか言って、変更になってくれたらいいのになあ。
一緒に行ったトーチャンはなんとドン・ジョヴァンニは初めてだけど(ムスメが家にいた時は連れてってあげなかったもんね)、いきなりこんな素晴らしいパフォーマンスで聴けてよかったね。
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