<21st November (Mon)>
今日ようやくiPhoneを購入したんですが、極端なメカ音痴の私に使いこなせるわけがないんだけど、まずはトーチャンに使い方を学んでもらい、必要な点だけかいつまんで教えてもらおうといういつもの姑息な手段。
忙しかった10月分の鑑賞記録を、全部は無理ですが、書き残しておきたい順番で追々書いていきます。
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10月25日、グラインドボーンにヘンデルのバロック・オペラリナルドを聴きに行きました。
6月に友人のツテで運よく新プロダクションのリハーサルを観ることができたのですが(→こちら )、主役のリナルドはやっぱりカウンターテナーで聴きたいと思っていたところ、秋から始るグラインドボーン・ツアーで実現すると知り、随分前から切符を買っておいたわけです。
正装の紳士淑女が集う夏のグランドボーン・フェスティバルとは別にあるグラインドボーン・ツアーというのはグラインドボーンを皮切りにイギリス全国を同じ演目で(全部じゃないですが)ドサ回りするわけで、オペラ好きだった故ジーチャン(トーチャンのトーチャン)の生前はトーチャンの故郷であるノリッチに皆で毎年行ったものです。
会社を半日休み、電車で1時間ちょっとのLewesまで行き、タクシーでグラインドボーンへ。夏はタキシードとイブニングドレスがピクニックするというミスマッチが売り物なんですが、秋からのツアーはごく庶民的な雰囲気で服装も普通。お庭も開放されてますが、寒いので閑散。
私たちはロンドンで日本の幕の内弁当のようなものを買って、満員電車の中では食べ辛かったので、結局グラインドボーンに着いてから食べたのですが、半野外のベンチはすごく寒かった。ここはやっぱり夏用にできてるので、寒いときは居場所がなくて不便。
左のレストランは高いので、右のティールームで開演前に暖まってからオペラに行きましょう。
オペラについては(前の記事の繰り返しになりますが)、
1711年のヘンデルのバロックオペラで、騎士リナルドは十字軍の英雄、舞台は中世のエルサレム、異教徒の悪者に恋人がさらわれたり、オペラでは有名なアルミーダという魔女も登場してリナルドに横恋慕したり・・・、
というヘンデルのオペラにはよくあるエキゾチックで荒唐無稽なお話なんですが、魔女が出てくるだけでコメディ的要素があるわけで、そこを利用して見事に現代に蘇った爆笑プロダクションを創り出した人気演出家ロバート・カーセンは天才
舞台は現代の学校、リナルドはいじめられてる高校生で、妄想の中で十字軍の騎士になって憧れの女子高生をものにする、という設定に読み替えられているんですが、すっきりした空間を照明で変化をつけ、自転車が馬になり、異教徒との戦いはサーッカー試合、学校のユニフォームと中世の衣装のミックスも絶妙で洒落てます。プロダクションの写真は6月の記事をご覧下さい。
Conductor Laurence Cummings
Director Robert Carsen
Revival Director Bruno Ravella
Designer Gidion Davey
Lighting Design Robert Carsen and Peter Van Praet
Movement Director Philippe Giraudeau
Dramaturg Ian Burton
Rinaldo Christophe Dumaux
Goffredo Louise Poole
Eustazio Christopher Ainslie
Almirena Elizabeth Watts
Armida Ana Maria Labin
Argante Joshua Hopkins
A Christian Magician William Towers
フェスティバルに比べるとツアーの切符代はうんと安くて、最前列でも僅か51ポンド。おまけにすぐ目の前には育ちの良さそうな若くてハンサムなチェンバロ奏者がいて、ここは最高の席だわ
だけど、ツアーだと多少変更することもあるのか、リハーサルの時とはちょっと違ってました。一番大きな違いは、最大の見せ場ともいえる映画ETのパロディで大きな月をバックに自転車で空を飛ぶアクションがカットされてたこと。でも、その大掛かりなシーンはリハーサルの時も技術的な問題が生じてつまづいてたので、もしかしたら本番でもすでにギブアップしてたのかも。
パフォーマンス
ヘンデル時代には花形だったカストラートというタマ抜き男性歌手は今は存在しないので、主役リナルドは男性のカウンターテナー、または女性のメゾソプラノ/アルトで代用するしかないのですが、この約はやっぱりカウンタテナーの方が歌唱的にも絶対ベターと思ったのは正しかったことが今回はっきりわかりました。
お目当ての若いCTのクリストフ・デュモー君は長身ハンサムなのでビジュアル的にも理想的だし、力強い声と立派な声量、切れの良いコロラチューラは素晴らしくて、どんな大きな劇場でも映えるでしょう。でも、あまりにも硬い声なので、音を伸ばして声の美しさだけで聴かせる曲で彼を聴きたいとは思わないな。
私が今ぞっこんのCTはイギリス人のイエスティン・デイヴィーズなのですが、実は次にフェスティバルでやる時は彼がリナルド役だというさる筋からの情報もあり、それは3年後らしいのですが、それが本当ならすごく待ち遠しい。
リナルドの恋人役は今回はイギリスでは知名度のより高いエリザベス・ワッツでしたが、先回のAnett Fritschの美声も素晴らしかったので、これは甲乙付けがたし。
今回の方がはるかに劣るのは敵役アルガンテで、これは先回のルカ・ピサローニがあまりにもサマになって格好良かったので、仕方ないと思うものの、上手なバス・バリトンは履いて捨てるほどいるんだろうから、もうちょっとましな人にしてもらいたかった。
セクシーな皮(ビニールだけど)のぴったりドレスの悪女アルミーダ役は、先回の長身でモデル並のプロポーションだった美人のBrenda Raeと比べると今回のAna Maria Labinはやけにでかい下半身でビジュアル的にはうんと負けましたが、素晴らしく張りのある声で、今回の勝ち。
というわけで、一般的にはツアーになると歌手のランクは格下げになるんですが、このリナルドに限っては平均点では互角で、肝心の主役リナルドは今回のドサ回り組の勝ちだし、リーズナブルな値段で最前列に座れたし、半日掛けて遠くまで出向いた価値は充分ありました。