<31st May Sun>
明日から6月だと言うのにまだ寒くて出掛ける気にもなれず、気がつけばこの週末、外の空気に触れたのは我が家の庭だけ。家にいたおかげであれこれ片付いたからいいんですが。
-------------------------------------------
5月16日、クラウス君キャンセルでがっくりした翌日はシラー劇場(→こちら )でモーツァルトの魔笛を鑑賞。
「良いプロダクションとの知り合いのお勧めです」、と仰る日本からいらしたオペラ仲間の方とご一緒したのですが、口コミは頼りになりますからね、素晴らしい演出でした。
観る前は写真を見て、「うわ~っ、いまどき全身葉っぱの衣装のパパゲーノなんているんだ! 古くさっ!」、と思ったのですが、たしかにコンセプトはまとも過ぎてクラシック過ぎるものの、エジプト風のセットはわかり易い上に場面もストーリーに伴って何度か変り、火責め水攻めシーンとかも上手に工夫されてるし、もちろん滑稽な動物もたくさん出てきて、動きもある素晴らしいプロダクションでした。ユニークであろうとするがために奇をてらうのが当たり前になってるオペラ演出の中でこれは貴重であり、作品自体の素晴らしさを最大限に伝えることができるのは結局こういうオーソドックスさですね。
プロダクションについてはシラー劇場サイトの映像(→こちら )でご覧下さい。
私が行ったのは土曜日のマチネで子供もたくさん観に来てたんですが、私の周りにいた子たちは皆すごく楽しんでましたよ。上演中にお喋りする子も結構いたんですが、これなら「わーっ、すごいね、これ、楽しいね」、とその場で言い合いたい気持ちもよくわかります。 特に「魔笛」は一般市民向けの歌芝居ですから、子供たちの中で本来の楽しみ方ができました。
Die Zauberflöte
Conductor Michael Wendeberg
Director August Everding
Set Design after design by Karl Friedrich Schinkel Fred Berndt
Costume Designer Dorothée Uhrmacher
Chorus Master Frank Flade
Tamino Peter Sonn
Pamina Adriane Queiroz
Papageno Arttu Kataja
Papagena Narine Yeghiyan
Queen of the Night Anna Siminska
Sarastro Jan Martiník
Speaker Tobias Schabel
Monostatos Dietmar Kerschbaum
歌手の中では、パパゲーノのアルトゥー・カタヤがぶっちぎりでベスト
36歳のフィンランドのカタヤ、大袈裟なコメディ演技ではなく身のこなしも品の良いパパゲーノでしたが、なんせ長身のハンサム君の上になめらかな美声なのですっかり皆が魅了された筈。こないだのROHでも芸達者ウェルバの時も思いましたが、このオペラの主役はパパゲーノだ。可愛いパパゲーナとも相性ぴったりで、これ以上は望めないチャーミングなカップルでした。
バリトンには興味のない私がファンになったカタヤ君、嬉しいことに秋に又ここも観に来るニュールンベルグのマイスタージンガーにも、ちょい役でしょうけど、出る予定。
パパゲーノのあまりのカッコ良さにすっかり影が薄くなったのがタミーノ王子のペーター・ソン。立派なテクニックで充分上手なんですが、ワーグナーも歌うという彼の声はこの役には重過ぎて、軽やかなタミーノが好きな私の好みからは外れてます。
ビジュアル的に設定と合ってないという点では、タミーノ王子よりもパミーナ王女の方が残念な存在でした。歌は充分合格なんですが、リアリスティックなプロダクションにこの太目のお姫様では、子供たちも混乱して折角のロマンス物語がますます成り立たなくなっちゃいましたね。 まあ、これからいつくかオペラを観れば、「ルックスに合ってる歌手が出るのは稀」ということはすぐわかるでしょうけど・・。
ルックス的には母娘が逆だったら良かったのにと思うくらいパミーナ王女のお母さんの夜の女王はすらっと綺麗でした。こないだ散々ROHで聴いたばかりのアンナ・シミンスカなんですが、ROHのどぎつい化粧じゃなくてこのナチュラル
さで、まるで別人。ロンドンでもベルリンでも歌はどうってことなかったですけど。
ベルリンは切符代が安いので(魔笛は3列目の真ん中で68ユーロ)、ロンドンではとても手が出ないオーケストラ・ストールの前の方に座れて全てばっちり見え、前日のファウストの劫罰(→こちら )に続いてまた素晴らしいプロダクションが楽しめました。
残念ながら、この翌日のモーツァルトはひどいプロダクションだったのですが・・・。