<17th Oct Sat>
そう言えば、今夜はロイヤル・フェスティバル・ホールでヨナス・カウフマンが歌ったんだわ。迷った末に切符代が馬鹿高いので行かなかったけど。彼はロンドンにはよく来てくれるので、こんなこと言ったら日本から石が飛んで来そうですが、ちょっと聞き飽きたしね・・(来月のカルメンは高い席を奮発したけど)。嗚呼、ヨナスの代わりにクラウス君がロンドンに来てくれればなあ・・。そしたら、こないだベルリンで観たマイスタージンガーだって毎回行っちゃったのにさ。
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以下の写真はクリックで拡大します。 数が多過ぎて全部フルサイズにすると大変なことになるので。
10月11日にベルリンのシラー劇場で観たワーグナーのニュルンベルグのマイスタージンガー、遠征の目的であったテノールのクラウス君(クラウス・フロリアン・フォークト)のことはすでに写真たっぷり添えて記事にして(→こちら )、それ以外はどうでもよかったのですが、長いワーグナーがあっと言う間に感じられた爆笑新プロダクションだったし、「ワーグナー老人クラブ」の爺さんたちの登場も面白かったので、記録に残しておきましょう。クラウス君が舞台にいる間はほぼずっと彼ばかり見てた私にあれこれ書く資格はないでしょうけど。
まず、マイスタージンガーってどんなオペラなの?、と仰る方のためには、以下、過去記事のコピペです。
普通に上演されるワーグナーの中では唯一の明るく楽しい作品で、テーマはマイスタージンガー(英語だとmaster singer)。要するに中世のシンガーソングライターのコンテストなんですが、今回の一等賞はなんと超美人のお嫁さん。通り掛った騎士が彼女に惚れて、コンテストのことはなんにも知らないし歌うのもはじめてだけど、特訓と素質で、ズルしようとしたライバルを蹴落として、見事優勝するというお話。だけどこいつは「彼女と結婚するだけで充分。マスターシンガーになんかなりたくないよ」と失礼なことを言い出すもんだから、皆で寄ってたかってマスター歌手がいかに価値あるものかを説得して、最後は「ははーっ、わかりやした。謹んでお受けします」とめでたしめでたし。
プロダクション
カーテンコールの衣装からおわかりのように、現代読替で、ハンス・ザックスは靴の修理もできる音大教授という設定かな?
嫌という程出てくるドイツ国旗が最も重要なセットでもあり小道具でもあり、臆面もなくドイツ万歳されまくるのですが、問題が山積みのヨーロッパではやはりドイツが頼りなわけですから、今の時代にぴったりですね。初日だった東西ベルリン統一25周年記念の日が初日にメルケル首相臨席が実現しなかったのは気の毒。
このプロダクション、国立歌劇場に修復完成祝いのこけら落とし公演の予定だったのに、ちっとも修復が終わらないので、これ以上待ちきれず、仮小屋である小さなシラー劇場でやったのですが、今回のもう一つの目玉であるバレンボイム指揮の元で過去のワーブナー名歌手たちが集合するイベントのことも考えると、爺さんさんたちが出演できるうちにと急いだんでしょう。
Die Meistersinger von Nürnberg
Musikalische Leitung Daniel Barenboim
Inszenierung Andrea Moses
Bühnenbild Jan Pappelbaum
Kostüme Adriana Braga Peretzki
Licht Olaf Freese
Chor Martin Wright
Dramaturgie Thomas Wieck /Jens Schroth
Musikwissenschaftliche Beratung Moritz Lobeck
Hans Sachs Wolfgang Koch
Veit Pogner Kwangchul Youn
Kunz Vogelgesang Graham Clark
Konrad Nachtigall Gyula Orendt
Sixtus Beckmesser Markus Werba
Fritz Kothner Jürgen Linn
Balthasar Zorn Siegfried Jerusalem
Ulrich Eisslinger Reiner Goldberg
Augustin Moser Paul O’Neil
Hermann Ortel Arttu Kataja
Hans Schwarz Franz Mazura
Hans Foltz Olaf Bär
Eva Julia Kleiter
Walther von Stolzing Klaus Florian Vogt
Magdalene Anna Lapkovskaja
David Stephan Rügamer
Ein Nachtwächter Jan Martiník
老人クラブの面々、皆さん、さすが貫禄とカリスマでしたが、その中で「おお~っ!、まだ充分歌えるじゃないか」、と歌唱力で目立ったのが小柄なグレアム・クラークで、この日ご一緒した中にはかつての名ミーメだった彼を実際にお聴きになったオペラ仲間もいて感慨深げでした。
杖ついてた91歳のフランツ・マツーラの怒りの演技も迫力ありました(「なんじゃい、このプロダクションは」、って本当に怒ってたかもと思った程。
真っ赤なズボンが目立った70台のジークフリート・イェルサレムは声はほとんど出てませんでしたが、ご本人嬉しそうだったし、出てくれたくれただけで御の字でしょう。他の人たちは影が薄かったかな。
ハンス・ザックスのウォルフガング・コッホは、温かい人間味が滲み出て良い味出してましたが、この役でROHでも出てたので、私には新鮮味無し。
道化役のベックメッサーは、ROHの魔笛でチャーミングで上手なパパゲーノだったマルクス・ウェルバ。代役だったそうですが、大袈裟過ぎない歌と演技で実力発揮。でも、小柄なせいで少々貧弱に見えてしまって損したような。 でも、やっぱり凄く上手。
長身美女で歌も上手いエヴァ役のユリア・クライテルは、クラウス君とはお似合いの素敵なカップル。
テノール好きの私にとってはダヴィット役は注目なんですが、初めて聴くStephan Rügamer は長身で格好良いし上手。クラウス君とは違う声質なのもよかった。
初回は全部通しでやらずに二日間に渡って半分づつだったせいか、バレンボイム先生の指揮はえらくゆっくりペースだったそうですが、この日はテンポよく進みました。
でも、なんかオーケストラの音が篭もった感じでシャープさに欠けて精彩なかったのが唯一残念だったかも
ほとんど歌わない脇役が爺さんたちの他にもいて、ハンサムな上に長身過ぎて目立ちすぎたフィンランド人のアルトゥー・カタヤ君のことはすぐに「あっ!、5月の魔笛で素敵だったパパゲーノだ」、とわかりましたが(→こちら )、
もう一人、「うーん、どっかで見たことあるけど・・」、と考えてもその時にはどうしても思い出せなかったのがグイヤ・オレントで、そうそう、ロンドンのラウンドハウスで主役だったオルフェオだ(→こちら )。
以上、
圧倒的な歌唱力で輝きまくったクラウス君だけでなく、他の人も歌も演技も皆さん上手で、休憩入れたら6時間以上だったのですがあっと言う間だったし、レベルも高く色んな意味で特別感のあるパフォーマンスで、わざわざこのためだけにベルリンまで行った甲斐は充分で、5月のリベンジに充分お釣りが来ました 前から2列目の真ん中近くに僅か107ユーロで座れるなんて(平日はもっと安い)、ベルリンのオペラファンが羨ましい。
尚、
今回はカーテンコール以外には写真を全く撮らなかったので、シラー劇場の様子については今年春に行ったときのをご覧下さい(→こちら )。