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アレクサンドル・タローのピアノ・リサイタル @Wigmore Hall
<20th February Mon>
朝晩はとても冷たい日でしたが、モーツァルト三昧も佳境に入った今週、今日は2度目のフィガロの結婚へ。
明日だけは空いてるので、ムスメが仕事帰りに夕食に寄ってくれます。職場のお持たせ用に又トーチャンが張り切ってクッキーを焼いてあげるらしいです。私も食べたいんですけど・・・
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2月15日、ウィグモア・ホールにAlexandre Tharaudのピアノ・リサイタルを聴きに行きました。いつもは地味な年寄りばかりなのに、なぜかこの日はお洒落なゲイ・カップルが多かったような。
タロー君の大ファンであるA先生と二人で着物で行った様子は→こちら
をご覧下さい。
Scarlatti
Sonata in D minor Kk9/in C Kk72/in C Kk132/in D Kk29/in E Kk380/in A minor Kk3/in C Kk514/in F minor Kk481/in D minor Kk141
interval
Chopin
Piano Sonata No. 2 in B♭ minor Op. 35 ‘Funeral March’
Liszt
Funérailles S173 No. 7
タロー君を聴くのは、3年前に続いてこれで2度目の私(2年前はキャンセルされました)、先回は音譜を見ながらの演奏にびっくりしたのですが(→こちら
)、今回は当然のこととして全く気にならなりませんでした。見るからに繊細な彼がそれで精神的に楽になれるのであれば、それは聴き手にとっても良いことですから。
で、音譜を真剣に目で追いながら、どうだったかと言うと、
今日の目玉でもあるスカラッティは、感無量でうるうるなさってた大ファンのA先生ですら「CDの方がずっと良いわ」と仰ってたように、実力を出し切ることができなかったのが残念でしたね、タロー君
特に最初は緊張していたのでしょう、ピュアな音で軽やかに弾くべきスカラッティのところ、どんよりして重くて・・・
弾いていくうちにどんどん音は良くなったし、思い入れたっぷりのテンション高い演奏も彼らしくて良かったのですが、これはやっぱりアンドラス・シフのような正確で安定度の高いピアニストで聴く方がいいかな、と思ったりしました。
今回は知っていたので驚かなかったことはもう一つあり、それはチック症(ピクピクっとした素早い動きなどが、本人の意思とは関係なく、繰り返し おきてしまうのが症状)のタロー君の演奏中の奇怪な行動で、時々壊れたロボットのような動作が突然出る度に、演奏に影響はないのですが、どうしてもドキッとしてしまいます
チック症と精神的な弱さを克服して人前で弾くのは、心身共に健康な演奏家と比べると大変なことでしょうから、ここまで弾けるタロー君は凄いと思います。後半のショパンとリストは、どちらもお葬式がテーマという、ホラー映画に出たらぴったりな青白くて痩身タロー君にビジュアル的にも相応しかったし、細くても43歳の男盛りが渾身の力で叩きつける迫力は立派で、本人も上出来と思ったか、カーテンコールでは嬉しそうなタロー君でした。上機嫌でアンコールで2曲弾いてくれて(ひとつはお得意のクープランらしい)、短いけれど、暗くて重い葬式曲の後にほっとするような軽やかで洗練されたフランスの音を聴かせてくれました。
それにしても、この1週間前に聴いたスティーヴン・ホフ(→こちら
)の、安定してるのは良いけどリストなのに熱気の感じられないクール過ぎる演奏と、清らかに弾いて欲しいスカラッティに力が入り過ぎたタロー君、ビジュアル的にも静と動で対照的な二人を聴いて、あらためて色んなスタイルのピアニストがいるもんだと思った次第。
来月は、私にとってはピアニストの真打とも言える二人、キーシンとアンスネスが聴けるのがとても楽しみです。他にももっと行きたいんですが、今はオペラに行くだけのに忙しくて、ピアノのコンサートには限りがあるのが残念。
東日本大震災復旧復興祈願チャリティ・コンサート
<21st February Tue>
ムスメが仕事帰りに夕食に寄ってくれました。トーチャンは明日ムスメが同僚のために持っていくクッキーを焼き、カーチャンは夕食以外にもランチのお握りを作ってあげて、更に洋服やアクセサリーも好きなものを持ってっていいよと懸命にサービス。その成果か、来週も来てくれるようなので楽しみです。
明日からはモーツァルト3連チャンで、それも勿論張り切ってます
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あの日からもうすぐ1年。
各地で数多くのセレモニーやイベントが行なわれることでしょうが、1周年イブの夜にロンドンの高級住宅地にある教会でチャリティ・コンサートがありますので、皆様も是非いらして下さって、一緒に復興祈願しましょう。
廣田丈自さんは、和太鼓ブームのロンドンでも頂点に立つプロのパフォーマーで、私も何度か聴かせて頂いていますが、この日は尺八と歌もご披露して下さるそうです。映画のテーマ音楽などの演奏で活躍してるメトロポリタン・オーケストラを生で聴く貴重な機会でもありますし、色々楽しみ
切符は20ポンドで、イベントに関わってらっしゃる友人が手配して下さるとのことですので、私にメールで連絡下されば、まとめてお願いすることもできます。できれば木曜日の夜までにお願いします。
tsubakihimelondon あっとまーく yahoo.co.jp
この他、去年は真っ先にロンドンで演奏活動を通じて熱心に義援金活動をなさった葉加瀬太郎さんのチャリティ・コンサートが3月11日に又カドガン・ホールでありますよ→こちら
ドン・ジョヴァンニで出待ち(速報)
<23rd February Thus>
うららかな春の日、シティのお昼休みは広場で日向ぼっこする人がたくさんいました。
モーツァルト三昧もピークに達してる今、今日はまたドン・ジョヴァンニに。
珍しく出待ちもしてみました。
時間がないので、ドン・ジョヴァンニ役のアーウィン・シュロットだけの写真だけアップしますが、
うーん、
やっぱり舞台のフェロモン男ぶりのほうが素敵だわ
着物で行ったのですが、シュロットや他の歌手ともツーショット写真が撮れましたので、明日アップします。フィガロの結婚の3回目に行くのですが、また帰りが遅くても、明日は金曜日だから夜更かしOK。
動画もちょびっとだけ貼っておきます。
さあ、もう一日仕事もオペラも頑張れば、ゆったり週末はすぐそこだ
満足のカーテンコール写真
<24th February Fri>
すみません、今日はフィガロの結婚を観に行って帰宅が遅くなったし、忙しい毎日でさすがに疲れたので、お約束した昨夜の出待ち写真アップは明日に延期します
ところで、自分で言うのもなんですが、昨夜のこの写真とても素敵でしょ? なかなかこんなカーテンコール写真は私のボロいカメラで撮れるものではありませんよ
「あ、着物の人がいる」と私に向かって指さしてるように見えるかもしれませんが、残念ながらそうではなくて、実はパフォーマンスの途中にジョン・ジョヴァンニがチャチャ入れに客席に来て、ストールサークル最前列の女性に手に恭しくキスしてくれるんですが、カーテンコールのこのゼスチャーはその彼女に向けってなされたものに違いなくて、たまたま3列目の私はその延長上にいたので、こんな抜群の角度で撮れたんです。
でも、そう言えば、2007年6月のドン・ジョヴァンニで、シュロットが明らかに私に向かってポーズ取ってくれたことがありましたわ。詳しくはその時の記事をご覧下さい(→こちら )なんですが、あれはやはり着物の威力に違いないです。
そうだ、この時ネトレプコと共演してたんですが、この二人はこの時にデキたんでしょうか? ネトコもまだほっそりして綺麗だったしね。
ドン・ジョヴァンニで出待ち(詳細)
<25th February Sat>
こんな春らしい陽気の中、家に閉じこもっているのも勿体ないような気はしますが、ブログを書いたり他の片付け仕事が溜まってるから仕方ないわ。すでに3回行ったドン・ジョヴァンニは、もう一回来週行ってから感想を書きますが、昨夜の出待ちのことをまずアップしましょう。
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朝が早いサラリーマンの私にとってはステージドアでの出待ちはリタイア後にしかできない贅沢と諦めてるんですが、この日はご一緒して下さる出待ち常習犯の友人もいて、着物の上に何も羽織らなくても大丈夫なくらいの異常な暖かさだったし、今夜は数人のソロ歌手が出るから誰かは早く出てくるだろうから、まあちょっと様子を見に行きましょうということで、2月23日、木曜日の夜にドン・ジョヴァンニの後にステージドアに駆けつけたら、ほぼ一番乗りでした。(写真はクリックで拡大)
Conductor Constantinos Carydis
Don Giovanni Erwin Schrott
Leporello Alex Esposito
Donna Anna Carmela Remigio
Donna Elvira Ruxandra Donose
Don Ottavio Pavol Breslik
Zerlina Kate Lindsey
Masetto Matthew Rose
時間限定の私には幸いなことに、待つこと10~15分で次々と出てきてくれたのですが、いきなり目の前に現れるし、私たちは列の最先端なので、コーラスやオケの人もぞろぞろ出てくる中で、誰なのか一瞬で識別して声を掛けないと通り過ぎてしまいます
実際、最初に出て来た大男が騎士隊長だと気付いた時には後ろ姿でしたが、まあ彼はマイナー過ぎるのでどうでもいいや。
次に現れたのがツェルリーナ役のケイト・リンゼー。造作の大きいイユニークな美貌はすぐわかり、「ミス・リンザー! メトのホフマン物語の中継ですごく素敵だったので、生で聴けて嬉しいです。」、と言ったら「ありがとう、嬉しいわ。あれは楽しかった」と言って快くツーショットに応じてくれました。歌も上手だし凛々しくて素敵な彼女を次は是非ズボン役で観たいです。
次はいきなりドン・ジョヴァンニ。意外に背が高くてがっしりしたア-ウィン・シュロットのいでたちは、この前のトーク・イベントの時と似た感じのグレーのボロ・ファッション。きっとこういうファッション・センスなんでしょう。
私たちの後ろに知り合いでもいたのか、すぐにそっちに行ってしまったので、ツーショットは逃してしまって残念 狭くて混んでる場所なのでタイミングが難しいのよ。
で、食い下がって後ろから割り込もうかなと思っていたら、
あーっ! その後すぐに出て来たのがドン・オッタヴィオのパヴォル・ブレスリク君よ バリトンよりテノール好みの私にはこっちの方が大事なので、素早く彼を捕まえなきゃ。
「2年前のコジ・ファン・トゥッテの時にここで待ってたのに出てきてくれなくて失望したことあったのよ」と言ったら、「そうか、それは申し訳なかった」と。「今度いつロンドンに来るの?」(お目当ての歌手に対してはこれが一番大切な質問)、「来年のオネーギンだよ」。オネーギンやるなら、レンスキーは去年ENOで聴いたトビー君にやらせてあげたい気もするけど、ブレスリク君なら文句なしで、今から楽しみ
しかし、シュロットと雰囲気を合わせたようなこのファッションは、端正なハンサム君には似合わないし、金髪のブレスリク君が見たかったのにシュロットと同じく帽子被ってるのは寒さから身を守るため?今夜は暖かいから要らないのにぃ
「ウィルスにやられて不調なんですが、歌いますからご理解を」というアナウンスをされたのがレポレロ役のアレックス・エスポジートが登場。
オツムが薄いのは知ってたので彼だとすぐわかりましたが、それを知らなかったら、特徴のない彼は素通りさせちゃうかも。
体調悪い彼こそ帽子被るべきなのに坊主頭のエスポジット君、「たくさん観た中で貴方がベストなレポレロだと思う。前にもこの役で出たよね」、と言ったらとても喜んでくれました。お世辞じゃないし、病気でもこれだけエネルギッシュにやるプロ根性は凄くてファンになりました。
「具合はどう?」、「もう最悪、あちこちガタガタなんだよ~」。 「でも、はいスマイル・プリーズ」と無理矢理。
お目当てのブレスリクとエスポジットに逢えて一段落したので、折角だから出口近くまで進んでたシュロットを掴まえて、友人はサインを、私はツーショットをねだってみましょう。「アリガトー」って日本語で言ってくれたし、とりあえずドサクサに紛れてツーショットもできたので良しとしましょう ブログ用の写真が撮れれば満足だし、たくさん人が待ってる中で長々と話をするのはマナー違反だと思うんです(そういう人いるんですよね)。
帰ろうかと思ったら、あっ、ドンナ・エルヴィラ役のルクサンドラ・ドノセだ!
舞台では妙なカツラ被ってるし苦悩の表情が多いので老けた印象だけど、こんな風にナチュラル髪で微笑むととても魅力的じゃないですか。「去年の秋にRFHで中村恵理さんとトビー君と共演したのも聴きましたよ」、「あら、ありがとう」。
というわけで、慣れないので緊張しましたが、ドンナ・アナ役のカルメラ・レミージョ以外は写真撮れました。もしかしたら彼女も出て来たんだけど、舞台の濃い化粧落として素顔だとわからなくてオケの人たちに紛れて見つけらなかっただけかも。
で、こんなに早く出てきてくれるんなら、ちょくちょく行けるかもと思ったりもしました(←危険)。来週もう一度ドンジョバに行くのは最終日だからきっと終演後にドリンクとかして時間が掛かるだろうから私は無理ですけど。
フィガロの結婚 by Mozart 代役伯爵夫妻の明暗
<26th February Sun>
相変わらずのポカポカ陽気。後でちょっと外に出てみよう。
ここ暫くのROHモーツァルト三昧で、「あー、さすがにちょっと違う雰囲気の音楽、例えばストラヴィンスキーとか聴いてみたいかも」と思っていたんですが、今週末は計らずもヴェルディを2つ聴くことになりそうです。昨夜のメトHDラジオ生中継のエルナーニは嫌いな歌手が二人出てるにも拘わらずなかなか良かったし、今夜は同じくメトのトロヴァトーレのTV放映があり、少し痩せたらしい丸ちゃん(Mアルバレス)を久し振りにテレビでかじりつく予定(でも、ゲゲッ! 両方ともホロが歌ってる)。
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モーツァルト/ダ・ポンテ三部作も終盤に差し掛かりましたが、2月14日、20日、24日と3回行ったフィガロの結婚Le nozze di Figaroを観終わりました。
私の知る限り切符代がダンピングされなかったのは、3つの中でこのフィガロの結婚だけですが、特に人気歌手が出てたわけでもないので、やっぱり作品として一番人気があるということでしょうか。
どんなオペラなの?と首を傾げる方のためにざっと説明すると、
ストーリーはロッシーニのオペラ「セヴィリアの理髪師」での出来事から数年後という設定で(オペラとしてはモーツァルトの方が先ですが)、その時の床屋のフィガロの手助けによって伯爵がロジーナと結婚するまでのドタバタ
劇の登場人物はほとんど皆また出て来るのですが、主役3人が別人のように変ってて、
結婚前のセヴィリアではあんなに元気で機転が利き、問題解決に前向きで積極的だったロジーナ嬢は今では夫の浮気にくよくよ悩むだけの伯爵夫人になってしまったし、
床屋のフィガロはセヴィリアでの手柄のおかげで伯爵家に雇われたのですが、原因はギャンブルでしょうか、多額の借金で首が回らなくて返済できなければ金貸ばあさんと結婚しなければならない羽目に陥っていて、伯爵がフィアンセを狙っているのも気が付かないほど頭の回転も冴えなくなって婚約者に押されっぱなし
そして、あれほどの苦労の末ロジーナと結婚できた伯爵は彼女に飽きて若い女性の尻を追いかけ回し、
という状況の中で、ストーリーはフィガロと伯爵夫人の小間使いスザンナとの結婚の日のドタバタなんですが、かなり込み入った話なので詳しいことはとても書けませんが、要するに、スザンナに領主の「初夜権」を行使しようとするスケベ伯爵をこらしめる話で、今回の悪者はアルマヴィヴァ伯爵。オリジナル小説は、召使が貴族を負かすのは革命的であるとして禁止すらさたそうだし、これがフランス革命のきっかけになったという説もあり。
伯爵も馬鹿ではないので、皆であの手この手で知恵比べ。モーツァルトのオペラにはよく出てくる偽装して他に人になりすますシーンもあるし、ヤキモチの妬き合いで人間の愚かさ醜さ可愛さが出てなかなか深い味わいがあり、セヴィリアの理髪師のような表面的な喜劇ではありません。
新しく登場する人物で重要なのはフィガロのフィアンセのスザンナで、伯爵誘惑のオトリになったり、窮地では機転を利かせたりして、キュートで溌剌、利発な女中さんの彼女がこのオペラのゴタゴタの中心であり仕切り役。
もう一人新しい登場人物でユニークなのは小姓のケルビーノ。女性を見ると鼻血ドバドバの青春ホルモン過剰供給少年で、有名なアリア「恋とはどんなものかしら?」も彼の状態を考えると、ロマンチックな恋への憧れの歌ではないことがわかるでしょう。この役を男性が演じると生々しくなるのでしょうが、これはメゾ・ソプラノのズボン役で、男性役の女性歌手が女装するというひねった面白さがあります。
音楽の構成も抜群だし、有名アリアが散りばめられて、喜劇オペラでは最も人気があるのも当然です。
2006年初演のマクヴィッカー演出は、つまらない程まともですが、たまにはこういう素直でわかりやすい設定が却って新鮮で、衣装が特に素敵だし舞台も開放的で明るくて、私は好き。
Composer Wolfgang Amadeus Mozart
Director David McVicar
Revival Director Leah Hausman
Designs Tanya McCallin
Lighting design Paule Constable
Movement Director Leah Hausman
Conductor Antonio Pappano Richard Hetherington
Figaro Ildebrando D'Arcangelo
Susanna Aleksandra Kurzak
Count Almaviva Lucas Meachem
Countess Almaviva Rachel Willis-Sørensen
Cherubino Anna Bonitatibus
Don Basilio Bonaventura Bottone
Marcellina Ann Murray
Bartolo Carlo Lepore
Antonio Jeremy White
Barbarina Susana Gaspar
3つの中で唯一、パッパーノ大将が指揮するわけだし、結構豪華なキャストの予定だったのに、1月末に伯爵役のサイモン・キーンリーサイドが降板してしまい(体調崩したバレリーナの奥様の代わりに二人の小さな子供の面倒をみてて喉を壊したんだそうです)、直前に肩すかしを食らってしまいました。更に、いつのまにか伯爵夫人も上品で素敵なケイト・ロイヤルから無名のソプラノに変ってるし、これでは先回の豪華な伯爵夫妻(フリットリとマッテイ)にうんとひけを取っちゃうわよねえ。
と、がっかりしたけど、思いの他良かった人もいて、結局はなかなかのレベルになり、何度も観たプロダクションですが、楽しめました。
フィガロ
イルデブランド・ダルカンジェロは最近好調らしく、深い声が朗々と響き渡り、先回よりも声もよく出てたし、ネイティブなイタリア語は他の誰よりも滑らかで、経験豊富で立派なフィガロでした。ダークで精悍な容貌とも相合って、こういうタイプに惹かれる女性にはたまらないダル様でしょう。
金貸し中年女が実は母親だったとわかる場面では大袈裟に失神したりして受けてましが、ちょっと前にやったイタリアのトルコ人の表情豊かな爆笑演技が印象に残ってる私には、ダル様もっともっと派手にやればいいのに、と歯がゆい程控え目で大人のフィガロだったような。
一番残念だったのは、今回ダル様をドン・ジョヴァンニで観られなかったことで、男盛りの色気溢れる現在の彼は女性たちにしてやられる青二才のフィガロじゃなくて、女を振り回す伊達男ドン・ジョヴァンニでしょうに。
スザンナ
おたふく顔の庶民的な容姿といい、滑らかで軽やかで声と歌い回しといい、アレクサンドラ・クルチャク(クジャクというのが一番近い発音らしいですが、仲間うちではこう呼んでます)ほどこの役に相応しいソプラノはいないのではないかしら。ROHにはよく出てくれて、どんな役をやっても私は大好きで、今回3回分切符を買ったのも彼女なら何度聴いてもいいから、と思ったからでした。2010年にこの役はROH若手アーチストだった中村恵理さんがやったのですが、役柄にルックス的に相応しいかどうかも含め、全ての面で恵理さんが太刀打ちできる相手ではありません。
でも、絶好調ではなかったようで、いつもより声が乾いている日もあったし、第一スザンナは出ずっぱりで歌いっぱなしにも拘わらず聴かせどころのアリアは1曲しかないので損な役回り。彼女が難しいアリアを歌い転がしまくる役で聴いてみたいです。
女たらしで自分勝手だけど頭は悪くない伯爵は、コメディの悪役としてはとてもやりがいのある重要な役なのに、ルーカス・ミーチェムは、大柄なので立ってるだけで存在感はあるけど、図体ばかりでかくて声には迫力がないし、芝居もメリハリに欠けて、ずっと「ああ、これがサイモンだったら歌も演技も細かい所にまで気を配ってさぞかし素晴らしい伯爵だっただろうに・・・」、と思わざるを得ませんでした。特に一番大事な怒りのアリアはヘナヘナ。
軽めでスムーズな美声は耳に心地良いし、もう少し痩せれば長身で顔も悪くないので(3年前にのダイドーとエネアスに出た時は(→こちら
)今よりずっとほっそりしてて素敵だった)、声自体の魅力が最重視される役で頑張って下さい。
伯爵夫人
レイチェル・ウィリス・ソレンセンって全く聴いたことのない名前なので一番不安でしたが、アメリカ人の彼女が今回のめっけものなりました。大柄なのでルーカスとはお似合いの威厳ある貴族カップルで、どっしりとした体の大きさに相応しい声量で厚みと張りがあり、元々この役はメソメソしてるだけで芝居面では受けないけど、しっとりした素晴らしいアリアが2曲あって儲け役なんですが、多少荒っぽいところもあるものの、彼女の良さを充分出しきれる役でしょう。
拍手も一番大きかったし、一緒に行ったトーチャンに「誰がよかった?」といつものように聞いたら「伯爵夫人」と即答。連チャンでしんどいので3回目に行こうかどうしようか迷った私をROHに引き寄せてくれたのは彼女でした。こういうことがあるから、無名歌手と云っても侮れなくて、それがオペラの醍醐味でもあるわけです。
ケルビーノ
アンナ・ボニタティバスはこの役をここで以前やってますが、きっと好評だったから再登場になったに違いなくて、小柄で少年らしい仕草という点では今までたくさん見たケルビーノの中でもピエロ役としてはベストで、ケルビーノの場面は爆笑もの。声もよく出て良い歌手だと思うのですが、肝心の「恋とはどんなものかしら」という超有名アリアをピアニッシモで歌い過ぎたのが残念。
その他
セヴィリアの理髪師にも出てくる日和見鳥男バジリオ音楽教師は、2006年のプレミエのフィリップ・ラングリッジのオカマ風クネクネ演技が最高でした。今回のブエナヴェンチューラ・ボトンは喜劇演技が得意なテノールなので、どんな面白いバジリオになるかしらと期待したのに、彼としてはえらく遠慮がちな演技と歌唱で全く冴えず。
金貸しで実はフィガロの母親だったマルチェリーナはアン・マレー。皮肉なことにその抜群のバジリオ役だった故フィリップ・ラングリッジとはイギリスのオペラ界のおしどり夫婦だったんですが、未亡人になっても気丈に活躍するかつての英国花形メゾ、頑張れ!
セヴィリアの理髪師では重要な悪役で、伯爵にロジーナを略奪されて復讐を図るドン・バルトロはこのオペラではちょい役ですが(結局フィガロの父親だとわかるわけですが)、カルロ・レポーレの立派な歌唱力は、先日のコジ・ファン・トゥッテでトーマス・アレンの代役で証明されたわけですが(→こちら )、今回も良い味出してました。
指揮者のパッパーノ大将が素晴らしいのは当然なのですが、チェンバロを弾きながらだから忙しいんですが、楽しみまくってる様子が私の席からはよく見えて、楽しいオペラが更に盛り上がるというオマケ付き。いつもありがとうございます。
尚、過去の分は→こちら の一覧でどうぞ。
ルサルカ初日、演出に大ブーイング
<28th February Tue>
春めいた続いて心地良く、水仙なども咲き出して、イギリスで一番美しい花の季節はもうすぐです。
2月は16回もオペラやコンサートに行ってあたふたしましたが、今週はオペラ2回とコンサート1回という平均的なスケジュールでやれやれ。今日はまたムスメが夕食に来てくれて、嬉しいトーチャンカーチャンでした。
明日はいよいよ私にとっては最後のモーツァルトとなるドン・ジョヴァンニです。
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モーツァルト/ダ・ポンテ三部作もあとドン・ジョヴァンニとフィガロの結婚1回づつ残すのみとなり、久し振りに他のオペラも始まりました。
昨日はドヴォルザークのルサルカの初日に行きましたが、ROHでは新プロダクションとは言え、すでに他でやっててチープなセットと衣装であることは事前に知っていたので驚きも失望もしませんでしたが、案の定、カーテンコールで演出家やデザイナーが登場した時は大変なブーイングが起こりました
お昼にジムで頑張り過ぎて疲れていたのか、ウトウトしっぱなしで、これでは観たことにはならない気もするので、感想は来週もう一度ちゃんと観てからにすることにして、今日は、ここまで派手なブーイングも珍しいだろうという程の珍しいシーンの動画をアップしておきますね。
要するに御なじみの人魚姫のお話なんですが、王子はTシャツ、水の精ルサルカはトレーナー・ズボンをはいたまま、ルサルカのお父さんは無精ひげの飲んだくれ、姉妹たちは品の悪いスケスケ衣装でまるで最低クラスの売春婦、着ぐるみの猫も出てくるし、というすっ飛んだプロダクションでは、激しいブーイングも当然かもしれませんが、当のご本人たちは嬉しそうでした。物議を醸すのが目的なわけですし、新聞批評も5つ星から1つ星まで様々という、まさに彼らの思うつぼ。
フル・ステージでやるのはなんとROHでは初めてという珍しいオペラなんだから、最初はまともな設定でロマンチックな悲恋物語に浸りたいという気もしますが、悲劇を茶化して笑い飛ばすというのは私のブログにも通じる点があるのかな、と思ったりして
Composer Antonin Dvorák
Directors Jossi Wieler/Sergio Morabito
Revival Director Samantha Seymour
Set designs Barbara Ehnes
Costume designs Anja Rabes
Lighting design Olaf Freese
Choreographer Altea Garrido
Video Chris Kondek
Conductor Yannick Nézet-Séguin
Rusalka Camilla Nylund
Foreign Princess Petra Lang
Prince Bryan Hymel
Ježibaba Agnes Zwierko
Vodník Alan Held
Huntsman Daniel Grice
Gamekeeper Gyula Orendt
Kitchen Boy Ilse Eerens
Wood Nymphs Anna Devin/Justina Gringyte/Madeleine Pierard
演出は問題ありでも、主役カップルを演じたCamilla NylundとBryan Hymelは素晴らしい歌唱で喝采浴びました。それがオペラにとっては最も大切なわけですから、それだけで私にとっては○印。
もう一度観てどういう意見になるのか、自分自身でも楽しみ。トーチャンも一緒に行ったのですが、珍しく来週もまた行くと言い出したのは、彼も同じ思いなのかも。
梅の帯2本
<29th February Wed>
怒涛の2月でしたが、今夜のドン・ジョヴァンニでモーツァルト狂想曲も終わり。着物で行きましたが、その時のことは又あらためてアップすることにして、今日は、週末に準備しておいた先週の着物記事です。どんどん進めないとネタが多すぎて・・・
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着物には季節感が大切なのですが、イギリスの季節感では着物にはしっくりこないので、こればかりは日本にいるつもりで選んでいます。
なので、2本持ってる梅の柄の帯はやっぱり今使いたいものだと思い、先週2回の着物お出掛けはそれを主役にしました。
まずは、2月22日のバービカン。モーツァルトの「ティトー皇帝の慈悲」のオペラ・コンサートでしたが、鮮やかな黄緑色の帯、先回は白地の着物に合わせたので、今回は違う色にしようと思ったら、これが結構難しくて・・・。
結局、華やかさのないバービカンだし、地味な臙脂(エンジ)色の無地にしましたが、洋服では不可能な色の組み合わせが着物らしくていいでしょ?
お太鼓もばっちり上手にできてるじゃないの。
それはその筈、これ二部式の作り帯ですから。
でも、付けるのがうんと簡単な筈なのに、あまりに手順が違うので苦労して、結局普通に結ぶより手間取ってしまいましたわ
バービカンは写真撮るのに適した場所がないのでいつも困るのですが、今日は悔し紛れに、ゴミ箱を背景にしてみました。床に置いてある着物運搬カバンの中には、日中着てた洋服や靴が入ってます。
フラッシュで着物の色が薄くみえますが、帰宅後に家でトーチャンに撮ってもらった写真の方が実物に近い色です。
その翌日はロイヤルオペラハウスのドン・ジョヴァンニ。
抹茶色の木目柄の小紋にコーヒー染の袋帯ですが、これは出待ち写真ですでにご披露済みですね(→こちら
)。このグレー掛かった茶色の帯は色んな色の着物に合わせることができてとても便利。
私はマイサイズではない着物をたくさん持ってるので、どんなサイズのでもなんとか着付けることができますが、頂き物であるこの抹茶色の着物はものすごく横にふくよかな寸法で仕立ててあるので着付けがとても難しく、色目はとても気に入っているのに登場機会が少ないわけです。
着物お出掛けはこれで今年10回になりました。一覧は→こちら 。
今週はオペラ、コンサート、もしかしたら飲み会もと、2、3回着る予定ですが、なるべくご無沙汰してる着物にしようと思ってて、そういう時この一覧がとても便利なんです。
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ドン・ジョヴァンニのこじつけ着物って?
<1st March Thus>
きゃーっ、もう3月!明日はバトルだ、頑張ろう!と、意味不明のことを叫びつつ・・・、昨日に続いてまた着物記事ですみませんが、忙しい時はこれしかできない。
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昨日(2月29日)、ドン・ジョヴァンニの最終日に着物で行きました。
暫く着てない着物にしようと思い、春らしさは感じられないけど、黒地に金と赤のクリムト風小紋に決定。
帯はどれがいいかしら?
そうだ、これだ と、ひらめいたのが、この朱色と金の帯。
締め方によっては前の部分がほとんど赤にもなるのですが、今日はキンキンの方を出しましょう。
なぜならば、
ほら、ドン・ジョバンニの最後のシーンで、この稀代の女たらしが地獄に堕ちる場面で舞台いっぱい炎がぼーぼーして凄い熱気なんですが、これにそっくりでしょう?
この着物は実家の母のお下がりなんですが、どうも私の七五三に一度だけ着ただけのようで、新品同然。
いかにも50年以上に流行った、今みるといかにも古めかしい柄なんですが、やけに重いこの着物を折角ロンドンまで運んだのだから、たまには着てあげましょう。
帯は、赤いほうを出すと、こうなります ↓
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キーシンのピアノ・リサイタルに着物で
<3rd March Sat>
昨日のバトルというのは、私にとっては大切なROHの切符販売のことだったのですが、下から2番目のレベルのフレンズも毎回熾烈さを増し、往生こいとります(=名古屋弁でしんどい思いをしていると言う意味)。周到な準備で臨むのですが、緊張で心臓バクバクだし、予想と違う席の残り方だったりするとうろたえてしまって一瞬の判断を誤まり、後で後悔したり・・・。本当に精神衛生上よろしくないです。それだけでぐったり疲れてしまったので昼休みにジムに行く元気もありませんでした。
でも、夜は元気になって、切符争奪戦に勝ち抜いて良い席を確保できたコンサートへ。世界一のピアニストのエフゲニー・キーシンのリサイタルですが、切符を買ってから1年以上も待ったんですもの、わくわくする気持ちを表わすためにも着物で行きましょうよ
相棒はおなじみの着付けのA先生で、白い梅柄の小紋に鮮やかな色合いの亀甲の帯という大胆な組み合わせ。
そんな勇気はない私は、無難にブルーグレーの小紋に黒地に雪輪柄の帯。
これで3回続けて着物記事になってしまい申し訳ないですが、今日も昼過ぎから夜遅くまで出掛けていたので、ブログ書いてる余裕がなくて・・。
そして、明日は一気にあれこれ書いて済ませようと思っていたんですが、なんとラッキーなことに、ウィグモア・ホールのナタリー・デセイのリサイタルの切符が拾えたので、またお出掛けすることになりました。
今日も着物だったんですが(しかも又A先生とご一緒)、明日のナタリーも着物で行くかもしれず、そうなると着物3連チャンになり、また着物記事が続いてしまうかも。
そうならないように、明日は夕方出掛けるまで頑張ってなにか書くことにしよう。ドン・ジョヴァンニかな、キーシンかな? それとも10日以上も前に観たモーツァルトの「皇帝ティトーの慈悲」コンサートかな?はたまたNYフィルとジョイス・ディドナート?
キーシンのピアノ・リサイタル 拍手喝采だったけど・・・
<4th March Sun>
冷たい雨の日曜日。また冬が舞い戻ってくるのでしょうか? せっかく花も咲いて春になったのに。
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3月2日、バービカンのエフゲニー・キーシンのピアノ・リサイタルに行きました。
一年以上も前に切符を買ったのですが(横顔と両手が見えるベストな席)、今シーズンからバービカンのGreat Performersシリーズの切符の値段が一気に約2.5倍になるという暴挙。バービカンも苦しいでしょうから仕方ないのですが、今回払った85ポンドというのは、ロンドンではこれまではベルリン・フィルとウィーン・フィルだけの破格別価格で、さすがのキーシンも急にこんなに上がっては切符の売れ行きがとても悪く、直前までかなり残ってました。
結局は、さすがに、というか割引疑惑も起こるほど急激に売れたようで、おまけにいつのまにか舞台上の席が30ポンドで発売されてたりしてましたが、バービカンも今回は心配したでしょうから反省して次回から値段を下げればいいのに、先月発売になった来シーズンも同じ値段。次のキーシンは11月20日(→こちら )ですが、大ファンの私ですら少し躊躇したくらいですから、もちろんまだたくさん残ってます。
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Evgeny Kissin piano
Beethoven Sonata No 14 Op 27 No 2 'Moonlight Sonata'
Barber Sonata Op 26
Chopin Nocturne As-Dur Op 32 No 2
Chopin Sonata Op 58, No 3
・アンコール
ショパンのマズルカ
ベートーベンの6tつの変奏曲
プロコフィエフのオペラ「3つのオレンジへの愛」のマーチ
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で、今夜はどうだったかというと、今までキーシンを一度も聴いたことがなくて今回聴いてみて来年もそれだけ出してでも行く価値があるかどうか判断しようと思ってらっしゃる方がいるとすると、「なんだ、天才キーシンってこの程度か」という感想になってしまったかもしれません。
そうなんです。私は毎回欠かさずかぶりつき席で聴いてきましたが、今回は彼のベストとはとても言えず、一年前のリスト生誕2百年のリスト尽くし(→こちら )が素晴らしかったのに比べると、全体として精彩がなく盛り上がりに欠けたと言わざるをえません
いつも出だしは良くなくてエンジンが掛かるまでに最低数分掛かるキーシンですが、最初のベートーベンの月光ソナタは最後までひどくて、有名な静かな部分はごつごつで、次の早い分は適当にすっ飛ばすというキーシンにしては信じ難い演奏で、前から3列目の斜め後ろの席の私には体中に力が入り過ぎて苦しんでいる姿が見えるのも手伝って、「あー、駄目だ、こりゃ調子悪いかも」とがっかり。85ポンドも奮発したのにさ・・
一緒に行った音大ピアノ科卒の辛口の友人によると、「こんな簡単(キーシンにとっては)な曲なのに、練習不足!」とばっさりでしたが、たしかにそうだったかもしれません。だって、次のバーバーのソナタは今夜のハイライトとも言える曲なのでベートーベンの代わりにこっちばかり練習したに違いないと思うほどの渾身の演奏で、こういうガンガン系はキーシンの最も得意とするところでもあり、まるでキーシンのために作られたかのような曲をこれだけ弾ける人は他にはまずいないでしょう。
でも、前衛的で聴いてて楽しい曲では全くないし、それに、うーん、やっぱり今日は調子悪いのかもしれなくて、ちょっと流れが悪い部分もあり、絶好調の彼ならもっと正確で凄い迫力に違いないですもん。
後半のショパンはまあまあの出来で、最後のソナタは華麗で彼らしい左手の力強さも生きて、好きな曲でもあり私は一番楽しめましたが、ミスを滅多に犯さないことがキーシンの優れている点のひとつなのに、全体に今までで一番ミスが多かったので、やっぱりどこか悪かったのではないかしら? 去年よりちょっと痩せて顔色も青白くて元気なかったし、うめき声も苦しそうだった。
もちろん、多少不調でも並みのピアニストに比べればぶっちぎりの実力を持つキーシンなので、やんやの喝采を浴びてましたが、Key神たる神技を聴くことができなくて私は不満だったし、彼のためにも残念でなりません。
そのことは彼自身が一番よくわかっているらしく、拍手に応える表情も、はにかんでいるというよりも、困惑気味に見えました。「ほんとうは僕もっと上手に弾けるのに残念だし、こんな演奏でもこれだけ騒いでもらえるのは、きっと僕のブランド価値なんだろうな」、とプレッシャーを感じていたに違いありません
たしかに、天才キーシンだから素晴らしいに違いと思って聴くと実際に素晴らしく聴こえるでしょうし、それはそれで良いことなのですが、もし覆面ピアニストとして聴いたら、果たして皆さんどう思ったでしょうか? 私だったら、「たしかに凄く上手だけど、これだったら他にもいるトップクラスのうちの一人に過ぎないわ」、と思うでしょう。
天才キーシンだって人間だから今までも不調の時もあり(特に→こちら
)、それは当たり前で、だからこそ素晴らしい生演奏に出会えた時の感動がなにものにも変え難いわけですが、この日は彼も気分が乗らなかったのでしょう、アンコールの多さは彼の調子と比例してるらしい彼としてはアンコールもあっさりした3曲だけで、やけに短いコンサートになってしまったことも残念でした。
秋はまたかぶりつきに行くので、その時は人間技とは思えないkey神様にまた逢えますよう・・・
尚、キーシンとかの確立された巨匠ばかり聴いてるのもつまらないので、トップクラス目指して躍進中の若いピアニストも聴いてみようと思い、とりあえず、20歳前後のBenjamin Grovesnor(→こちら
)とDaniil Trifonov(→こちら
)の切符を先日ゲットしました。サウスバンクのQueen Elibaceth Hallですが、会員以外はまもなく販売開始ですから、いかがですか?私もはじめてなんで、保証はできませんけどね。もっとも、キーシンだって不調の時もあるわけですから、誰だってその日にならないとわからないですもんね。
ついでに、ブログはじめて以来のバービカンでのキーシンのリサイタルの記事をリストアップしておきます。これ以外に協奏曲だけ聴いたことも何度かあるし、そう言えばホロとの共演などというおぞましいコンサートにも行ったり、この12年間で一体何度行ったのかしら?
もちろんこれからも、値段がどんなに上がっても、彼だけは行き続けるつもり。彼が毎月出てくれたら、他のピアニストは聴かなくてもいいと思うくらいですから。
2007年3月 ここから写真登場
2009年6月 幕間のダサい普段着姿の写真あり
2011年2月 ここから動画登場
ひな祭りに着物で
<6th March Tue>
娘が仕事帰りにまた来てくれましたが、ちょっと風邪気味だったのが心配。一日中動いてる仕事ですから。職場の同僚も楽しみにしてるトーチャンのクッキーを取りにくるのが口実なので、トーチャンは半日掛けてどっさり焼いてあげたようです。夕食はトンカツでしたが、これはトーチャンのお得意料理なのでこれも作ってくれました。
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3月3日、着物で二つの集まりに参加しました。
まずはイーリングの美容グループの集まりに。
十数人でお茶しながら、美しくなるために刺激を与え合ったのですが、ひな祭りということで、皆さんお召し物はピンク。
私は細かい矢の柄のピンクのウールに花と蝶々の帯で春らしく。
着付けのA先生はレトロな縞柄の着物にお花一杯の羽織で濃い華やかさ。帯がピンク。
二人で対照的な雰囲気になりましたが、これはこれで、違いを強調する良い組み合わせだったのではないかしら。
夕方から行ったのは、名古屋弁の会という地域の集まりで、お隣の三重県出身のA先生もご一緒。
この会は1986年発足という、ロンドンでは最も古い地域グループで、後に総理大臣になった海部俊樹さんもゲスト参加して下さったことがあるという由緒正しい会なんです。でも、職業や肩書きは全く関係なしというリラックスした会で、私は長年メンバーではあるけれど他の用事と重なることが多いので滅多に出席できませんが、今日は15人くらいだったかしら、マーブルアーチ/ボンドストリート近くの、その名もNagoyaというジャパニーズ・レストランが会場。
名古屋と言えば味噌煮込みうどんだがね、ということで、特別に作って下さったのですが、珍しくし柚の香りがする味噌煮込みうどんを遠い海外で故郷に思いを馳せながら皆で大鍋でつっつきながら頂く名古屋の味は格別で、恒例の名古屋弁クイズもあり、「なーにー、こんきゃあ(今回)はどえらい難しいで、わっからせんがね~」と言い合いながら和やかに。
写真がなくてすみません。
ENOの安売り切符(オペラとバレエ)
<8th March Wed>
オペラとコンサートに16回も行った怒涛の2月が終わり、3月はちょっとのんびりできる予定だったのに、なんやかんやで出掛けてばかり
昨日はアイリーン・ペレスのコンサート、明日はルサルカ、土曜日は東北震災チャリティ・コンサートで、今日は空いてる筈だったんですが、結局4連チャンに。
だって、
↓ こんな割引切符が買えるんだったら、無理してでも行きたくなるでしょう?
左上の値段のところが肝心なんですが、
なんと95ポンドの一番高い席が手数料込みで25ポンドですもんね
トーチャンも連れてってあげたので結構な出費になりましたが、まあムスメも独立して食い扶持も減ったことだし、いいことにしましょう。
オペラはオッフェンバッハのホフマン物語でしたが、話題の爆笑プロダクションで、歌も皆さん上手だったので楽しめました。でも、やっぱり英語にされちゃうと違和感あり過ぎ
毎日出掛けてるとブログが書けないのだけが気掛かりで、訪問して下さる皆様に申し訳ないんですが、あと一日働けば週末だし、来週こそはゆっくりできる筈なので、ドン・ジョヴァンニやら他のコンサートやら頑張ります。
と言って寝ようと思いましたが、
自分だけ安い切符を買って得した気分になっていては申し訳ですから、来週のバレエの耳寄り情報を。
同じくENOで、バーミンガム・ロイヤル・バレエのコッペリアがあるのですが、3月15日と16日はENOのサイトでSPRINGBALLETというcodeを入れると、ストール席が、あらら、65ポンドから20ポンドに下がりますよ
私は15日に行きます。その日は主役が佐久間奈緒さんですもの。
奈緒さんは、5年前にロメジュリで拝見して以来(→こちら )ですから楽しみ。
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ムスメから手描きの母の日カード
<18th March Sun>
イギリスでは今日は母の日
水曜日に来た時に持ってきてくれたムスメの手描きのMother's Dayカードです。
トーチャンの誕生日カードに続き(→こちら )、ぬいぐるみのカエル君ですが、初登場のお母さんと一緒です。
毎日長時間肉体仕事で働いて平日はフラットに帰って寝るだけだろうムスメが時間を作って描いてくれたのがなによりの母の日プレゼント
今日はムスメに会えないけれど、また来週夕食に来てくれるし、今日はトーチャンと二人でカードをテーブルに置いてワインでも飲みしょ
豪F1初戦でジェンソンが優勝したし、ジェシカも可愛いし、楽しいのんびり日曜日。
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ルサルカ by ドヴォルザーク 人魚姫への冒涜プロダクション
<19th March Mon>
退屈新作オペラMiss Fortuneには2度と行きたくないと思うと、あとはROHではバレエばかり。こんな時に限ってコンサートの切符もあまり買ってないので、今週は珍しくなにも無し。急になにかに行くかもしれないけど、無理はせず、家でブログでも書いてましょ。まずはルサルカ。
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2月27日(初日)と3月9日の2回、ドヴォルザークのルサルカの新プロダクションを観に行きました。
有名な人魚姫のお話で大ヒット曲「月に寄せる歌」もあるのに、なんとフル舞台はROHでこれがはじめて。
コンサート形式ではやったことがあり(2003年7月に2回)、聴きに行きましたが、オケはピットに入ったままで、なにもないがらーんとした大きな舞台で歌手が動き回ってて、主役のルネ・フレミングはじめ芝居っ気たっぷりに演じる人から音譜を持って歩きながら歌う人までいたという妙なちぐはぐさがシュールな雰囲気さえ醸し出してて、忘れがたいパフォーマンスでした。
フレミングの裾の広がったゴージャスなドレスは覚えてますが、王子様が誰だったまでは覚えてなかったけど、調べたら、今はどうしているやらのセルゲイ・ラリン。でも、セットも無いそのコンサートの方が、今回の醜いプロダクションよりもずっと良かったです。
人間の王子に恋をした水の精ルサルカは声を失ってでも魔法で人間でしてもらい望み通りすぐ婚約。でも移り気な王子は他の女性に惹かれ、裏切った王子を殺さないとルサルカは永遠に成仏できないけど、王子を愛するルサルカにはそれはできなくて、王子もルサルカに戻ってきて、最後は二人で湖の底に沈んで行く
という、ディズニーのリトル・マーメイドよりはダークなお話ですが、このプロダクションでは家族が売春宿してるルサルカが金持ちの男に恋してその境遇から抜け出そうとしたけど、あまりに境遇の違う上流社会ではお里がばれるのが怖くて口もきけず・・・という設定なのかしら?
はじめて上演するんなら、新鮮味はなくてもまずストレートなファンタジーにしてもらいたかったけど、いきなりこんな変化球が飛んできて、しかもお下劣
Composer Antonin Dvorák
Directors Jossi Wieler/Sergio Morabito
Revival Director Samantha Seymour
Set designs Barbara Ehnes
Costume designs Anja Rabes
Lighting design Olaf Freese
Choreographer Altea Garrido
Video Chris Kondek
Conductor Yannick Nézet-Séguin
Rusalka Camilla Nylund
Foreign Princess Petra Lang
Prince Bryan Hymel
Ježibaba Agnes Zwierko
Vodník Alan Held
Huntsman Daniel Grice
Gamekeeper Gyula Orendt
Kitchen Boy Ilse Eerens
Wood Nymphs Anna Devin/Justina Gringyte/Madeleine Pierard
プロダクション
水の精であるルサルカはTシャツにトレーナー、姉妹たちはスケスケルックの売春婦、おとっつぁんは飲んだくれのポン引き、不気味な黒猫の着ぐるみは出てくるは、安いベニヤ板のサウナのような壁と下品な売春宿。初日に演出家たちが大いにブーイングされたのも当然です(下にブーイング動画あり)。
私は時代や状況の読み替えは決して嫌ではなく、かなりヘンテコに変えられてても古いオペラに新しい息吹を感じさせてくれることもあるわけですが、ドヴォルザークの美しい音楽を汚すだけのこの演出には腹が立ちました ザルツブルグで既にやってて写真は見てたんですが、ここまで下品とは思わなかったです。
おかげで、1回目はすっ飛んだ演出のせいで気が散って音楽を楽しむ余裕がありませんでした。幸い私はもう一度観る機会があり、2回目は意識して音楽に集中したお陰で堪能できましたが(パフォーマンス自体もより良かったし)、一度しか観ない人は最低の印象を持ったままになってしまうでしょう。ドヴォルザーク先生に謝れ
因みに、2回目は全く違う舞台を自分で想像しながら聴こうと思ったのですが、こないだマドリッドで見た、海のように青くてすっきりと幻想的なペレアスとメリザンドがぴったりということに気付いて、そのまま拝借しました。
パフォーマンス
これで歌手もひどかったら目も当てられませんが、幸い水準は充分高かったのは大きな救い。ROH初登場のフィンランド人カミラ・ニュールントは少々太目ながら美人だし、エンジンがかかるのに時間が掛かったせいで一番のきかせどころである例のアリアはいまいちだったものの、後半は盛り上がり泣かせてくれました。
すっかり見直したのは王子様のブライアン・ハイメルで、カルメンのドン・ホセはぱっとしなかったけど、今回は情熱的な演技と歌が素晴らしかった その日の出来不出来とは別に役の向き不向きがあるものね。
ペトラ・ラングはあまり好きではないけれど、今回の悪女ぶりは漫画チックで面白かったし、ルックスは冴えないお父さんのアラン・ヘルドも上手。
そして一番の後継者は急上昇してトップグループに入った指揮者のヤニック・ネゼット・セグインでしょう。おそらくROHデビューだと思うんですが、他で何度か観たことのある超小柄なれどエネルギッシュな指揮ぶりでいつも盛り上げるし、民族風で叙情的な美しいドヴォルザークの良さを余すところなく表現。数年後にパッパーノ大将の後継者になってくれないかなあ。
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