<9th April Easter Monday>
今日で4連休も終わり。昨夜はムスメのフラットでボーイフレンド君が料理した夕食を美味しく頂きました。今日はお天気悪いので家でテレビでも観てましょう。時間に余裕のある時にしか観られないベン・ハーもやってるから、久し振りに観てみるか。
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ROHのリゴレット、来週もう一度行くのですが、ここで一応区切ります。
途中までしかいられなかった3月28日のリハーサルも入れると、3月30日(初日)、4月2日、4月4日と今のところ3回半ですが、運よく舞台袖の安い席が買えて、まじかで観ることができ、満足です。
リゴレットってどんなお話なの? とご存知ない方は以前の記事をご覧下さい(→)なのですが、要するに、
宮廷に仕えるせむしの道化師が娘を公爵に手篭めにされて復讐を図るが、暗殺計画に気付いた娘が身代わりになるという悲劇で、原作はヴィクトル・ユーゴーですからしっかりできていて、恋のはじまり、失恋、妬み、呪い、復讐、暗殺と悲劇オペラの要素が揃ってドラマチックにわかりやすいのでオペラ初心者にもお勧めです。
音楽もヴェルディの名作ですから、初心者だけでなく、聴けば聴くほど個々のアリアだけでなく全体の構成の素晴らしさがわかり、私は何十回も聴いてて全部ハモれますが、感心こそすれ、飽きることはありません。
2001年プレミエのマクヴィッカーの演出は宮廷もリゴレット家も場末の酒屋もひとつのセットを回転して済ませる上にグレー一色で醜いですが、私の席から全体は見えないし、奥深くないので見切れることもなく問題なし。セットとはバランスが取れないけど衣装はとても洒落てて、冒頭の乱交パーティ場面もショッキングでエネルギッシュで面白く、結構好きなプロダクションです。
Composer Giuseppe Verdi
Director David McVicar
Associate Director Leah Hausman
Movement Director Leah Hausman
Set design Michael Vale
Costume design Tanya McCallin
Lighting design Paule Constable
Conductor John Eliot Gardiner
Rigoletto Dimitri Platanias
Gilda Ekaterina Siurina
Duke of Mantua Vittorio Grigolo/Francesco Meli
Count Monterone Gianfranco Montresor
Maddalena Christine Rice
Sparafucile Matthew Rose
Giovanna Elizabeth Sikora
Marullo ZhengZhong Zhou
Matteo Borsa Pablo Bemsch
Count Ceprano Jihoon Kim
Countess Ceprano Susana Gaspar
パフォーマンス
公爵
好色で残酷で威張ってる若い公爵は、途中で進歩しない役柄で演技的にはやりがいのある役ではないでしょうが、そこそこ聴かせるアリアが2、3あり、テノールにとっては楽な儲け役のせいか、有名テノールが歌ってくれることも多くて私には一番の楽しみ。
ROHでは出演順だとこれまでにアルバレス、ベチャワ、ヴァルガス、ヴィラゾン、ウーキョン・キム(このへんまでは→こちら
で比較)、メリ、と続き、それぞれ数回づつ楽しみましたが、今回は今をときめくヴィットリオ・グリゴーロですから、フレンズ枠で最初に買える4枚の枠を全部自分用につぎ込みますとも キャンセルされた時の予備も要るしね(実際、後から「スケジュールがきついので一回キャンセルさせて」と言われた)。
ロンドンが気に入ってくれてるらしいグリゴーロ君はこれまでにマノン、ファウスト、トラヴィアータと出てくれて、楽々と出る張りのある美しい大声の大ファンになりましたが、今回も期待通りの熱血ぶりを発揮してくれて、こちらを向いてストレートに声がどかーんと投げつけられると、思わずその迫力に拳を握ってしまうほどです。
マノンやファウストと比べると主役でもないリゴレットの公爵は面白みに欠けるし、期待通りというのはある意味いつもと同じということで新鮮味はないですが、ご贔屓歌手というのはそれで良いわけですから、機会があれば何度でもしなやかな鋼のようなグリゴーロ節を浴びに行きますわ。
最初のアリアとかそんなに弾まないでもう少し普通に平坦に歌ってくれる方がいいのにと毎回思いますが、エネルギーが有り余ってる若者が勇む姿も又良いかも。
4月4日に一回だけ代役で歌ったフランチェスコ・メリですが、2年前にレオ・ヌッチと共演した時が素晴らしかったので(→こちら
)、あの感動を再現してくれたらと期待したのに、仕方ないけど一回だけの出演では練習不足なのか、歌も演技もちょっと危なげで、「あれ、いい加減に誤魔化した?」と思ったところが一箇所あったし、指揮者が写ってる画面を何度も見るので、私も集中できませんでした。
でも、それは期待が高過ぎたせいであり、声量では当然グリゴーロには負けますが(誰も勝てないし、勝てたらうるさ過ぎる)、演技もおとなしく見えるけどこれが普通だし、代役としては立派で文句なし。ちょっとだけでも来てくれて本当にありがとう。また近いうちに違う役で歌ってね。
ジルダ
これまでシェーファー、ネトレプコ、チョーフィが出たジルダですが、2005年の初登場以来今回で4度目のエカテリーナ・シウリーナはいわばROHジルダの当たり役。2008年にパリのリゴレットでも聴いたのですが、この役で彼女の右に出るソプラノは今いないかもしれません。可憐でか弱い演技も上手だし細い高音がきれいに出る素晴らしいシウリーナは私のジルダ評価(→こちら
)でもぶっちぎりのトップ。
さすがにこれだけ何度も聴いてると新鮮味はないけれど毎回充分聞惚れ、特に神々しい程上出来だった4月2日はメリとの共演の日だったのですが、グリゴーロ目当てで切符を買って不満だった人もこんな素晴らしいジルダが聴けたのだから良かったじゃないですか?
リゴレット
ジルダと公爵は上手に決まってるお馴染みの歌手だけど、リゴレットのディミトリ・プラタニアスって誰だろう? これまでのリゴレットはガヴァネッリ、カルロス・アルバレス、ホロスフスキー、ルチッチ、ヌッチという有名歌手以外に無名の下手くそも混じっていたので、3人のうち2人良い人出せば充分だろうがというROH的妥協かしら?と心配だったんですが、この若いギリシャ人バリトンが第一声を発した途端にそんな不安は吹き飛び、「おぉ、朗々とした良い声じゃないか!まろやかだけど輪郭もはっきりして、私好み」、と嬉しい驚き。西郷隆盛か山下清かという小柄なずんぐりむっくり体型は醜いせむし男にはぴったりだし。
でも、若過ぎるのは構わないけど(役柄設定と歌手の年齢や容貌は大目に見ないと成り立たないのがオペラだから)、演技がど下手。姿勢と行動と表情から中年男の哀しさが滲み出なくちゃ駄目なのに、顔も体も歌の素晴らしさに付いていけてなくて勿体ないことったら。
このリゴレットは便利な小道具として2本の杖を持っているのに(ヌッチは使わなかったけど、彼は地のままで貫禄ありだから例外として)、それを活用しないので腰が伸びてることが多かった。プラタニアス君もそれには気付いたようで、見る度に少しづつ体が曲がっ改善したけど、最初は意識して腰曲げてても歌い出すとすぐにまっすぐになってしまいましたね。歌いにくいだろうから腰は曲げなくてもいいので、膝をちょっといつも曲げてるだけでOKだと思うのですが、それでも駄目なのか、すぐにすっくと立ってしまい・・・。見てると苛々するので、途中から姿は見ないで声だけ聴くようにしたら、彼の良さが際立ってますます聞惚れました。
このリゴレットのアクションといえば、皮肉なことに私が嫌いなバリトン二人が一番印象的で、ホロストフスキーは大袈裟に腰を曲げ、さらに漫画的表情が爆笑もの目が離せず演技賞を差し上げたいし、ガヴァネリは年恰好もアクションも自然でなかなか良かった。
他の人たち
殺し屋の妹で酒場で公爵といちゃつくマッダレーナ、今回は主役級のクリスティーナ・ライスという豪華版で、さすがの歌唱力と貫禄。
殺し屋は「またお前か・・」と言いたいくらい聴き飽きたマシュー・ローズ。充分上手なのに他のオペラハウスからお呼びが掛からないわけ?
指揮者は「えっ?、バロック専門かと思ったら、貴方ヴェルディも振るの?」とびっくりのSir ジョン・エリオット・ガーディナーで、一切歌詞を口にもせず腕だけで淡々と指揮する姿は見てて面白くないし、もう少しメリハリつけて欲しい気もしたけど、ビジュアル面の影響で平坦気味に感じただけかも?でも時々歌手とずれてたのはやっぱりバロックの乗りだったからかな?
宮廷人代表のマルーロ役はROH若手アーチストの中国人ジェンジャン君で、どうのこうの言う程歌わないけど、長身でハンサムなので舞台映えしてなかなか素敵で、東洋人男性のイメージアップにはなってるわ
というわけで、全体的には今までの中でもなかなかレベルの高いパフォーマンスだったと思います。17日に世界中の映画館で生上映されるますので(日本はないようですが)、生でご覧になれない方はどうぞ(→こちら
)。きっとグリゴーロ君がさらに熱くなって湯気が立つのが見えますよ
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