<27th May Sun>
素晴らしいお天気の週末でしたが、うまくいかないもので、好天気到来は1週間早過ぎたみたい。来週末が女王様のダイアモンド・ジュビリーの行事が色々あって大切なんだからこんなピッカピカな天気になって欲しいのに、もうすぐ又寒くなるみたい。ったく、イギリスのお天気ってやつは・・・。夏服を引っ張り出したけど、果たして着るチャンスがあるのかしら?
昨夜のユーロビジョン・コンテスト、イギリス代表には76歳の往年のスター歌手エンゲルベルト・フンパーディンクが出たのに、やっぱり票は取れず、かろうじてドベから2番目。零点国としていつもあざ笑われてるノルウェーよりましだったのがせめてもの救いだけど、はなから歌のコンテストなんかじゃなくて隣国同士が投票し合うこんな政治イベント、海に囲まれててお隣さんがいない上に高慢ちきだから誰も親近感持ってもらえないイギリスは撤退すべきでしょう。他の国ではノルウェーと並び称されてバカにされるんだろうし。あ、でも、ジャンルを問わず生パフォーマンスを観るのが好きな私は毎年楽しみにしてるので、撤退してもTV放映だけはしてね。
やっぱりカウフマンは来月のLes Troyensから降板。代役はブライアン・ハイメル、まあまあかな。カウフマンは当然ウィグモア・ホールとアルバート・ホールのコンサートもキャンセルするんでしょうね? 切符持ってないからいいけど。
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5月12日のリハーサルと15日の初日にヴェルディのFalstaffを観に行きました。
エリザベス一世時代のウィンザー。サーの称号はあるものの素寒貧(すかんぴんって漢字だとこうなるの?変換したらこうなったけど)で下層階級のごろつき共とつるんでる騎士ファルスタッフは中産階級の奥方たちを金づるにしようと、百貫デブの我が身も省みず、アリーチェとメグの二人に同じ文面の恋文を送り、呆れた彼女たちがファルスタッフを懲らしめようとするヴェルディには珍しいドタバタ喜劇オペラで、マクベス、オテロに続くシェイクスピアものの3作目で晩年の作品。
わざと違うスタイルにしたんでしょうが、ヴェルディらしい重厚で美しい旋律も有名アリアもなく、アンサンブル歌唱中心のこの作品、ヴェルディ最後のオペラですが、名作とは言い難く、私も何度も聴きたいとは思わないので、今回も話題の新プロダクションながら、2回で充分。
プロダクション
1999年から2003年まで使った前回プロダクション(グレアム・ヴィック演出)は時代には忠実だけど極彩色のセットや衣装が可愛くて結構好きだったんですが、今回のロバート・カーセン版は1950年に読み替えてあり、人気があり過ぎていわば手垢のついた1950年はありきたりで新鮮味なし
カーセンの最近のプロダクションで私が気に入った去年のグランドボーンのリナルドも時代の読み替えは同じでも、あちらはそこに中世の要素を散りばめて洒落てたし演出も爆笑場面がたくさんあって凄く面白かったのに、カーセン版はただストレートに時代を移しただけ。セットや小道具、衣装はとても素敵で、最初しばらくオークパネルに囲まれた伝統的な部屋の暗い場面が続いた後に突然パーっと明るいモダンなキッチンになった時、リハーサルでは拍手が沸いた程
リハーサルのカーテンコールでは大歓声だったのに、初日はそれほど受けなかったどころか、なんと少しブーイングも出たりして、評価は分かれたようですが、セット、衣装、演技は○(◎ではなく)、パフォーマンスは△というのが私の採点で、ブーイングに値する要素はなかった思います。ブーイングした人たちはきっと期待が高過ぎたんでしょうが、私は直前にinsight eveningというトークイベントにも行って大体どんな演出か予想はついたし、歌手陣ははなから期待できない顔ぶれだったので、初日には期待度がかなり下がっていたとも言えます。
尚、これはスカラ座との合同プロダクションなので、来年秋にスカラ座引越し公演で日本でも観られるようですよ。
Director Robert Carsen
Set designs Paul Steinberg
Costume designs Brigitte Reiffenstuel
Lighting design Robert Carsen/Peter van Praet
Conductor Daniele Gatti
Sir John Falstaff Ambrogio Maestri
Alice Ford Ana Martínez
Ford Dalibor Jenis
Meg Page Kai Rüütel
Mistress Quickly Marie-Nicole Lemieux
Nannetta Amanda Forsythe
Fenton Joel Prieto
Dr Caius Carlo Bosi
Bardolph Alasdair Elliott
パフォーマンス
これほど役柄と歌手の容貌が皆さんぴったりのオペラを観られる機会は滅多にないでしょう。ミュージカルと違い、そこは観る側が百パーセント譲らないと成り立たない世界なんですが、芝居面が大切なこのオペラではその効果は大きくて、皆さん演技も上手で、コメディとしてはとても楽しめました
太っちょ騎士ファルスタッフにはタテヨコ巨大(身長2メートルくらいで大デブ)のアンブロージョ・マエストリはルックス的にはパーフェクトで、前回のブリン・ターフェルは詰め物してたけど、マエストリには不要なので身のこなしが自然なのは高得点。もうちょっと大袈裟にやらないとブリンのようなカリスマ性は出せないけど、そうすると不自然になるし、どう頑張っても存在自体がブリンのキャラには敵わないので、このくらいののほほんさが彼には丁度いいかも。
体型重視でこの役に選ばれたんでしょうけど、歌唱力は超一流とは言いかねますが、私は年にパリのリゴレットで彼を聴いたことがあり(→こちら
)、その時は図体ばかりでかいけど声はふにゃふにゃで立ってるだけのでくの坊だったのでペケ印。又あれを聴くのかと暗澹たる気持ちだたってけど、当たり役に違いないファルスタッフは歌もそう悪くなかったので(他に誰も上手な歌手がいなかったせいもあり)評価がちょっと改善しました。
暗澹ということではアリーチェ役のアンナ・マリア・マルチネスはもっとそうで、一番嫌いなソプラノは誰かと聞かれたらマルチネスと答えるくらい。特にトラヴィアータでひどかったので、2006年時点でROHのヴィオレッタを比較した時は断トツ最下位(→こちら
)。
だけど、仕切り屋のアリーチェは女性陣の中心的存在だけどしっとり歌うアリアもないので、不快な歌唱を聴くこともなく、演技はそつなくこなしたので、文句は無し。先回プロダクションでブリンの相手役だったバーバラ・ フリットリに比べたら全ての面で魅力はうんと落ちるけど、そりゃ最初から比べるのが無理。因みに、スカラ座本公演も日本引越し公演もフリットリとイヴェりだそうで、なぜ最初にやるロンドンのアリーチェが最低ランクなんだよお
アリアらしい美しいメロディがあるとすれば、ファルスタッフの娘ナンネッタとフェントンの恋人カップルの場面だけなんですが、アマンダ・フォーサイスとジョエル・プリエトの二人は演技も歌もフレッシュでなかなかよろしい。但し、ジョエル君はルックスが良くて声もまあまあだけど声量不足だし迫るものが感じられないので、来シーズンのローゼンブラットのリサイタルシリーズに出演する彼を絶対聴きに行きたいかと言われたら、見逃しても大してがっかりはしないわね。
一番笑いが取れる得な役は、フォルスタッフに「アリーチェもメグも貴方にメロメロだから」と罠を掛けに行くクイックリー夫人。太目で愛嬌のあるマリー・ニコール・レミューが出てくる場面はいつも爆笑 バービカンでバロック・オペラのズボン役で何度か観た彼女とは全く違う女らしさには感心しかけど、ドスのきいた声だけどあまり響かない低い声はそのままなので、なにをやってもキャラとしては面白いけど歌唱力はあまり評価してません。
指揮者はROHでは初めて聴く(と思う)ダニエル・ガッティでしたが、セットや演技は字幕を見るのに忙しくて、彼がよく見える席だったにも拘わらずあまり目が行かず、オケは特に上手だとも下手だとも思いませんでした。ってことは、そつなくこなしたってことでしょう。
というわけで、ビジュアル的にもお芝居としても楽しいので一度は見る価値があるのではないかしら?私もリハーサルはすごく楽しめました。だけど、同じことをやってる筈なのに初日は全く面白くなかったのは、それだけのものだったということでしょう。ご存知のように、私は同じオペラに続けて何度も行くのが当たり前で、素晴らしい歌は何度聴いても感動するんですけどね。
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